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一兆年の夜 第百話 蒼穹の紅蓮 希望は未来だけじゃない(序)

『--さて、最終部に入る。先ずは兄さんの物語の終わりまでを紹介する。次に兄さん
亡き後に私がどのように進んでゆくかも記す。だが、其の前に先ずは復讐から始めない
といけない。
 私と兄さんの物語の始まりは別に感動話で良く見掛ける劇的な始まりではない。何処に
でも転がる日常話から始まり、やがて其れが一つの物語として繋がる。だからこそ私と
兄さんは父さん達が日夜繰り広げる会議室の入った所から始まったと言えばわかり
やすい。あれから私と兄さんの物語は始まった。最初こそ悲劇と言えども身内よりも外の
方に集中した。兄さんはマンドロス山で出会ったヘラルド家の少女の姿を目に焼き付ける
事で命の儚さを痛感させられた。私の場合は紅奈くれなの死がきっかけだ。立ち直れたのは
彼女が遺したくれないれんが私を立ち直らせてくれた。だが、紅奈の死は姉貴分であり兄さん
の妻であった白浪しろなみさんを幼児退行させるまでに大きな傷を与えてしまった。勿論、兄さん
はそんな白浪さんを支えた。時には兄さんの娘である青葉あおは朱波あかなみが共同で白浪さんを
支えると言ったお陰で徐々に兄さんは立ち直ってゆく。やがて白浪さんが寿命を迎えた
年にはもう兄さんは以前のように力を追い求める生命ではなくなった。其れがやがて仙者
の呼吸法を身に付ける程に迄兄さんを高める。だが、良い事ばかりではないのも人生の
険しい所だ。其れが白浪さんの遺した三名の雌子の一名である青葉の死である。本来なら
親の後に死んでゆくのが世の摂理。だが、青葉は誰かを守る為に六虎府工業都市中央地区
で最大の工場にて事件を起こした銀河連合と戦い、多くの従業員を逃がす為に自らの命を
捧げてしまった。
 今思えば王に成った後の兄さんはずっと死にたがっていたのは其の死が大き過ぎるせい
かも知れない。唯一自分の才を受け継ぎ、我武者羅に生きて真古天神武をもっと発展
させる役割を担う筈だった彼女の突然の死は兄さんが余生を楽に過ごすという選択肢を
捨てるきっかけに成ってしまったのかも知れない。
 だとすると此の話は其の兄さんの一面を知る良い機会かも知れない。本編に入る前に
紹介しよう。其れは--』

 ICイマジナリーセンチュリー二百四十一年一月七十六日午後十一時二十七分三十一秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ中央地区天同蒼穹そうきゅうの間。
 紅蓮ぐれんの間を引き継ぐ形で齢三十九にして十一の月と十六日目に成る天同蒼穹。顎髭を垂らしながら彼は座禅を組む。
(またか……夢宇宙は其処まで俺を生かす方向で進めたいのか!)
 尚、蒼穹が王に襲名する時に一兆年の神々夢宇宙に名称を変更される事と成った。理由は蒼穹が其れに対して神々では明らかに釣り合いが取れないと感じた為だ。蒼穹がそう感じ取り、そして其れを『宇宙』のように無限に膨張し続けるように思った為に夢宇宙と名付けるように成った。
(青葉に先立たれる明日なんて……では朱波や白髪しろがみは俺よりも早く想念の海に旅立たないとも限らない!
 教えろ、夢宇宙……全ての明日を俺に差し出せ!)
 だが、蒼穹は気付いていた。一生命が集約出来る膨大な情報は時として個を瓦解させかねない量である事を。そうと知っていて蒼穹は限りない明日までの情報を求めたのか……「兄さん、まだ起きておられたのですか?」其処に兄とは対照的に髭を一切合財剃った跡が目立つ紅蓮が踊り場側より間へと近寄る。
「紅蓮……か。相変わらず、髭の剃り残しがないかを水面の鏡で確認していたな?」
「いや、歳も歳で私は夜中に髭剃りは控えている」
「そうか……其れで何の用だ?」
「又、一兆年の神々と交信したな……兄さん!」
 夢宇宙だ……全く此れで七度目だぞ、紅蓮--と蒼穹は学習能力が疎い紅蓮に何だか優しげな眼で呆れる。
「兄さん……普段は苛立ちの目で私の学習能力を指摘する筈なのに」
「たまたまさ……ところで紅蓮?」
「何でしょう?」
「若しも俺が死んだ後の事だが」
「止めてくれないか、兄さん。私は兄さんの居ない人生を想像した事がない!」
「だな……だからこそお前には余生を白髪と一緒に過ごして欲しい」
「……いきなり何を言い出すのですか、兄さん?」
「お前の睨んだ通り、俺は夢宇宙と交信して来た」
「其れで見えた明日は何ですか?」
「其れが俺の頼みに繋がる……以上だ」
 そうして蒼穹は間の全ての戸を閉じて……「ではお休み……明日は早いぞ、大王天同紅蓮」
 ああ、お休み……王天同蒼穹--二名の中で認識の異なりが露呈した深夜の出来事であった!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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