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一兆年の夜 第十六話 語り継がれる物語(二)

 樹林さんは力を抜くように前後両足を正座し、訛りそのままに語り始める。
「今から二十の年よりーい前かの? ICで言うなら四十九年? 四十八年?
 よくわからんのう。とにかく場所は東物部大陸北ヘラクレイトス地方の川で囲まれ
た町があったのじゃ。生命達はその町をラエルティオと呼んだのじゃ。語源はどこ
から来たのかは今となってはわからないじゃろうが。
 とにかくそこでは年の終りいーに近付く月じゃったかの? ラエルティオウムと
呼ばれる野菜の収穫が盛んじゃ。ラエルティオウムはプロティイムと同じく年の
終わりいーいの月までに収穫しないいーと味が落ちて食べられなくなる。
 思い出した。十二月の事じゃの。その日は雪が大量に積もっとったのう。
ラエルティオウム畑のある北地区三番地で三番目に小さな民家に住む齢二十六に
して一の月と九日目になるラエルティオ羊族の女性がおった。
 名前は確か織田メエ耶と呼ぶかの? 町一番の美雌と呼ばれておりいーい、
各地区で彼女に想いいーを寄せる雄共は一杯居たのじゃ。
 そんな彼女は朝早くにラエルティオウムを収穫しいーに家を出たのじゃ。
 羊族にしては足の速いいー雌じゃった。三番地から畑のある一番地まで僅か三十
の分で到着しいーおったのう。到着して早々彼女は足鎌を履いいーて作業に取り
かかろうとしていた。そこへ遅れてやって来た齢二十五にして十の月と二日目に
なるラエルティオ羊族の青年が声を掛けたのう。
『オッハー! 元気、メエ耶ちゃん?』
 メエ耶はその青年に機嫌を無くしいーたのか、こう返事する。
『おはようございますのよ、細工無き雄さん?』
『細工無きは礼を欠クーよ、メエ耶ちゃん! 青樹メイ地っていうれっきとしたオラの
名前があルーんのに!』
『だから?』
『傷つくよ、メエ耶ちゃん……』
 二名はそんな会話を変わりなく毎日しおったのかの?
 そして作業は五の時が過ぎた。お日様は下りいー始めた頃じゃったか?
 二名は作業を一旦止めて昼ご飯を食べる事にしたのじゃ。
『昼ご飯はメエ耶ちゃん大好物のラエルティオ苺!』
『外れ! 正解は応神産のお米で作ったおにぎり!
 果物を昼に食べルー気はないもの』
『オラは食べるけど』
『細工無き雄さんの話は聞いてないーい!』
 メエ耶という女性はそこまでメイ地を無視しおったわい。二名の相性は離れる
ばかりいー、と思うだろう?
 実はこれ--毎日の会話なのじゃ。二名のな。その為こんな毎日がいつまでも
続クーんと二名も町の誰もがそう思った。
『た、た、大変だ、大変だ!
 周囲の、河川が、氾濫しておる!』
 齢三十八にして十七日目になるラエルティオ飛蝗族の老年が老体に鞭を与え
ながらも町中に河川の氾濫を知らせたのじゃ!
『本当じゃない事言わないいーでよ、南地区のダイ門さん!』
『本当だってば! 周りを、見回せば、わかるはず、だよ!』
『周りを見回セーば? ど……え! こ、これは!』
 二名が見た先は北門がある二番地区--すでに侵食さレーた!」
 つ、続きが気になるんけど、あたしは全力疾走でここまで来たから咽がカラカラ!
「ごめんなさい、樹林さん! み、水ってありますか?」
 樹林さんは無言で前右足の蹄を指すん--あったよ!
「ワシもちょうど一息つこうと思っとった所。
 ここはワシ自慢のラエルティオ伝統の茶を振るルー舞おうぞ!」
 樹林さんは三の時をかけてお茶を仕上げた!
「ま、まさかこの季節に熱いお茶を?」
「おや? お茶は昔から熱いいー方が美味しいーいはずじゃが」
 飲んでみたけど、熱かった! これ、人系の種族に振る舞うんべきだったよ!
「一息ついいーたようなので続きを始めようンーかの?」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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