一兆年の夜 第百十二話 時間旅行 生物学者シーン・マウンテインが見た遺伝学(三)

 七月百七日午前九時一分二十三秒。
 場所は真古天神武六虎府経済都市第五東北地区犬猿道弓八坂。
 此の日は珍しくシーンは体力が続く限り長距離を走ろうとガン流豆を誘う。すっかり、今の生活に適応したガン流豆も流石に体力の塊であるシーンに付いてゆくのは至難の業。何よりも何度シーンは速度を緩めて進幅を合わせるか。二名の体力差は走り込みを趣味にする生命と走り込みから新たな時間旅行機を開発しようと試みる生命という差を生み出す。前者は純粋に走る事を楽しみ、既に健康体操を越えて日課と化す。後者は走り込みを附属扱いする。故に本気に成れず、走り込みを付けた刃の如くしか扱えないのである。
「ハアハア、空飛ぶ種族、と、陸を、進む、シュゾク。ナノニ、お前、は、何ちゅう、体力、ダア!」
「余り喋るなよオオス。走り込みの基本は無我夢中ウウス、色即是空ウウス、無念無想ウウス、そして明鏡止水イイス」
 ソウユウ時だけ、四字熟語、使っ、て賢く、見せるのは、ヤメ、テクレ--幾ら義翼を装着しようとも左右の均衡を図るには限界が近いガン流豆だった。
 二名は午前十時に成ろうとも走り込みを止めず、午前十一時に成っても止めない。其れから正午過ぎてから変化川かわりばけるかわに入った段階で二名は漸く足を止める。既に体力尽き掛けるガン流豆に川の水を飲ませようとするシーン。だが……「マテ、銀河、連合かも、シレナイ」体力の限界があろうとも寸での所で警戒を緩めないガン流豆だった。
「心配なイイス。ホラ……ごっくりイイス!」シーン自ら飲んで安全性を主張する。「……フウウウス、俺が何ともないのだから大丈夫だアアス!」
 ホントウカヨ--覚悟を決めて試しに飲むガン流豆だった。
「……如何だアアス?」
「ウマイアジダ!」
 ホオ……良かったアアス--安心するシーン。
 ガン流豆がそう断言するのは次のようにシーンが考察しての事である。
(浄化の進まない水は飲めた味ではなイイス。そしてエエス、銀河連合其の物なら飲む前に胃が受け付けない臭いを放つウウス。何故そう成るかを遺伝学の基本的な法則で示そウウス。此れは百の年より前に発見したカバゴル・バオデルの図が示す通りだアアス)
 其れは従来の四種類の血液型に当て嵌まるという遺伝学の法則である。基本的に一般生命は厳密化しなければ最も多い『乙型』、次に多い『甲型』、そして輸血に重要な『丙型』、最後に乙と甲を組み合わせた『甲乙型』の四種類に分けられる。
 『乙型』は『乙型』だけなら生まれて来るのは『乙型』と『丙型』。だが、『甲型』なら『乙型』と『甲型』と『丙型』と『甲乙型』。『丙型』なら『乙型』と『丙型』。『甲乙型』なら『乙型』、『甲型』、『甲乙型』。
 では被る組み合わせを省いて『甲型』も見てみよう。『甲型』なら『甲型』と『丙型』。『丙型』なら『甲型』と『丙型』。『甲乙型』なら『乙型』、『甲型』、『甲乙型』と成る。
 では『丙型』も見てみよう。被る組み合わせを除けば『丙型』なら『丙型』。『甲乙型』なら『乙型』、『甲型』、『甲乙型』と成る。
 最後に『甲乙型』を見れば被る組み合わせを除けば『甲乙型』なら『乙型』、『甲型』、『甲乙型』と成る。
 そして其々の確率を見ると十六種類ある中で『乙型』と『丙型』、『甲型』と『丙型』は其々三の確率で出来る。『丙型』以外の全種類なら五の確率で出来る。全種類及び『乙型』と『甲型』のみなら其々二の確率で出来る。残ったのが『丙型』だけは一の確率しかない。
 此れが遺伝の法則である。此のように優性遺伝なのか非優性遺伝なのかは配合されるモノ同士の遺伝子の中身で決まる。血液型の組み合わせを厳密に解き明かすなら『丙型』と『甲乙型』は其の侭。だが、『乙型』は『乙乙型』と『乙丙型』に分かれる。『甲型』も『甲甲型』と『甲丙型』に分かれる。故に先程説明した通りの結果が出るという訳だ。
(--故に生物学者は此れ等を基本にして遺伝子の流れを調べて行くウウス。と水を飲んでいる内に疲れがアアス、ハア……俺も久方振りに走り込んで足が重く圧しかかるなアアス。かつての猛者達ならば此の程度で止まらないのにイイス、俺はまだまだだねエエス。まアアス、俺は専門があるから走り込みは趣味程度の感覚だし……しイイス?)
 カワの流れと共に何かがこっちに近付く……剥き出した状態で俺達を、捕捉シヤガッタ--シーンは決して幻を見た訳ではなかった!
 鰐型はシーン達を喰らいに変化川の流れを利用して急加速に踏み切って行く……

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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