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一兆年の夜 第百話 蒼穹の紅蓮 希望は未来だけじゃない(上)

 八月百二十五日午前零時一分一秒。
 場所は神武聖堂表門。
 紅蓮と白髪は表門を抜けようとした時--
『紅蓮……』
 紅蓮を呼びかける蒼穹の声が内側で響く--彼は其れを真上から何かが来ると感じ、其の方向に頭を向ける!
「如何しました、叔父様--」
 如何、避けるぞおお--白髪の両肩を掴むと紅蓮は門の外側に向かって飛んだ……すると二名の居た地点に約三体もの何かが急速落下し、粉塵を巻き上げる!
 だ、大丈夫でちゅか……紅蓮様に白髪さ--齢二十六にして二十六日目に成る神武鼠族の青年であるヤマカゼノチュミスケが落下して間もない狐型に一気飲みされ、其の侭骨が吐き捨てられた!
「チュ……チュミシタが!」紅蓮は直ぐに神武包丁を抜こうとしたが。「な、何故止める?」
「いけないのです」白髪は紅蓮を後ろに突き飛ばすと自らの持つ真古天神武包丁を抜く。「叔父様はもう御年五十です……そろそろ衰えを感じてもおかしくないのです!」
「馬か鹿な事を」だが、紅蓮も其れには既に承知である……「若い生命に任せるのは老者の務めだ……しかし!」だが、老者は若い者に任せていられる程、寛容ではない。「だからってお前達経験の浅い者達は私達を侮り過ぎだ!」
「叔父様……全く言ったら聞かない御方ですね」
「今は……な」紅の事を心配する紅蓮であった……「紅とお前が知らせた相手の方達の事は心配だ、しかし!」が、其れでも彼はこう信じる。「だが、私が出る幕はない!」
「……では、一緒に戦いましょう」
 ああ、そうゆう訳でお前達も力を貸せ--チュミシタ同様に警護に当たり、彼の敵を討とうと刃を構える齢二十五にして八日目に成る神武猫族の青年ニャルタラノニャスーダ達三名に呼び掛ける紅蓮。
「言われにゃくてもわかりにゃしたよ!」
「チュミシタの命は軽くないっち!」
「俺達は……全生命体の希望として戦いを止めないっがん!」
 銀河連合は先に落下してきた三体だけではない。何と神武聖堂に無数の銀河連合が落下して真古天神武建国前から築き上げた歴史を終わらせようと無数に湧いて降りる。其の数は表門の数十九体を含めても多くて千体に上る勢いである。彼等の狙いは天同家……跡取りである紅が倒れれば実質上、天同は終わりを迎える。地同家、中同家が必ずしも後に告げるとは限らない以上は何としてでも銀河連合は紅と婚約者との結婚を止める為に総攻撃を仕掛けるのだった!
 そして戦闘は未だ降り注ぐ中で始まった。銀河連合は初陣こそ紅蓮も白髪も左程苦しい戦いをせずに仕留めて行く。だが、こと序盤を超えた辺りから雲行きが怪しく成る!
(聖堂が燃え始めた……其の燃え移った火を浴びて銀河連合が突然活発化。上手く両断出来れば良いのだが、槍を持つ者達は其れが手元まで燃え移って已む無く地面に置く羽目に陥る。私の場合は僅か二回両断しただけで刃が解け始める。溶解し始めると刃毀れ同様に切れ味の低下を招く。いや、両断する前に奴等の肉体の炎が繋ぎ合わせて結局、手間の掛かる事に成るか)
 と考え出す時、紅蓮の神武包丁はまだ溶解する前だった--紅蓮は蒼穹の魂から齎された明日の情報を基に考えを導き出す。
「如何しました、叔父様?」
「白髪よ……お前に頼む事がある」
 何でしょう--白髪に伝えた事は次で説明される。

 午前零時二十八分十一秒。
 白髪の居ない戦場で紅蓮は先端が原形を留めない状態まで包丁が溶解しても燃え盛る神武聖堂内を駆け抜ける!
 其処で見たのは齢二十三にして十の月と九日目に成る紅の傍に付き添うのは齢十八にして八の月と十一日目に成る六影人族の少女を守るようにして既に半分までの刃渡りと成った真古天神武包丁を構えて奮戦。其処には連も同様に真古天神武包丁を構えて並み居る炎混合型を倒してゆく。
「ハアハア……父さん!」
「御父様……何故こんな所まで?」
「紅さん……此の方が貴方の?」
「紹介は後だ、雄実ゆみさん。今は--」
 危ない、紅--紅蓮は我が子に襲い来る炎蛇型の攻撃を守る為に包丁を明後日に飛ばして大きく両手を広げて庇った!
 蛇型の攻撃には炎型の影響で毒こそ解けて効果はなくなる。だが、影響には良くない方面だけではない。其の分だけ、紅蓮を襲う炎は周囲の炎に同調するように焼き尽くさんと燃え広がる!
「うわああ、父さんが!」
「行けないわ、御兄様……きゃああ!」
「まさか……キャア!」其の炎は紅や、連、其れに紅の妻に成るであろう一場雄実が助けに入ろうとしても駆け付ける事も困難な勢いで勢いを増してゆく。「紅さんのお父さんが!」
 勢いは周囲が思っている以上に紅蓮にとっては大いなる苦痛として次のように彼の心に悲鳴を上げて行く。
(何て……ウオオオ、熱は、此の熱は耐え難い!
 私、は、し、死ぬのか……だ、だが……もう十分に、だれおう、兄すあん--)
 急激な熱の痛みは意識を黒い穴に迄落としてゆく--と同時に神武聖堂を鎮める清めの雨が降り注がれる!

























 紅蓮が目覚めた場所は彼の中に蒼穹の魂が宿るきっかけに成った桃色の空間。
『死んだのか、私は?』
『お前は俺とは異なる。互いに老い耄れと成って果てようとも其の中身は大きく異なる。そろそろ俺は溶け込む時が来た』
『ハハハ、やはり主役は兄さん出なくてはいけなかったのかな?』
『別に俺が主役だろうが、お前が主役だろうが一つ一つの重さは其々さ。だがな、物語の終わりは此処じゃねえ』
『其れは私に言ってるのか……だが、あの炎は例え間に合ったとしても私は助からん』
『なあ、紅蓮?』
『兄さん……何時も勝手に進めるようだが、いい加減に死んだ後でも其の癖を直さないか?』
『……出来ない相談だ。兎に角、だ』
『わかった。私は結局、兄さんが死んでもずっと兄さんの後塵を拝するのですね……では話を続けて下さい』
『そうだな……兎に角、だ。物語には伏線が貼られる。伏線はやがて回収される時が来る』
『だが、回収されない伏線は如何する?』
『其の質問に答えられない。兎に角、だ。回収されない伏線は無理して回収する必要はない。潔くほったらかしにする方がマシだ』
『……つまり兄さんの魂は此の時に成って初めて私を生かすのですね!』
『……成長したな、紅蓮』
『齢五十にも成ったのですよ。何時までもお兄ちゃんに頼っている弟では居られませんな』
『じゃあもうそろそろだ。俺達の物語に終止符を打つ時がやって来た……そろそろ夢宇宙が俺の魂を回収しに掛かる所だ。えっと……最後に何て言えば良い?』
『現世と同じように考えずに言って下さい、兄さん』
『……アルキバームクーヘンは……美味しいぞ--』
『さよなら、兄さんの物語--』
























 午前六時零分零秒。
 場所は神武聖堂跡。其処は天同蒼穹の間と呼ばれた部屋が設置された跡。
(目は……開くぞ。わ、私は、死んだのか?)
 紅蓮に蒼穹との対話は最早思い出せない。代わりに紅蓮が目覚めると其処には涙を流して膝枕をする白髪の美しい顔が映る。
「叔父様……良かったわ、叔父様」白髪は大粒の涙を紅蓮の顔中に落としながら彼を抱きしめて行く。「少し痛みが走ります……が想いを熱で伝えます、叔父様!」
「白髪……此の痛みは、嬉しい!」
 白髪の想いに応えて紅蓮は抱き締める。
(紅奈、白浪さん、青葉、朱波、紅、蓮、父さんにみんな……そして兄さん!
 最後は私自身の手で幕を閉じたい。如何か、最後まで……私達の物語に付き合ってくれ!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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