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一兆年の夜 第百十一話 時間旅行 証明者アントルー・ワームドの証明(五)

 午後十一時五十八分三十二秒。
 アントルーは日記を記す余裕もない。百獣型が目の前に現れた状態で一体何処に呑気に日記を記す生命が居る訳がない!
 だが、アントルーも戦い慣れたガン流豆も今度ばかりは相手が難しい。過去に指揮官型との戦いを経験した事もあるガン流豆。其れでも一段落下の強さである百獣型を相手に時間旅行機は半壊の状態。そんな状態でガン流豆に為す術がないようにも曇った表情からも感じ取れる--曇りはやがて雨ではなく、雷雲が鳴り響くが如く皺を多く寄せる。
(コォコウモ・リックマンが自然数の最終定理が解ける可能性を見出す事が出来たきっかけは……最強の百獣型を倒す生命の存在にあった。ホォ僕達が百獣型が最強なのかそうでないのかを判別出来ないにしても、ホゥそんなの無関係だと捉えても今の状況を好転させる為の足掛かりが何処にあるというのか?)
 アントルーは肉体労働者と同じ動きを可能とは微かにも塵にも思わない。思うのは仮に模倣が可能だとしても使い熟せない技術の前では包丁を持ったばかりの生命と同じく振り回されるだけだと断定する。其れは決して肉体労働者から直接教わった知恵ではない。
(ハァ数学とは方法を覚える為の学問だ。フゥ武と視点を合わせればわかる通り、ハァ武も覚えたばかりの正足突き一つとってもただ使うだけでは意味がない。ヒゥ体に、カァ体其の物として振舞う事で初めて正足突きの体を為す。スゥ其れと同じように足し算、クゥ引き算、フィ掛け算、ホォ割り算も只覚えるだけじゃあ意味がない。スィ其れ等を体の一部であるように振舞って初めて計算式として成立するのだ。
 ユゥ故に僕達は百獣型を倒す術を覚えのある肉体労働者の動きを使用した所で百獣型の前では玩具遊びの如く、マァ瞬く間だろう。ソォそうすると導き出される答えは慣れない事はする物ではないというのが妥当な判断の一つ)
 アントルーは一つずつ選択肢を省いてゆく。ガン流豆も同様である。百獣型はそんな二名の思惑を踏まえて少し警戒心を強める。此れは決して過大評価している訳ではない。銀河連合である百獣型が油を断って悩み遊ばせているという強者ならではの問題。圧倒的な戦力差とわかった場合に強者は必ずこうして油を断ってしまう。其の事に気付くか気付かないかよりもアントルーは選択肢を一つずつ省き続ける。
(ヒィ百獣型が何を考えるか知らないけど、ヤァ奴にとって取るに足らない僕達は助かる。デェ出来れば万全の選択肢に成る迄、フゥ待って欲しいけどね。マゥ現実は非常に冷たいのが常だが、イィ今は選択肢を省くのが先だ!
 ツゥ次は戦力差からして真正面からぶつかるのは絶対に避ける事。ナァ何故なら真正面からぶつかって勝てるのは意気込みが極端か或は力の強い者だけ。ギィ逆に力が其処までない蟻族の僕も左眼が無くて右翼がない上に雁族であるガン流豆さんも同じだ。ユゥ依って真正面を避けるのは当たり前。
 ムゥ三つ目はあるかな? ウゥあるとすれば助力を期待しない事。コォ此れも真理の一つであり、カァ代えがたい物。ヌゥ何故なら助力とは他者に依存する事を意味して自力では何も出来ないのと同じだ。ブゥ僕もガン流豆さんだけじゃなくてアントナや最近帰宅しようとする一番下の息子夫婦や外を周回する軍者達の助力何て求めない。ホォ本当は求めたいが、ファ僕はほぼ自力に近い状態で自然数の最終定理を解いた。フゥ故に僕は如何しようもないと追い込まれる迄は誰の助力も借りんぞ!
 サァ最後は……時間切れ、ナァなのか!)
 現実は其処迄待たせてはくれない。わかってはいても如何する事も出来ない真理の中では世界観補正は働かない。アントルーは数学者という完璧を生業とする学問に従事する者として其れを……受け入れる--と同時に複数広がる選択肢の中で最も妥当だと考えた、ある行動を選ぶ--其れは大声で助けを呼ぶ……決して助力を頼るのではない!
(クゥ此れで僕が間に合わずに死んでも……僕の声に気付いた者達が駆け付けて生きた証を残してくれると、スゥ信じてえええ!)
 百獣型はまさかの大声で叫ぶアントルーに少し驚く--何かを背負ったガン流豆に背後より首を回された状態で締め付けられ始める!
「グァガン流豆さん……茶の無い行動だ!」思わず叫ぶのを止めるアントルーは次のように断言する。「グゥ雁族の力じゃあ百獣型の首は極まらない!」
「ヤッテミナケレバ……ウオオオオ!」ガン流豆は左旋回されて庭近くの木に叩き付けられる。「ウグ……いでで、何て力なんだ、ヨ!」
 グァガン流豆さん……あ、ツゥ掴まれた--小柄な体型の蟻族であるアントルーは百獣型の巨大な右前足に丸く収まる程に捕まる!
「イケナイ……アントルーは時間旅行者じゃない。コノママデハ……シンデシマウ!」
「ァアああ、モォもう一本の前足で天井を塞いで……どんどん幅が狭く成ってゆく!」
 アントルーは暗闇が広がる中で確実成る死が間近に迫ると思うと己の中に封じてあった恐怖が一気に解放され、奇声を上げて唯一の穴に全ての足を使って駆け上ろうとする--だが、彼の生きたいという望みも空しく穴はもう一本の巨大な前足に依る封鎖されてしまった!
 アントルーの心の中では既に言葉に成らない計算式が広がり、最早あらゆる計算尺を駆使しなければ意味すら理解出来ない程に乱れる。数学者だった彼が自己を保持する為に其のような状態に成るのか? いや、彼も又一生命である--そうである以上は恐怖の余りに、数学者として生を終えたい一心が支配していた!
 そんな彼の意識無き防衛本能は……突如、光が広がり始める天井を前にして終わりを迎える。
(ンゥ対数二の三十二が五である主な……って何だああ!)
 其れはアントルーにとっては一体何が何だかわからない光景であった!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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