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一兆年の夜 第百四話 時間旅行 物理学者シュレイ・ディングァの思考実験(三)

 午後三時一分四十七秒。
 最初の議題は銀河連合の中に液状型が居るか如何かである。最近の銀河連合の戦法として中に液状型を宿らせて宿主が倒れるのと同時に処理しに近付く生命に乗り移るという方法。此れについてシュレイを含む五名は熱く成る。
「あのね、えっとね。其れよりも如何やってね、あれだね、そうだね……如何やって銀河連合の中に銀河連合が居るとわかるのね?」
「緑細胞族を調べるような物だぞう。自分には難しい話ぜおう」
「又、わしらとしては避けて通りたいハイゼ先生の確定可能外の原理に関する話にゃ。全く銀河連合の中身を知る迄はそんなの分かりっこないんじゃないにゃ!」
「ヒハカイケンサヲすれば中身を確認出来るのではナイカ?」
「そりゃっとそうだっげう、しかし非破壊で波紋を調べる前に飛び出して来たら元も子もないだう!」
「まるで此れは……シュレイ先生の提唱した箱ではないかね?」
「箱を提唱したのは如何にハイゼ先生を始めとした量子論者達にお前達の主張が如何におかしいかを突き付ける為にゃ!」
「デモシュレイ……其の箱を出した事で却って混迷を極める事に成ったと思わナイカ?」
 其れでもわしは出すしかにゃかった--苦渋の決断は何時だって世に発表する前は悩み抜く……シュレイは其れでも覚悟するしか道はないと断言する。
「箱の云々で話すべき事は其方ではないぞう」
「何だいね、小僧ね」
「他には……そうだぞう。銀河連合を入れた箱……つまりシュレイ先生が突き付けた矛と盾についてですぜおう」
 あ、そうだにゃ--其処から銀河連合の中身からシュレイの思考実験へと議題は移り出す。
 五名は気付かない--何かが五名を喰らおうと窺う……まるで入るまでは行動を決定しないように!
(と言えども突き付けたわしでさえも箱に関する答えを持ち合わせていにゃい。あれは鉄玉が転がっているにゃ或は転がっていてもちゃんと望遠刀は弦を引っ張って望遠弾発射するように動いてくれるのにゃ? 仮に発射されても上手く銀河連合の後頭部を貫いて死亡させてくれるのにゃ? 箱の中で幾つもの可能性が重なり合わさって開ける迄わからないように成っていにゅ!)
 話はシュレイが提示した仮定に集約される。シュレイが此の箱の矛と盾を提唱したのはハイゼら量子論支持者に対する牽制である。シュレイだけじゃない。アインズも量子論を認めない主義である。彼は神々が双六をする事を頑なに認めないでいる。観測する迄は粒子の状態がわからないのだとしたら其れは観測の限界を証明する事態に他成らない。全生命体には完全に決まった形を判断する術はもう何処にもない事を証明するような事態を認めてしまえば銀河連合への対処も自然に任せる以外にないと認めかねないのである。
 故にシュレイは箱を突き付けた--量子論の確定不能な概念を打ち破る為に……そして其れは却って余計に量子論を混迷へと追いやってゆく。
「自分としてはですねぞう、箱の強度が気に成りますぜおう」
「ソッチカヨ、あのなあ……そんなのは決まってイル。ハコノ強度は保証されている……ナア!」
「ああ、だから問題にゃい」
「だったら箱の中は鉄玉が転がっているか如何かぜおう。箱を開けた時に転がっている状況と転がっていない状況がわかるぞう」
「だから量子論はいけないね!」
「話はまだ早う。転がった後の所でも分岐点は生まれっぜう!」
「はいぜおう。分岐点はやはり望遠刀の弦ですぞう。弦が最大まで引っ張らないと望遠弾は発射されないぞう。だが、箱を開ける迄最大まで引っ張っている状況と途中で何かに引っ掛かって弦が上手い事伸び切っていない状況、或は引っ掛かりが起こらなくとも鉄玉が転がる力が余り乗っからずに伸び切らない状況……幾らでも状況が重なり合わさるぜおう」
「ナンデそんな仮定を考案したんだよ、シュレイ!」
「わしだって考案したくにゃかった。だが、量子論の如何しようもない理由に納得がいかにゃかった。其の結果、此のようにゃ事態に……じゃなくてまだ話は終わっていにゃい!」
「ああそうだね。其れから此れも重要だからちゃんとね、よおく頭にね、叩き込んでね」
 相変わらずアインズ先生は遠回しに言うなう--とゲロルギーはアインズの喋りに対して呟く。
「あのなあね、わしは余り他者と会話するのが好きじゃないね」
「ワカッタカラ早く言え、アインズ!」
「全くね……えっとね、そうだね。最後はやはりね、仮に望遠弾が発射されたとして其れは確実に銀河連合の後頭部を貫くかね? 其れとも貫かずに偶々皮膚と皮膚の間に止まっていたね。其れとも……開くまでわからないね」
「いや、まだ最後にするのは早いにゃ」
「えね? 他に何かしらね、あるのね?」
 あるよ、発射されて無事に後頭部を貫いた後でもにゃ--とシュレイは開くまでわからない他の問題についてもアインズに伝える。
「アアソウダッタナ。コウトウブを貫かれた銀河連合が果たして無事に死んでいるのダロウカ? ハコヲ開くまで銀河連合は奇跡的にも脳の空洞を通り抜ける奇跡に恵まれるか、或は其の侭死亡するノカ?」
「まだ終わらないのかね」
「いや、まだあるだろう?」
「おや、気付いたにゃ。では何処かにぇ、ガーモフ君?」
「其れは実に簡単だう……最初の議題に出た銀河連合の中に液状型が混じっているか如何かだう!」
「そうだ……箱の中は更に重ね合わせの状況が起こにゅ!」
 箱はまだまだ恐ろしい事実が潜んであった。其れと時を同じくして建物外でとある何かが五名を喰らおうとあらゆる重ね合わせの状況を作り出してゆく……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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