FC2ブログ

一兆年の夜 第百話 蒼穹の紅蓮 希望は未来だけじゃない(再)

 ICイマジナリーセンチュリー二百四十二年十二月一日午前七時十一分十八秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ府中央地区鎌鼬党ボルティーニ本部。
 其の二階へ上がって真ん前に党首室が見える。現党首が本部を建て替える際に上がって直ぐに党首に会えるように配慮してそうゆう構造に成っている。然も部屋をの中に入ると其処には奥に机があり窓が眺められ、更には来客或は党員達の腰痛防止の為の高さ調節が可能な軽量銀製の椅子が全部で六脚用意されている。柔軟椅子が用意されないのは四代目王だった天同蒼穹が「あの椅子は却って腰を痛める」と呟いた事を参考に現党首が本部だけでなく全ての支部に軽量銀製の少し頑丈だが姿勢の安定に繋がる椅子だけしかない。然も二足歩行が可能な種族だけじゃなく、一般的な四足歩行種族達にも安心出来る軽量椅子も予備だけで十脚以上も用意する程に鎌鼬党は軽量銀製の椅子を重宝する。其処には鎌鼬党結党精神である--健康的で自然豊かな生活の為に--が籠められている。
 では現党首は何者なのか? 其れは党首室で執務する者がそうである。
(此の一戦に勝たねば私が最高官に成る事は永遠にないだろう。私は大王の座を退く為にどれだけの年月を費やしたかわからない。そして返上した事で私は自ら最高官に成る事を夢見た。全ては私のやりたい事を実現する為に)
 齢四十七にして五の月に成ったばかりの天同紅蓮。彼はICイマジナリーセンチュリー二百四十二年初頭に自ら党首指名選挙に立候補して最多投票数を獲得して党首に就任。僅かな間に彼は鎌鼬党の支持率を彼の兄蒼穹が筆頭最高官だった頃と比肩する程に迄、伸ばした。紅蓮はやはり大王に成ってから才能をいかんなく発揮した。其処には蒼穹の魂が彼の中に入った事も関係するが其れだけではない。
「ん?」紅蓮は扉を叩く音から誰が入ろうとするのかを見抜く。「叩く音が五回……白髪か」
「礼を失します、叔父様」其処へ齢二十にして十の月と十六日目に成る白髪。「叔父様、出口調査ではほぼ確定ですわ」
「だろうな……だが、最後までわからない」
「ですが、割合にして剛力党の候補であるヤマビコノシコウジンと比べて八分程突き離しております」
「だが、あいつは私よりも更に重要な公約を掲げている。何方が勝つかはさっぱりわからない。だが」紅蓮らしく自信満々に成らないが……「此処で勝たねば私はもう出番はない」紅蓮には最高官に成りたい焦りがある。「定年は齢五十までだ」
「如何して其の年齢までにしたのですか、叔父様?」
「若い芽を摘みたくない……其れ以外に何がある、白髪?」
「あります。だって叔父様は誰よりも御祖父様のやりたかった事や大叔父に当たる躯央くおう様が提示した全ての事をやり遂げる使命があるというのに!」
「だが、老い耄れは所詮は引退する定めにある。だからこそ副党首に朱波を選び、お前には其の補佐を務めるつもりで--」
 朱波お姉様の補佐はお断りします……私は叔父様と共にあるのです--と涙を堪えて訴える白髪。
 此処で紅蓮は白髪の思いが既に想いに切り替わっている事に気付いた。
(何処で白髪は私に……兄さんが生前言った事は本当だったのか!)
 紅蓮は過去を思い出してゆく。





















 ICイマジナリーセンチュリー二百四十一年四月七十三日午前五時二分三十二秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ府中央地区神武聖堂裏口。
 其処は天同家にしか許されない秘密の出入り口。地下から通り、やがて六虎府の南港にある予備倉庫地下二階にある蟻族を始めとした地中種族専用の労働区域に通じる。
 其処を通るのは齢四十にして十一の月と十三日目に成る天同蒼穹其の者。彼を追って声を掛けるのは双子の弟紅蓮。
「止めても意味がないぞ、紅蓮。俺は行くからな」
「わかっているさ。止めはしない……でも数が揃わないと行ったって逸れ銀河連合の質と圧倒的な量の前で要らぬ努力に成ってしまうぞ!」
「大丈夫だ……俺は既に南雄略に向けて募集を掛け、凡そ五十九名は揃えた」実際はお分かりのように船が四隻しか用意出来なかったのも含めて四十八名しか遠征に出られなかった。「お前等が来るまでの間は何とか持ち堪えてやるぜ!」
「其れだけじゃあ全く意味がない。保っても一の週までだぞ!」
「十分だ。お前等が一の週までに南雄略に駆け付ければ俺達の、ウッ……ゴホゴホ!」
「兄さん……やっぱり無茶過ぎる!」
「死に場所ってか……大丈夫だ、白髪!」
「白髪?」紅蓮は背後を振り返る……「本当だ……隠れてない出て来い」すると慌てて隠れようとする何かを見て紅蓮は気付いた。「えっと……誰かは知らんが」
 隠れる何かは姿を現す。齢十四にして四の月と二十六日目に成る白髪。彼女は土を下にした座り方をして父親である蒼穹に同行をお願いする。
「……お前はまだ若い。其れに」
「まさか青葉御姉様の事を言いますか、御父様?」
「いや、青葉だけじゃない。白浪の事もあってお前を連れて行く事が出来ない」
「……でも私は御父様の力に成りたいのです!」
「だから断ると言っておるだろうが。お前を連れて行くなら……って俺が読めないと思ったか!」蒼穹は背後より襲い来る鹿ケ谷反応して素早く神武包丁を抜くと首を刎ねる。「……フウ、まだ動きに老いは感じない」
 だが、蒼穹の判断は甘かった--首のない獅子型の切断面より蛇型が顔を出して何と……土下座をする白髪に向けて体を伸ばしてゆく!
「な、拙い!」
「あああ」白髪が気付いた頃にはもう遅い。「うわあああ--」
 だが……青葉の悲劇は二度も起こらない--蛇型は口を大きく開ける前に其の侭、力尽きて白髪の左耳を掠めるように飛んでゆく……頭部に紅蓮の包丁が縦に刺さったまま、然も刃の方は胃に向けるように!
「あ、あ?」
「……紅蓮、有難う」
「ああ、何だか知らないけど……無我夢中でやったら上手く行った!」
「ふああああ……安心すると欠伸が出てきた。そろそろ俺は行く。念が残るようだが、白髪。俺はお前を連れて行かない」
「……そうゆう事か。じゃあ後は私が何とかするから兄さんは向こうの酋長と出来る限り濃厚に作戦会議をするように」
 少し出来たからって生意気な事を……じゃあ宜しくな、再会は恐らく想念の海に旅立ってからに成るかもな--そう言って蒼穹は雄略大陸を目指して紅蓮達に背を見せて歩き出す。
(兄さんめ……洒落にも成らない事を軽く口にして。だが……兄さんは其処で死ぬ事はない。私は良く知っている。兄さんが死ぬべき時は--)
 叔父様--白髪は紅蓮の左裾を抓んで声を掛ける。
「何だ……礼か?」
「はい、其の……有難う御座います」
 此の時、紅蓮にとっては当たり前の事をしただけだと認識していた。だが、白髪にとって其の当たり前の事は大きな意味が含まれていた--思いが想いに代わるには十分な程の意味を!






























 ICイマジナリーセンチュリー二百四十二年十二月一日午前七時十三分一秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ府中央地区鎌鼬党本部二階党首室。
 話は現在に戻る。
「まだ六の年より前の恩を忘れていないのか、白髪!」
「ええ、あの時に私は決めたのです。叔父様が最後を迎える其の時まで叔父様を支える、と!」
「私には紅奈以外は求めない」
「叔母様は叔母様です。其れに私には……叔父様以外の雄はわからないのです!」
「……其れでお前は私が遠征部隊を率いる際にも同行した訳か」
「はい、御父様は私との同行は認めなくとも叔父様との同行を認めておりました。だからこそ私の想いはずっと叔父様と共にあります!」
「はああ……朱波はたった一名では--」
 其の事は心配……在りませんよお--齢二十五にして十の月と四日目に成る天同朱波は白髪と異なり、顔以外を全身覆うようにお腹を膨らませて現れる。
「朱波か……今で確か六の月を迎えたのだよな?」
「ええ、此の子はパパの初めてのお孫さんですよお」
「だが、良いのか? お前の夫は妊娠する前に銀河連合の襲撃を受けて--」
 其処は蓮ちゃんに支えて貰うんだから--と朱波は蓮を指名する。
「朱波お姉様」
「だから心配は要りません……白髪ちゃんは紅蓮が死ぬまで支えて下さいね」
「……わかりました」
 全く母親と同じで……まあ良いだろう--紅蓮は呆れた溜息を吐いた。

『--其れから私は出口調査通りの割合で選挙に勝ち、晴れて最高官に就任した。其処
から先の物語は次の通りである。えっと最初は何から始めよう? そうだ、あの話から
始めよう。
 先ずは--』

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR