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一兆年の夜 第百話 蒼穹の紅蓮 希望は未来だけじゃない(四)

 四月百四日午前零時零分零秒。
 場所は不明。一の年より前に蒼穹が王に襲名した時とは異なる場所。
(保てるのか……俺の意識は)
 王が襲名する場所は襲名する度に異なるよう法律で定められる。だが、どの場所も一般生命には知られない。全てを知るのは紅蓮のみ。何故なら大王は王が襲名する場所を知る義務を持っていた。故に紅蓮は大王に就任後に様々な場所に移動しては其処でどのように襲名されたのかを夢宇宙との交信を通じて知るように成った。奇しくも紅蓮の才能は大王に成ってから徐々に開花した。一般生命なら老齢期は衰えだけが日に日に目立つ。だが、紅蓮は今まで才能ないと思われていたがそうではなかった。
(僅か一の年で全ての土地を覚えるように成った紅蓮……俺と同じように本当は才能が有った。だが、開花するのが遅過ぎた。此れを後の頭脳労働者は何と呼ぶのか?)
 さて、そんな紅蓮ではある。如何してこうも準備良く襲名の時期を決定出来たのか? 実は紅蓮は大王に就任する二の年より前に既に蒼穹の任期が短い事を就任前から気付いていた。其の訳は青葉の死を契機に感じたのではない。代々の仙者が持つ夢宇宙との交信が紅蓮に速やかな襲名の儀を進めるように促した。仮に明日を見なくとも何れは襲名の儀を急ぐと後に述懐する紅蓮。其れは紅蓮が命運びという名の定めに逆らえない事を既に自覚するが為に。
 ではそろそろ襲名の儀を紹介する。襲名するのは紅蓮の第一子紅。齢十四にして五の月と十八日目に成る。紅は常に妹である蓮を心配する。だが、其れに対して紅蓮は次のように答える。
「蓮には白髪が付いている。だから安心して王に成るのだ、紅」
「……わかりました、父さん。僕は真古天神武第五代王として……穹の者を受け継ぐ!」
「ああ、そうしてくれ……ウググ」
 蒼穹が前のめりする所に紅蓮は駆け込む。
「兄さん……良く耐えた!」
「俺は……死なねえ。俺の名は……紅に受け継がれた」
「伯父さん……もうわかったから如何か、父さんに頼ってくれますか!」
「まだ、俺は……死なねえ」
 わかったから兄さんは私に背負われるのだ-そう言って-紅蓮は弱り切った蒼穹を背負った。
(此れは……そうか、昔は俺が背負ったんだな。まあ思い出にも成らない話がここに来て思い出されるんだな。ハハ、情けねえ。ずっと手間取った相手に遅咲きながら意趣返しされるなんてなあ)
 蒼穹は涙を流す。それを指摘しようか迷う紅。そんな彼を見て紅蓮は……「もうお前は王として始動した。だから自由な事を述べて良いんだぞ」と助言。其の助言を受けて……「伯父さん、泣いているのですか?」と尋ねる。
「何……此れは少し場所が宜しくなかったから目に砂粒が入っただけだ」
 わかりました--其れを聞いて紅は此れ以上の質問をしなく成った。
「紅蓮……少しあの場所に立ち合わないか?」
「わかった、兄さん」
 紅を神武聖堂迄運び終えた紅蓮と蒼穹は早速例の場所へと向かう。

 百六日午後十時二分十四秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型百七十七南側。其処にはマルーシャ・ヘラルドが眠る墓地がある。
 蒼穹は毎の年に必ず彼女の墓を綺麗にしてゆく。二名が其処へ辿り着いた時、齢三十五にして二日目に成るストテレス人族の熟女が既に献花して黙祷を始めていた。
「先客……あれは、ヘラルド家の生命か?」
「わかるのか、兄さん?」
「……あら、まさか貴方は!」ヘラルド家の人族と思われる熟女は弱った蒼穹の顔を見つめる。「……天同、蒼穹様ですか?」
「そうだ……貴女は何者ですか?」
「私はストテレス人族のマルーシャ・ヘラルドと申します」
「何……マルーシャだって!」蒼穹は驚く余り、転がり落ちる。「イデ……ウググ、最早自力で立つ事も出来ないか!」
「何故ですか、其処のヘラルドの方」紅蓮は尋ねる。「同じ名称の姉妹なんて聞いた事がありません!」
「いいえ、同じじゃないのです。お姉様は勝手に私の名前を使って家で為さいました」
「勝手に名前を?」蒼穹は紅蓮の右肩に凭れる事で何とか両膝を立たせる。「ウググ……俺は二十八の年もの間、彼女をマルーシャ・ヘラルド本者だと思っていた!」
「いいえ、実はですね」
 本物のマルーシャから聞かされる真実の話。其れはマルーシャ・ヘラルドを名乗る人族の少女の本当の名前はシャーナ・ヘラルド。彼女は親の決めた方針に反発して家を飛び出す。自ら新たなるヘラルド家を起ち上げる為に六虎府経済都市を目指した。だが、旅費は其処を尽きて行く。船で回るにも多くのマンドロン紙幣が其処で採ったのはマンドロス山にある極秘の道を進んで直接六虎府経済都市に向かう事だった。そして……「そして彼女は、此処で死んでしまったのか」
「地同家みたいだ。父さんから聞く所に依ると正伝伯父さんはお祖父さんと意見が合わずに家を飛び出して真古天神武の中で新たな国家神武建国を夢見ていた……だが、結果は伴わなかった」
「歴史は繰り返します。然もお姉様は道が始まったばかりの段階で命を落としてしまった……私はずっと探しておりました!」
「そうだったのか……俺は事実を尋ねるのが恐くてずっとヘラルド家の生命と繋がりを断って来た」
「いいえ、正統なヘラルド家は私で最後です」
「でもヘラルド家は地同家や中同家に嫁ぐ事で命脈は受け継がれていくのです……少なくとも私の考えでは!」
「ええ、そうですね……えっと貴方は天同、紅蓮様ですね?」
「ええ、そうですが」
「お願いで御座います……紅蓮様」本物のマルーシャは地面に両膝を付いて両手を綺麗に重ね合わせると深々と頭を下げてこう言った。「ヘラルドの明日の為にも如何か……ううう!」
 本物のマルーシャには二つの魂が宿っていた--其の内の一つはヘラルドでもう一つは彼女が理無いと思っていたヘラルド家の正当な跡継ぎだった。
「まさか……此れは!」
「良かったですね、本物のマルーシャよ。ヘラルド家はまだまだ安泰だぞ」
「其れにしても誰の子だ?」
「……其の名前を告げる事が出来ません」
 蒼穹は其処で誰かである事に勘付く。
(……いや考え過ぎだ。幾ら何でもそいつである可能性なんて……有り得ない!)

『--結局、兄さんは最後まで本物のマルーシャの胎内に宿っていた赤子の父親について
話す事をしなかった。いや、恐らくは夫婦の制度にだが、おおよそは見当ついているの
だろう。
 其の話よりも先に先ずは兄さんの最後から私に物語の旗印が変わる話を紹介しよう。
そろそろだな。私が主役を務める短い話は。其の話は兄さんの話よりも短い。そして何より
も私にとって色濃く残る話題で一杯だ。まあ先ずは--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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