FC2ブログ

一兆年の夜 第九十九話 蒼穹の紅蓮 現在を憂いても尚、(六)

 ICイマジナリーセンチュリー二百四十一年一月三日午前十一時十八分二十三秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ府中央地区新中央官邸三階第三最高官室。
 其処で齢三十九にして九の月と四日目に成る黒い顎髭が目立ち始めた蒼穹。彼は一期限りの任期で役目を終えると共に蒼天の後を追うように亡くなったラゼンルノの通夜への出席と新海洋連合会の副党首にしてサッカス鰐族と呼ばれる新興種族の一つを名乗るアリゲードラ・サッカルーズ政権への引継ぎの為の資料整理を進めていた。
(鎌鼬党が新海洋連合会に明け渡す程の得票数だったのは何とも悔しい思いだ。俺が仙者の呼吸法を学ぶ為に修業する序に少しでも政が正しく進んでいるかを知る為に俺は結党した。政権を握るまでに凡そ八の年も掛かった。俺が最高官に成るまでに合わせて凡そ十六の年も掛かった……仙者の呼吸法を身に付ける為だけに作った政党だ。なのに新海洋連合会に百万の票も離されて明け渡してしまった時は悔しい思いが滲む。俺が其処まであの党に思い入れを持っていたなんてな。決して俺が遊説に参加しなかったからあいつらが明け渡された訳じゃない。如何やら国民は新しい風を求めていたのかも知れない。其の風邪を理解しなかった俺達が居た……其れだけだ)
 時代は何時までも古い生命の言葉を信じない。常に移ろいで行かないといけない。移ろがない事は即ち、停滞を意味する。蒼穹は次のようにも考える。
(如何やら俺は本格的に王に相応しい考えを身に付けるように成ったな。古式神武から続く象徴として全生命体を導く為の王に。勿論、引っ張る事も重要だが、其の役目は最高官が相応しい。王が導き、最高官が引っ張る……そうゆう意味で国民は徐々に目覚めつつあるとも捉えられる)
 一つの事に留まるよりも様々な事柄に目を向ける。其れが健全な民主主義を確立する物だと蒼穹は考え、引き継ぎ作業を休む事なく続けて行く。
 お、此処に居たっがん--其処に齢二十九にして八の月と十八日目に成る新興種族にして新海洋連合会副党首であるサッカス鰐族のアリゲードラ・サッカルーズが第一最高官室に通じる扉から駆け込むようにやって来た!
「何だ……もう終わり、っていうような感じではないな。如何した、アリゲードラ?」
「蒼穹様……緊急の情報が入った。六虎府の工業都市中央地区で大規模な火災が発生した!」
「何だと……だったら引き継ぎ作業をしていられないだろ。お前は先に--」
「何故蒼穹様を呼んだかわかりまっがん?」
「如何ゆう事だ……まさか?」
「ええ……火は既に鎮火した後ですっざ、其の中から焼け焦げた遺体が計百六名、内人族が四名がん」
「人族が四名……だが、焼け焦げているなら詳しい身元は分からないだろう?」
「いえ、其の内の一名が年恰好からして十代中盤或は後半の雌でしてっぜ」
「十代中盤から後半まで?」
「然も……うううう、其の身元だけは……誰にでもわかるのでっがん!」
 突然、蒼穹の体内で巨大な冷気が包み込まれる。其れは恐怖から来る冷気ではない。知ってはいけない何かを守る為に発した冷気。冷気と同時に蒼穹は足下が崩れるような感覚にも陥った!

 午後四時十一分二十四秒。
 場所は総合病院第一手術室。手前までが患者の為の部屋が数多くあるなら奥は手術の為に用意された部屋が全部で九つまで用意されている。もっと拡充せよとの声があっても未だ足りない。まだまだ此の時代では総合病院だけで賄えることにも限界がある証拠だろう。
 そんな中で蒼穹は手術室に駆け込む。其処で待っていたのは初めに紅蓮。
「やあ、兄さん。今しがた私が命じて此処迄運んできた」
「運んできた……だと!」蒼穹は激昂の余り、紅蓮の胸ぐらを掴む。「何を馬か鹿みたいな事を口にするんだ、紅蓮!」
「あ、いけないよお父さん」胸ぐらを掴む蒼穹の手を放すべく駆け付けるのは齢十四にして二の月と九日目に成る朱波。「また白髪ちゃんが大泣きするよ」
「ねえ、ねえ……どうして黒っぽいの?」齢九にして二の月と二十一日目に成る白髪は齢九にして二の月と十三日目に成る蓮に尋ねる。「ねえ、れんちゃん?」
「それ……きっと死ぬって意味じゃないかな、ねえ?」双子の兄である紅に尋ねる蓮。「だっていくらゆさぶってもあおは姉さん、起きないんだもの」
「ああ……そうだね」紅は静かに父である紅蓮と伯父である蒼穹の所まで駆け付ける。「そろそろこの……えっといたい、で良いかな? おじさん……かくにんしてくれないか?」
 私科羅模お願い妥--齢三十八にして四の月と二日目に成るテネス鬼族の主治医であるギデンロウジャ・ダッジャールは一瞥する。
「救命措置は……えっと誰だ?」
「テネス鬼族乃ギデンロウジャ・ダッジャール斗申します。私端第一総合工場似照労働者乃健康診断乃為似やって来ました。です牙--」
「理由は先ず、其の遺体が本当にあいつか如何かを知るまで聞かん!」
 何が何でも認めない蒼穹。脳内では次のように錯綜する。
(確認する意味があるのか? あいつであったらお前は……天同蒼穹の精神は保つのか? いや、何を断定した言葉で表す!
 あれはあいつじゃない……あいつじゃないんだああ!)
 錯綜しつつも白い布の包みを外す蒼穹。其処で現実を思い知らされた。全てが黒く焼かれていたならどれだけ幸せだったか。だが、顔だけは如何ゆう訳か焼かれる事なく残っていた--そう、何かをやり尽くしたかのように微笑んで目を閉じるように!
 其れから蒼穹は再び白浪を失った時と同じような状態で胸を引き裂かれていた。そんな状態でぎでんろうじゃの話を聞かされた。

『--青葉は銀河連合の起こした工場焼き討ちにたった一名だけで立ち向かおうとした。
だが、焼け死んだ中の工場関係者三十三名は残った。齢十八の青葉を置いて逃げる事を
選択しなかった。そして彼等は多勢に無勢と知りつつも全ての従業員を外に出す為に
戦い、最後の手段として銀河連合を焼き尽くす事を決める。そうして青葉は命に陥る程の
火傷を受けながらも最後の従業員を脱出させると自らの手で全てを下した。其れが
天同青葉の下した最後の戦い。
 彼女が目を盗んで工場視察を強行したとしても若しも彼女が戦いを選ばなければ更に
多くの生命の命が失われていた。兄さんだけじゃない。私だってあの場に青葉と同じよう
に居たのなら恐らくは戦っていただろう。其れだけに神々は最後に彼女の亡骸だけは
わかるようにしたのだろう。
 だとしても此の一件も更なる追い打ちを掛けた。只でさえ、白浪さんの死を乗り越えた
兄さんが此処に来て実の娘に先立たれるなんて思いもしなかっただろう。そんな状態では
行けないと考えて私は王の襲名を先延ばしする決断をする。
 だが--』

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR