FC2ブログ

一兆年の夜 第十七話 猫と鼠(二)

 八月四日午前十時五分一秒。
 場所は小屋の直ぐ近く--ちょうどニャ朗が初めに入った竹製の扉が見える。
 ニャ朗はチュウ兵衛が振る舞った筍料理を完食したばかりだ。あまりの美味しさに
顔髭が少し伸びていた。
「御馳走様でしにゃ! 我様は普段早食いにゃのに、この筍料理は自然と前足を
進めるのを躊躇わせるにゃ!」
 それを聞いて上前歯を光らせた十兵衛はこう言う。
「そりゃあ筍料理を長年作り続けた田中家伝統の味付けの賜物でちゅ!
 一族は代々、『訪問者には神様のように大事に扱いなさい!』という言葉を守って
きたのでちゅ!」
「それで我様を受け入れにゃのにゃ!
 チュウ兵衛殿の両親もさぞ立派な方でしょうにゃ!」
 ニャ朗はそれを言って思わず「ア!」と叫ぶが時既に遅い--チュウ兵衛は涙目
になり、慟哭のあまり前歯が萎んでいった。
「ウウ! 竹採取の時に父上が慮らない事故がなければ!
 ウウウ! 母上が父上の死を悲ちんで身体を崩ちゃなければ!
 僕は、僕は! うううわああああ!」
 そして大声で泣き叫ぶ! それを見てニャ朗は「またやってしまった!」と思い、
その場から離れようと考えるが--
(良くにゃい! 我様がここで離れてまた奴らが現われて手遅れににゃったらどう
責任をとればいいにゃ!
 ラエルティオの時だってそうにゃ! 我様が逃げたかにゃベルニュアもハヤ人も、
九眉も死んだ! 我様のせいだ! 我様が逃げ方を心得にゃいばかりに大勢を死
に追いやにゅ!
 だけどどうすにぇば!)
 ニャ朗は考えがまとまらない以上、しばらくチュウ兵衛が泣いている様子を
眺めた!
(ここは踏み込にゅべきか、それとも!)
 あまりに何もしない為、チュウ兵衛はニャ朗に話しかける!
「何眺めてるのでちゅか! 生命がせっかく泣いてるのに慰め一つ無いのでちゅ
か!」
「い、いやそうではにゃく、つまらにゃい事で悩んでいた!
 た、ただそれだけ!」
 昨日の晩と同じくチュウ兵衛は涙目でありながらつまらない事は何か興味津々に
なった!
「な、何かつまらない事でちゅか! 聞かせてくだチャい!」
「また聞くのかにゃ! 眠りに就くまで態度が良くにゃかったのにぃ!」
「それとこれとは別でちゅ! 慰めのつもりでもいいから聞かせてくだチャい!
 チュまらない話百連発の内から二十五発目をどうぞ!」
 あまりの迫力に早くから根負けしたニャ朗はとうとう二十五発目のつまらない話を
始める!
「それは十二の年より前の事にゃ!
 セネカ町近くの森で我様は野宿をしにぇいた時、注意不足で近くにあった焚き火で
木を燃やしてしまったにゃ!」
 それを聞いたチュウ兵衛は思わず涙を流すのをやめた!
「そ、それは大変な事になったでちゅ! そ、それで火はどうなりまちたか?」
 いつも通り顔髭を伸ばしながら笑顔で答えた!
「その日の天気が大雨だった事もあにぃ、付いてからすぐに鎮火しにゃよ!
 あの時は心臓の鼓動が高まったにゃ!」
 いつも通りつまらない落ちなのか十兵衛は涙目を通り越して冷めた眼差しに
なった!
「ハア、ニャ朗さんはいつになったら面白い話が出来るのでちゅか?」
「つ、次こそ面白いにゃ! それは八の年より前の出来事にゃ!
 神武諸島行きの船に乗っていた我様はとある猫に恋をしてしもうたにゃ!」
「こ、今度は恋話でいくのでちゅか!」
 チュウ兵衛は恋話に興味を持っていた--彼には鬼ヶ島に暮らす鼠族の少女に
恋をしている故。それに気付くはずもないニャ朗は落ちを考えずに話を進める!
「どうやって彼女にぶつかればよいのか悩んだにゃ!
 直接迫にゅか? それとも知者に紹介して貰って迫にゅかを!
 悩んだ末我様は直接迫にゅ事にした!」
「そ、それで結果はどうなりまちたか!」
 いつも通りの笑顔で答えた--ただしその後は顔髭の力が抜けて落ち込む!
「実は大マンドロス町に婚約者がおり、旅行から帰ったら式を挙げる予定にゃ。」
 さすがに恋話の落ちがそんな物だと十兵衛は太陽に背を向けるように涙目に
なった!
「その落ちは良くないでちゅよ! それじゃあ結婚出来ない雄の同情話じゃない
でちゅか!」
「一応つまらない話にゃ! さっさと次の--」
 二十七発目のつまらない話をしようとした時、小屋全体が破裂した--破裂音に
驚いた二名の視線は小屋の方へ向けた!
「な、な、にゃんだてええ!」
「ぼ、僕の小屋ガアア!」
 破裂した小屋に一体の銀河連合が立っていた--竹を破壊する音を出し、ニャ朗
の方へ視線を向けるかのように!
(わ、我様を見てい、いるにゃ! こ、こ、この銀河連合は、ハ!)
「アワワワワ! ぼ、僕が一の月かけて作った竹の小屋がががが、ア、ア、ア、ぎ、
ぎ、ギー-」
 銀河連合は二名がいる方角へ大地を強く叩きつけた--朝ご飯を食べる為に!

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR