FC2ブログ

一兆年の夜 第九十九話 蒼穹の紅蓮 現在を憂いても尚、(憩)

『--紅奈の死は白浪さんに多大なる衝撃を与え、彼女の精神はもう。当然、兄さん
だって衝撃を受けたのは事実だろう。遊説の為に自ら傍を離れたが為に僕の妻を
死なせるだけじゃない。姉妹同然に育って来た白浪さんと紅奈。白浪さんにとって先に妹
を死なれる事は耐え難い苦しみを伴う痛みだからな。だからこそ第二部が始まる冒頭
で軍務大臣の次に最高官ではなく筆頭最高官だった理由は其れである。暫くの間、
兄さんは政務に専念出来ない状態が続いた。何、付き者を数名就ければ大丈夫だと
仰るのか?
何よりも兄さんでないと白浪さんは落ち着かないせいもあった。其の為、
兄さんは家族との時間を何よりも大事にするように成った。大を為す為に身近な事を
軽視して来た兄さんは此処に来て初めて其れを知った。自らの為にやる事には限界
が訪れる。そして有権者の票が才能では手に入らないのと同じように本当に大事な物
は大きな事をやろうという時には気付かない。兄さんは改めて己は一名だけでは何も
出来ない事を知った。何でも出来るだけじゃあ何れは限界が来る。大ばかり追っても
何一つ解決出来ない事だってある事を兄さんは知ってしまった。其れだけ紅奈の死は
白浪さんに甚大な衝撃を与え、兄さんに人生の目標を仙者に成る事から身近な事を大切
にする心を身に付けて行く。
 ああ、私か。私も紅奈の国葬から一の月もの間は碌に食べ物も通らなかった。でも紅と
蓮のお陰で白浪さんと異なって比較的早い段階で立ち直る事が出来た。寧ろあいつらが
余りにも幼い所から来る我武者羅さに遂に我慢出来なくなったつまらない意地を張る事の
虚しさを知ったのかも知れない。そうして私は立ち直る事が出来た。
 だが、兄さんは私よりも遅い。遅い故ながらこんな話が出来上がる程だ。確か--』

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十八年四月百五日午後十時二分十三秒。

 場所はマンドロス山標高成人体型百七十七南側。
 齢三十にして九日目に成る蒼穹は齢三十一にして二の月と十五日目に成る白浪の右肩に右腕を回して片方の腕は彼女の片方の二の腕を掴みながら進む。
(軍務の事は副大臣に任せるとしても……俺は力を求めるが余りに紅奈を死なせ、白浪を傷付けてしまった。だからせめて白浪の傍に少しでも居続けるのが一番だ)
「ねえ、えっと……お父様?」既に幼児退行の段階まで白浪の精神は大きく疲弊する。「山って新鮮な空気で一杯でしょう?」
「ああ、そうだ……って白浪、少し正座して待ってくれないか!」
 あ、お父さん……お待ち下さい--齢二にして五の月と二十七日目に成る女児である白髪が夜泣きするのを耳にして彼女の元へ行こうとする蒼穹の袖を掴む白浪。
「何だい、お前もか……わかった」
「わーい、嬉しいですわ」
 蒼穹は負んぶをする。そして白髪の所まで駆け付ける。すると其処に頬を膨らませるは齢十一にして四の月と三十日目に成る青葉。齢七にして五の月と十五日目に成る朱波は夜泣きを気にせずに大きな深呼吸を何回もしながら眠り続ける。
「ほらほら……白髪ちゃん。ママが見ているわよ、見ているわよ」
「うえええんうえええん」
「もう帰りましょう、パパ」
「いけないな。俺は母さんをある場所に向かうまで帰らない」
「でもねえ。あたしはもう風景を見飽きたよ。此れで五回目だよ!」
「全く俺に似て一々文の句を付けたがる雌だ」
「本当によ……特に朱波はいっつもママに似てて何事も上手く行くと思っているんだから」
「確かに母さんに似て……って白浪!」白浪が衣服を脱ごうとしているのを目にして彼女の元に駆け付ける蒼穹。「前に炎症起こしただろうが……其れは止めろって!」
「ヒ、ひ、酷いよ……パパ!」急に大泣きする白浪。「うえええええん、うええええん!」
「お、追い……少し大声を張り過ぎたな。御免だ、御免な!」
「あたしがもう少し大きければ……ねえパパ」
「何だ、俺は余裕がない--」
「ママの事は……あたしに任せて!」
「お前はまだ齢十一だ。余りにも此の務めはまだ幼いお前には心身共に--」
「其処は朱波と一緒にやれば……出来るからさ!」
「おいおい……朱波はもっと幼いぞ。あいつは自由に育てる方が--」
 だからお願い--幼いなりに大人達が行う土下座を模倣して見せる青葉!
(全く……何処で人族や鬼族みたいな二足歩行に適した種族でないと出来ない芸当を学んだのか。はあ、血は争えないな。そして改めて親父の苦労を味わったな)
 そう思いつつも顔を上げさせる蒼穹。
「終わったの、パパ?」蒼穹の背後から声を掛ける幼児退行が進行中の白浪。「ねえ、青葉葉何を蹲っていたのですか?」
「ああ、何ともない。少し様子を見たら只の腹痛だ……少し用を足せば直ぐに治るぞ」敢えて合わせる蒼穹。「心配させて済まんな、白浪」
「うん、だってパパは私のパパだから!」
「ああ、そうだな」白浪の抱擁に蒼穹は優しく、そして少し強めに抱きしめる。「……痛いか、白浪?」
「大丈夫ですわ。パパの……パパの愛情が其処にあります」
「あ、コラ……あたしと白髪をほっとくなんて狡く賢いなあ!」青葉は再び泣き始めた白髪を宥めて行く。「よしよし、お姉ちゃんが居るわよ……あーあ、全くこんな事なら志願しなければ良かった!」
「聞こえているぞ、青葉。良いか……雄に二言はない!」
 あたしは雌だよ--と冷静に返す青葉。
(心配だな。青葉と朱波に任せるのは。まだあいつらは幼い。幾ら今日が乗り越えられても明日、明後日、明々後日……出来るのか、あいつらに?)

『--だが、兄さんの心配は杞憂だった。実は青葉や朱波だけじゃない。僕の代わりに
紅と蓮を養育していたアリゲルーダ迄加わって白浪さんの面倒を見てくれた。お陰で
白浪さんの最後の一の年は充実した日の毎を送る事が出来た。最期を迎える一の週は
彼女が少しだけ幼児退行から抜け出して徐々に回復の兆しを見せる程までに兄さん達を
認識出来る段階まで行ったのだから描く度に涙を流したくなる。

 本当ならば執筆したい所だが、白髪が其の部分を執筆しようと試みたちょうど良い
時間帯に駆け付けて止めて来るのだから溜まった物じゃない。依って其の部分については
其れに詳しい他の誰かに聞くべきだな。
 其れで白浪さんが亡くなってからは兄さんは--』

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR