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一兆年の夜 第百話 蒼穹の紅蓮 希望は未来だけじゃない(繋)

 四月百七日午前零時一分二秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型百七十七南側。
 本物のマルーシャの嘔吐が収まった頃に突然、前のめりするように気を失う蒼穹。
「兄さん!」
「蒼穹様……気を確かに!」
「……そろそろか」蒼穹は自らの死期がもう直ぐである事を自覚し始める。「俺は此処で死ぬ……だが、俺の意思で簡単に想念の、海に、旅立てない」
「もう無理はしないで欲しい、兄さん。此のままでは二名の娘達が死に目に--」
 いや……敢えて二名を遠ざけた--既に蒼穹は朱波及び白髪に襲名の儀に赴く頃には既に死んだ後だと告げていた。
「蒼穹様……折角あなたという方に会え、お姉様の者柄を知る事が出来ました、のに!」
「こっから先は俺が喋る……少々、夢宇宙と言うのは俺自身の意思を尊重しないから長話に成るぜ」
「ああ、お願いする……兄さん」
「……少し時間をくれ」
「わかった」
 蒼穹は頭の中で遺言は何にすべきかを考える。
(いけないな……朱波や白髪にはもう言っちまった。其れ、を、思い出そう、にも……チイ、考える、事さえ、も……此れが死、の、寸前、なのか?)
 やがて考えるよりも横隔膜を動かして有りの儘に呟く方が良いと判断した蒼穹は思い付きで遺言を語り始める。
「良いか……俺、は、生き、続ける。俺、の魂、は、えっと、何だったっけ? そ、そうだ。俺の魂、は……紅、に受け、継がれた。はは、じゃなくて……最後、に……アルキ、バーム、クーヘル、食べ……たか、ぁ、ぁ……」
 最早言葉を紡ぐ事にも限界だと感じた蒼穹は最後にこう考える。
(最後、の最後、に……えっと、最後、って……ああ、もういいや。もう良い……ってあれ、ああ、ああ、はは……こりゃあこれだあぁ、ぇ--)
 最早考えさえも及ばない程に自身の限界を感じ始めた蒼穹は目を動かしてこう伝える--あ・り・が・と・う--と!
 天同蒼穹の魂は--



























『此処は? 俺は……死んだのか? いや、俺の魂は……違う。俺達の魂はえっと此の桃色の空間にて溶け込むんだったな。だとしたら俺は……そうだ、あいつが知りたい!』
 蒼穹の魂は夢宇宙に語り掛ける。溶け込む前に一度だけ紅蓮の事を見守りたい、と!
『……何、出来るのか!』
 それに応じる事がわかった蒼穹の魂はやがて紅蓮の元へと向かう--時を遡るように!


























 一月六十八日午後十一時五十九分五十九秒。
 場所は不明。
 襲名の儀を行うのは当時齢三十九にして十一の月と八日目に成る紅蓮と蒼穹。紅蓮は蒼穹に語り続ける。王としての使命、王としての名前、王としての役割、そして初代仙者である天同豪から現在に至るまでを。
(な……何だ? 私に流れてくる此の感覚は一体!)
 紅蓮の中に蒼穹の魂が宿る。其れは眠っていた紅蓮の才能を引き出す事に繋がる。
(時が……止まっているように思える。まさか此れが噂の相馬灯と呼ばれる死に際に齎される感覚なのか? まさか兄さんよりも先に私が死ぬという事態に陥る--)
 やがて紅蓮は長い一秒を--























 --気が付いた時、紅蓮は桃色の空間内に居た!
『此処は何処だ?』
『気が付いたか、紅蓮?』
『兄さん……だね』
『ああ、此れは既に俺が死んだ後だ。だが、今お前が生きている時代にではない。其れだけは確かだ!』
『じゃあ何故兄さんが私を此処まで連れて来た?』
『此れからはお前の物語が始まる。其の為に俺はお前の中に入り込む。其れだけだ!』
『……えっと現在から過去に戻れないんじゃないのか?』
『宇宙の外からなら自由に入り直す事が可能だ……だが、どの時代なのかを俺は任意に入る事が出来ない』
『如何してなのだ?』
『微生種族を肉眼で確認出来るか、紅蓮?』
『出来ないな』
『其れと一緒だ。俺達一般生命には時間の細胞と細胞の隙間を見極める事なんて長い経験を積んでも漸く出来るか出来ないかって所だ。そうゆう意味では襲名の儀だったかな……其の時代に跳べたのが奇跡ってもんだ』
『兄さんが良く語った数字の世界の話だね。少しでもずれがあると全てが台無しに成るって段階の』
『いや、少しずれているぞ……話が!』
『まあ良いや。兎に角、兄さん。そろそろ元の場所に戻してくれないか?』
『嗚呼、良いとも』
 蒼穹の魂は紅蓮の中へと入り込む--






































 四月百七日午前零時五分零秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型百七十七南側。
(……そして兄さんの魂昨日の時代へと飛んで行ったのですね!)
「ウウウ、蒼穹様ああああ!」
「……」
 紅蓮は黙祷する。其れに続くようにマルーシャも黙祷を始める。こうして蒼穹の長い物語は幕を閉じ、紅蓮の短くも儚い物語が始動する!
(私が果たすべきなのは……兄さんが果たせなかった事を自らの手でやるのではない。私は大王だ。ならば私のやるべき事は即ち--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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