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一兆年の夜 第九十九話 蒼穹の紅蓮 現在を憂いても尚、(五)

 ICイマジナリーセンチュリー二百四十年一月三日午前十時五十七分三十二秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ府中央地区新中央官邸。
 其の三階の奥に最高官室がある。然も第一第二だけではない。窓がない第三最高官室が第一と第二の間に設置されてある。其処では非常時の専用階段もあって更には試験的に真古式神武で採用された地下通路も建設されてある。但し、まだ試験運用である為に耐震補強もまま成らない。其の為、非常階段で脱出する際は一階の応接室を通じて移動しなければいけない。まだまだ未完成が残る新たな中央官邸。
 そんな中央官邸の第三最高官室で引き継ぎを行うのは新しく最高官に就任した齢三十五にして九の月と四日目に成る蒼穹は顎髭を垂らす程に迄伸ばした。
(第三最高官室の案を出したのは当時の剛力党政権の犬丸ラド和だったな。確か新たに出来た強靭庁管轄の強靭大臣を務めたテレス犬族で何でもあいつは就任から職を辞する迄に合計二百五十七もの案を出した。其の内の百八十六は余りにも突拍子な物だったので採用はされず、何れは可能だが現実には理が無いと判断されたのが五十九、現実には出来るが可決されなかったのが八、可決されたがまだ施行されないのが二、残った二つの案が施行された。そう、第三最高官室の案と三つの緊急避難経路。地下の方はまだまだ安全とは言い難い。屋上は流石に空輸で避難するのはまだまだ安心出来ない要素が多い。残ったのは応接室を経由しての脱出か……銀河連合が狙うのは其処だろうな。まだまだ避難経路は必要だろうとあいつに言いたいが……そう成ると想念の海に行くしか道はない。確か去る年の猛暑の日にあいつは家族に看取られながら亡くなっていたな)
 蒼穹はラド和の事を考える内に生について考え始める。まだ三十半ばではある蒼穹。されど三十代は水の惑星で暮らす一般生命にとっては誰もが死を迎える時期。ラド和は確かに享年四十五ではある。其れでもラド和が強靭大臣に就任した頃には既に彼は体力的にも次は無理と考えて引退を決意した程。其れだけに政務を熟す生命にとって歳を重ねるという事は多忙を維持出来る程の体力が徐々になく成る事を意味する。そう成ると現実的に何が必要なのかもわからずに安易な近道を求めやすく成る。近道は時として遠回りを強制させる。するとより実現が遠退いてゆく。蒼穹は歳を摂るにつれて徐々に若かった己から遠ざかっている事に気付き始める。
 そんな時に第三最高官の席に座って左隣にある第二最高官室へと通じる扉から入って来るのは……紅蓮。然も彼は齢十四にして一の月と二十一日目に成る青葉を連れて来るように。
「青葉……お前は何勝手に付いて来ているんだよ!」
「良いでしょ、パパ。あたしだって色々学びたい事あるんだし!」
「あのなあ……朱波に白髪を任せられる程なのか?」
「大丈夫だよ、兄さん。紅と蓮も居る」
「お前も随分と感化されたなあ……白浪に」
 ママの話をしないでよ……全く--と青葉はやはり親の子のように涼の頬を膨らませる。
「ああ、話はそっちじゃないよ」
「わかってるぞ、紅蓮。親父が大変なのだろう?」
「いや、父さんはまだまだ七の地で様々な試みに挑戦しているよ……ラゼンルノと一緒に!」
 まだ生きるのか、ラゼンルノは--流石の蒼穹もラゼンルノがまだ存命である事に驚きを隠せない!
(本当に親父よりも長く生きる気だな、ラゼンルノめ。全く齢五十だぞ……集落の酋長にでも成る気か、あいつは!)
「あ、話が少し脱してしまったね」と紅蓮は話の腰を戻してゆく。「最新鋭の望遠砲の量産体制が……完了したよ、兄さん!」
「そうか……遂に祖父から続いた課題の一つを達成したか」
「望遠砲の量産が如何して重要なの?」
「銀河連合は遠くて近い将来に真古天神武全土より降ってくる」
「全土に降るって?」
「俺達も知らない話だ、青葉。想像も付きはしない話さ。だがな……祖父は其れに関して随分と魘されていたと聞くからな」
「聞くからなって……まるで他者事みたいに言っちゃって!」
「事実だろう、だって俺達が生まれる前に祖父さんは親父が老後生活の為に暮らす七の地で果てたのだからな」
「そうなんだ……ジージーが今も住んでいるあんな寒い所ってそうゆう意味も籠められているんだあ」
「序だから良く覚えておけよ。七の地は国家神武が三つに分かれる前に遠い先祖である七が奪還した証を立てた所なんだ……わかるか、其の意味を!」
「うーん……他にあるでしょ?」
「凄いなあ……当時の僕だったら其の後も良くわからなくて質問するのに青葉は他にも理由があると睨んでの質問をするなんて」
「寧ろ今でもお前の学習能力の低さには驚きを……って--」
 コラ、叔父さんに何て事を言うんですか--今もやはり父親の頬を強く引っ張る青葉だった。
(親子団欒で白浪も紅奈も生きていた時よりも……痛い!)
 頬を摩る蒼穹は改めて青葉の成長に対して微笑を隠せない。其の微笑を誤った解釈をした青葉は反対側の頬を先程よりも強く引っ張る。
「イデデ……何をするんだ!」
「笑ったでしょ。あたしって笑われるのが何よりも腹立たしいのよ!」
「別に馬と鹿を間違えるような微笑じゃないよ。青葉が可愛くて仕方なくて笑ったんだぞ!」
 其れでもやっぱりあたしは笑われるのは良くないのおおお--と青葉は更に強く引っ張った……二の日が経とうとも跡が残る程に!

『--其れが兄さんと青葉の最後の微笑ましい会話に成るなんて。私がもっと早く気付く
事が出来たら兄さんは、兄さんは。別に微笑ましい会話は青葉が生きている間でも繰り
返し行われたのは事実だ。最も其れは朱波と白髪と一緒の場合が多い。私が言いたい
のは兄さんと青葉との微笑ましいやり取りと会話は此れ以降ないという点である。別に
青葉が姿を消したとかそうゆう意味ではない。
 私が言いたいのは--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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