一兆年の夜 第百十三話 時間旅行 時間旅行者太間ガン流豆の終着(三)
場所は真古天神武。
其処は場所も特定されないとある海。其処へガン流豆とサチカは着水。
(ウワ……こんな所に俺達は、ッテサチカ!)
あ、御免為さい……私達の時代では重力を物にする技術がありますので--とサチカは口にするが……其れは他の何かも関係すると塩水を拭いながら思うガン流豆だった。
「オレハ……いや、俺達空中種族の中にも水の上を浮かぶ技術は持つ。ダガ、あんたみたいに浮力の問題があって直立ではほぼ理が叶わない生命が立つ方がフシギダ!」
「あら、そう?」しゃがんだ姿勢で海の上を浮かびながらガン流豆の横顔を見つめるサチカ。「古い時代ならではの技術ね」
「アンタタチガどんな方法で浮力と意気投合したのか知らないが、俺達の時代では此のように出来ない事は出来る種族に任せるしか道はナイ。ソレハ特性だけデハナイ」
「わかっているわ、其れ位は。でもあたしが家の事は私が任せられるように私の場合はあたしが、そして公では僕が其々を務めるの」
「ナゼ三つに性格を分ける必要がアル?」ガン流豆にとっては疑問に思う事の一つであった。「カエッテ個の時間が少なく成ると俺は思うノダガ?」
「其れが私達の時代の変えられない生活様式と化しているの」
「……モシカシテ労働時間に割けられる私の時間を確保する為ナノカ?」
「まあ其れ以上の推測は」サチカは突如として青い眼を輝かせる。「此の周辺に接近する銀河連合を何とか対話しない事には始まらないよ!」
タイワ……ってもう奴等はこんなに接近シタノカ--ガン流豆はある言葉が気に成る……が其れ以上に五体もの鮭型が既に囲む事に集中するしかない!
其の五体もの鮭型を何とか急所と思われる個所を探るガン流豆。其れに気付いたサチカは……「其れは止めて下さい、太間さん!」と注意する。其の注意をされてガン流豆はこう思った。
(タタカワナケレバ死んでしまうのだぞ……何故、其れをしてはイケナイノダ?)
ガン流豆にとってはおかしな事である。だが、次のように--ソレガサチカの生きた時代なら其れも仕方ない……ならば彼女のやり方を見せて貰うとシヨウ--思い聞かせる事でガン流豆は己を納得させる。
其れからサチカの行う一挙手一投足を確認しながら何時でも翼と肉体を動かす準備をするガン流豆。其れはサチカの行動が要らぬ事態を招かないという僅かな可能性も信じているが為に。
(サチカのあの自信に満ちた注意からして其れはアリエナイ。ケレドモ俺達は戦い以外の道を知らない……故に幾らでも動き出す準備だけはワスレナイ。タトエ俺が頭脳労働者ダトシテモ!)
ガン流豆だけではない。五体の鮭型もサチカが醸し出す空気を感じ取り、彼女に狙いを定める。其れはガン流豆とは異なり、銀河連合としての本能が自分達を倒す事を考えるガン流豆よりも身体能力と得体の知れない存在であるのに倒す気が全くないサチカの方がまだ倒しやすいと判断する為である。其れはガン流豆が読めない事ではない。銀河連合は何時だって倒す気のない方から先に狙う習性がある。或は倒す気のある生命であっても一度付近に縛った生命を使って巧みに自分達の有利な方に運ぶ事を誰もが知らない筈がない。特に頭脳労働者として肉体労働経験が少ないとされる太間ガン流豆であろうとも其の事位は承知の上であった。
そして、ガン流豆が少し動きに戸惑う瞬間を見逃さない五体の鮭型は一斉に飛び掛かる。其れは奴等がまるで一つの意思を持つかのように五体全てが一斉に飛び掛かる--ガン流豆は自らの動きが危機を招いた事を思い始める!
其の時、サチカの両眼から青き光が木霊して五体の鮭型を全て石化させた!
(ナンダ今のは……銀河連合の肉体を構成する肉、骨、血管、神経の全てがまるで新たな細胞分裂するかの如く組み替えられて石へと変化させたヨウナ!)
シーン・マウンテインとの出会いに関する記憶は此の時代では曖昧と成ったガン流豆であっても彼から教わった遺伝の法則からは如何考えても有り得ない現象に驚きを禁じ得ない。銀河連合を生命体と仮定しても其の生命体が一瞬にして石に組み替えられる……其れは事実上は可能ではないと思わないといけなかった!
「ご、御免為さい。私の力を先に説明するべきでした」
「イヤ、俺は今の時代の方法で先程の術を如何にか隅に置く事が……出来ずにイテ!」
「良いのよ。やはりこうゆうのは先に--」
エ、ナゼ……何だ、コレハ--此の時代には存在しない技術の使用は即ち……追い出す事を意味していた!
サチカの中で膨れ上がる光は石化させた三体もの鮭型や傍にいたガン流豆迄巻き込んで--