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一兆年の夜 第百十話 時間旅行 天才南野ヒツ市の閃き(終)

 午後十一時三十七分四十八秒。
 指揮官型を取り囲むように三名は恐怖する--囲んだ側が恐怖の表情をする理由は……囲む相手が最強の銀河連合と称される指揮官型にある。
(指揮官型を相手にーイ私達が勝てる筈がない。普通ならそう思わなければアアー意味がない。此の先も此れエエーからも……と恐怖心を如何にかして誤魔化そうと試みる私が居るーウ。だが、誤魔化し続けても指揮官型の前では頭脳労働者は恐怖しイーか思いつかなイー!)
「オマエラ、今は恐がっている場合ジャナイ!」ガン流豆は当たり前の事を檄として飛ばす。「タタカエ……其れしか俺達に可能性はナイ!」
 ああうん、そうだともうむ……あるぞうむ--ファウ俊は言葉に表せなくとも自らに檄を飛ばそうと必死に成る。
「ああ、あああああああアアー!」ヒツ市は叫びつつも用意した自作製電磁望遠砲を構える。「先足必勝で行くぞおおおおおおおオオーイ!」
 だが、指揮官型の速度は一瞬にして望遠砲の間合いに--引き金を引く間もなく、人達の斬撃を受けて血飛沫あげながらファウ俊は左横に倒れた!
「ファウトシのジジイが……死んだノカ!」一瞬にしてガン流豆に接近する指揮官型に言葉が追い付かない。「ッテイツノマニ!」
 何とか指揮官型の超近距離迄飛び込んで腰を抑えてから斬撃の初動を潰したガン流豆--だが、ファウ俊が切られた事もあって機会である筈の此の状態に対して咄嗟の行動が採れないヒツ市が居た!
「……そ、そうだ--」
 ウグワアア……遅過ぎるぞ、ヒツ市のジジイイイイ--機会とは待っては訪れない……故にガン流豆はヒツ市の方角に蹴り飛ばされて射線軸に入ってしまった!
(拙いーイ……もう引き金を、う、わあああああ!)
 発射された--其れはヒツ市にとって同胞を倒す行為に他成らない……罪を背負うのか、背負えるのか!
 ところが、放たれた一撃はガン流豆を通過して指揮官型の胴体を貫通……指揮官型は確実な死を迎えた。いや、有り得ない。誰もがこんな事は有り得ないと思える程の結果に--ヒツ市もガン流豆も如何してそんな結果に成るのかを考える程に次の行動が採れない!
(一体何が起こったアアー? 確かに右前足を伸ばせば届く所まで彼の体は近くにあったアー……方向転換する余裕もないーイ。例え熟練者でも方向転換しても自作製電磁望遠砲の威力の前では掠り傷も致命的だアアー。なのに、太間ガン流豆の肉体を通過するかのようにイー放たれ、絶対に勝てない筈と思っていた指揮官型を一撃で……って仰向けに倒れる指揮官型、そそうだアアー!)
「ナ、ナンダ!」ヒツ市だけじゃなく、ガン流豆も其れに気付いた。「シキカンガタから液状の何かがファウ俊に向かって接近スルゾオオ!」
「拙イーぞ、其れだけは」我に返り、肉体の機能も取り戻したヒツ市は先に狼煙を上げてからファウ俊の所まで向かった。「ファウ俊をやらせんぞオーお!」
 だが、走っても間に合わない距離にファウ俊が倒れる。最早此れまでなのか……其の時、液体型に向かって何かが飛んで来た--瞬く間に液状型は煙を放ち始めて苦しむようにファウ俊の周囲でもがき始めた!
「あれエエーは……固形炭酸!」ヒツ市は固形炭酸と呼ばれる水に入れると煙を放つ物を投げた方角を見て確認する。「お前は……現場監督ーウ!」
たいらマモルス……唯今惨状ぜおう!」正式名称平マモルススルスだけじゃなく、工事関係者の老者達が一斉に集まってファウ俊の周囲に集まる。「如何だあ、此のジジイは死んじまったぜおう?」
「残念ながら息をしておりまちゅ!」
「あれだけ長く切り付けられている乃似傷が浅い……妥斗!」
「まだまだ長生きされようぞ、此のオヤジとは!」
 ファウ俊の恐るべき強運にガン流豆は勿論の事、付き合いの長いヒツ市も驚きを隠せない!
(何て奴だアアー……普通なら死んでいる傷なのに生きているなんてーエ!
 此れも又、理論通りにはゆかないーイという自発的対称性の破れが齎す物なのか!)
 喜びと笑いが込み上がる深夜の密林……だが、其れも僅か二十四の秒の後に驚きへと変わる--気体にした液状型は何と時間旅行機に向かって馴れない体を動かしているではないか!
 サセルカアアア--誰よりも時間旅行機に思いを馳せるガン流豆は片翼のみで急加速飛行を行う!
 辿り着く頃には銀河連合の狙い通りにガン流豆を乗っ取り始める--だが、ガン流豆は其れも覚悟の上で自らの意思を以って……時間旅行機を起動させた!
『--其れは一歩間違えれば生き残った筈の私達を巻き込む強烈な光だった。私は私達
は死んだと思った。天王子を使用した時間旅行機が発動しては最早生き残る可能性は
ない。誰もがそう思った。
 しかし、私達は生き残った。そして彼の姿は此れを機に二度と私達の前に姿を現さなく
成った。此れが事件の顛末だ。生前の私の晩年に於ける物語は此処で終結。
 と其の前にある者達が私の前に姿を現したな。丁度ファウ俊が元気に成って直ぐ
だったな。彼等とのやり取りについても少し紹介しておこう。確か--』

 十二月五十八日午後二時十八分四十八秒。
 場所は不明。
「--以上が時間旅行に関する私と彼の逸話だーア」
 --成程、では彼は昨日の時代に戻る筈だったのですね。其の根拠は貴方が提示したようにヒッスス粒子が諸要因ですね?
「ヒッスス粒子はあくまできっかけに過ぎないーイ。だが、やっぱり当たらなかった理由が今でもわからないーイ。確実に当たった筈の望遠砲の一撃……だが、貫通したアアー。ひょっとすると彼はファウ俊も言うようにーイ中性微子のような存在でもあると思われるな」
 --とすると時間旅行した太間ガン流豆の実態は限りなく中性微子或はヒッスス粒子に近い、と仰る訳ですか?
「あくまで可能性に過ぎないーイ。其れに最早私に残された時間はないーイ。果たして私は一の週も或は明くる日には眠るように想念の海に旅立つかも知れないなアアー」
 彼の言葉は予言だった……だが、其の予言は大きく外れて約十一の月と二十八日も生き続ける南野ヒツ市。彼は敢えてそう言う事で時間旅行は実現出来ると自発的対称性の破れの応用法を以って彼等を泳がせたのである--次の取材先と思われるとある数学者の所まで!
(約二名……恐らく、太間ガン流豆が私と出会う前の彼だろうーウ。既に戻り始めているとしーイたらきっと私とは異なる完璧を追い求めてやまない彼のもとに向かっているのかも知れない。だが……彼には申しイー訳ないが、完璧は此の世に存在しないーイ。何故なら一般生命と銀河連合という全くぶつかり合う存在が居るーウのに如何して完璧と唱えるのか? 私達は一見すると立っている理論に心酔する余り、本当は倒れている理論に振り回されているのではないかアアー?
 其の事を良く肝に銘じてくれよーオ!)

 ICイマジナリーセンチュリー二百六十年十二月五十八日午後三時零分三秒。

 第百十話 時間旅行 天才南野ヒツ市の閃き 完

 第百十一話 時間旅行 証明者アントルー・ワームドの証明 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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