一兆年の夜 第百十二話 時間旅行 生物学者シーン・マウンテインが見た遺伝学(二)

 六月百七日午前八時二分三十一秒。
 場所は真古天神武六虎府経済都市第五東北地区犬猿道。
 シーンは走り込みを始める。其れは決して虎族の使命として行う物ではない。彼の趣味であり、日課として其処に存在する。其の彼と共に犬猿道を進む生命は数多。穢れ払い走りは既に歴史の一部として語られつつも真古式神武に残った生命の子孫達の記憶の中では今も続く。シーン・マウンテインも又、真古式神武に居残り、過酷な中で新天神武軍に依って生き延びた一族の末裔。環境の激変に依る後遺症も彼の代で漸く克服する事に成功した。
「--だがアアス、反対に俺は齢五の時に親無しと成ってしまったアアス」
「ソノ親無しのシーンが如何して生物学に興味を持ったノダ?」
「如何してなのかアアス」一旦足を止めるシーン。「如何して俺の代で過酷な環境に依存した肉体が正常に戻ったのか……そう思うと興味が湧くじゃないかアアス!」
「ソレデセイブツガクヲ?」
「そうゆう訳だが……そろそろ走るから此処から先は一切のお喋り話だぞオオス!」
 マジメな生命はやる気が高くてコマルナア--ガン流豆もシーンと同じような性格の持ち主であるとは知らない。
(走るのは良いぞオオス。何故ならあらゆる悔しい思いも悲しい思いも怒りたい気持ちも全てが両の肺の重荷で忘れてくれるウウス!
 朝の走りは誰かが言ってたなアアス、健康上は余り宜しくないってエエス。理由は起き立てで体が温まらない状態から走り込みをすると肉体への重荷と成るってエエス。だがアアス、俺は体を起こしたいから走るウウス。何事も朝は始まりの時間帯でありイイス、昼は全盛の時間帯でありイイス、夜は停滞の時間帯であるウウス!
 だからこそ早寝早起きは三マンドロンの得に成ると呼ばれるウウス)
 二名、特に時間旅行機を開発してもおかしくない太間ガン流豆が如何して一の年もシーンと共に過ごしたのか? 実はシーンからこう告げられた--元の時代に帰るのも構わらないがアアス、焦りは余計に細胞への重荷と成る……先ずは肉体を活性化させてから元の時代に帰る事を勧めるウウス--と。始めこそは焦りもあってガン流豆は聞く耳を持たなかった。だが、シーンが朝から走り込みする姿を見て少しだけ付き合おうと始めた穢れ払い走りの再現。実質上は決して長距離を走る訳ではない。けれども、走る基飛行する内にガン流豆の中にあった焦燥感は薄れ始める。最初の一の週こそは何が面白いのか興味を抱くガン流豆。やがて娯楽を越えて悟りの領域に追いやるのだと知ってからは既に一の年もの間、シーンと共に走り込みを続ける毎の日を送る。すっかり、元の時代に帰ろうという気が無くなる程に。
 因みにシーンとガン流豆は午前九時十八の分まで走り込みをして其の侭、第四東北地区迄走って戻ってゆく。

 午後二時十一分十八秒。
 場所は六虎府経済都市第四東北地区。
 其処で二番目に大きな建物。名称は細菌研究所と呼ばれ、菌族を始めとした一般生命の中では海中種族に引けを取らない程に独立した国のような秩序を持つ微小種族を研究する場所。最大二階、地下も最下二階で地中種族研究員でも気軽に研究が可能な構造と成る。シーンが居るのは一階第三細胞研究室。彼は決して高名な研究者ではない。其れでも彼独自の研究室が設けられる程に迄、彼は研究所の中で知名度を上げていた。
「ナノニ如何してお前は自信をモタナイ?」
「俺は普通に真古式神武に残った生命は如何して世代を超えても環境適応外の症状を起こして来たのかを知りたいのだアアス。だがアアス、結果は此れだアアス!」シーンは自分の机の右側第一引き出しから書類の束を取り出す。「如何にも染色体為る物が世代を超えても受け継がれる事が示されてしまったアアス」
「ソレハ……キュプロ河馬族のカバゴル・バオデルが既に発見した遺伝の法則ジャナイカ!」
「そうなんだ……俺のは百の年より前の偉者に並んだだけなんだアアス」成者に成る前から類まれなる才を見出されて研究を続けても得られる功績は僅かという現実に下を向くシーン。「才能が高いと称された俺が此の程度の発見しか出来ないのさ……自信を持つのは理として成立しない話だアアス」
「ソウカ……人生なんてそんな物ダゼ」
「其れは褒めてないだろオオス!」
「ソウジャナイ……寧ろ、齢二十代前半で其れだけの発見をしたなら素晴らしいジャナイカ!」
「わかってないなアアス、俺は親の愛情もまともに知らない中で唯一孤児院の院長を親代わりにしているウウス。其の親代わりの生命は後一の年には……矛盾山に向かう事に成ったアアス!」
 ムジュンヤマ……あ、オモイダシタ--ガン流豆は大切な何かを思い出してしまった!
 其れについて回想録でシーンは次のように記した。
『--あれは誤算の一つだった。もう一つの誤算とは其の時間旅行機が思い出した
ガン流豆が時間旅行機を僅か二の週より後に完成させた事。早業にも程がある。更に誤算
もある。其れが其の時間旅行機は発動するのは良いが、肝心の時間旅行を果たさずに
ガン流豆を全治三の週もの怪我を与えただけだった。全く何がしたいのか。
 そうゆう訳でガン流豆は暫く滞在を余儀なくされた。だが、滞在から四の月より後
だったな。まさか--』

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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