FC2ブログ

一兆年の夜 第九十九話 蒼穹の紅蓮 現在を憂いても尚、(三)

 十月九十六日午後四時二十八分四十三秒。
 場所は真古天神武テオディダクトス大陸サッカス地方西サッカス町中央地区。
 主に望遠弾倶楽部が打ち立てた功績は真古天神武にとっても巨大な礎。其処へ遊説に駆け付けるのは開発党だけではない。鎌鼬党だって駆け付ける。齢二十八にして二日目に成る蒼穹は幹事長として休まずに日程を組み続ける。特に西サッカス町は蒼穹にとっては取っておきたい選挙区でもあった。
(風が……そして長年培って来た内なる功は徐々に俺を高みへと上らせていく気がする。まあ、選挙区の実が全てじゃない。敢えてリが少ないと理解してでも組んだ理由は他にもある。其れが……テオディダクトス大陸に向かうと言うだけで得られる新たな空気だ!) 第三子も結局、雌の子であった事に少しも念が残る感情を抱く事はない蒼穹。其れでも蒼穹にとって其れは焦りを募らせる事実ではない。既に蒼穹の中で変化を起こす一風でもあった。其処へテオディダクトスの可能性の風が吹き込めば……僅かだが、蒼穹に大きな変化を齎すかも知れない。
 とそんな蒼穹の前に静寂を打ち破る影が一つ……「蒼穹様……此の選挙区で本当に大丈夫なのですかアア?」齢三十二にして五の月と九日目に成るエウク猪族の猪田イノ唐山--彼は全体面で問題はないのだが、一点だけ問題がある困った鎌鼬党現党首である。
「オイ、イノ唐山!」
「あハハ、な、な、何でしょうカカ!」
「ハア……俺は幹事長だから遊説よりも様々な対策で追われる身だ。だがなア、イノ唐山」蒼穹は指摘する。「鎌鼬流ならば空気の微妙な変化を読み取れ!」
「も、申し訳ありませンン!」
「ハア……まあ指名したのは俺だからな」蒼穹は自らの責任を理解する。「あの時は俺には被選挙権の資格を有していない事もあって仕方なかったがな」
「いや、其れだけじゃ……ありませんよねエエ」イノ唐山はこう発言もする。「自らの身の程を弁える事を習う……とオオ」
 かもな--蒼穹は少し微笑を見せながら背を向ける。
(民主主義に則って俺は責任を選ばれた者に押し付けない。其れは民主主義ではない……選ばせておいて責任を嫁に転がせるなんて銀河連合のような真似はしたくない。選んだ以上はどれだけの事があろうとも最後まで責任を持たないといけない。だが同時に幹事長としての仕事も全うする。結果……はあ、何時も白浪、青葉、朱波、そして白髪しろがみを心配させてよお。はあ、特に年齢上は何かを考えやすそうな青葉には俺は--)
 あのウウ、そろそろ壇上に御登りくださイイ--イノ唐山は相手の醸し出す空気を知らな過ぎた模様。
「あのなあ……もう良い」だが、公の時間が迫っているなら此処で溜まった苛立ちをぶつけるのは筋が通らないと感じて蒼穹は其れに従う。「全くどっちが党首なのかわからないなあ……ええい!」
「一応、俺が党首ですガガ」
 一応は要らん--と怒鳴り散らしてから用意された壇上へと上ってゆく。
「おやおやる、実質党首様たる御方が登壇しまするか?」齢三十六にして十一の月と八日目に成る菅原蝶族にして開発党党首である菅原バタ郎は声を掛ける。「まあ、良いでするがね」
「お前は良いよなあ……開発党の党首様らしく誰に対しても敬語を使わないってのは」
「そりゃあそうでする。科学の発展は時として礼儀を知らないのでする!」
「同感だな……其れじゃあ粉をばら撒いて聞いてろよ!」
 蒼穹は演説を始めた--其の時間は定時である午後五時を超えても続いた!
(またやってしまった。聴衆が残るのは良いけど、後で又選挙管理委員会から呼び出しを受けるなあ。ハア……全く制御が効かないのは良くないなあ)

『--さて、兄さんが一の週掛けてテオディダクトス大陸中を遊説する中で私達
首都居残り組は如何していたか? 其れは大変な事が起こっていた!』

 十月百三日午前五時十一分二十三秒。
 場所は真古天神武首都ボルティーニ府中央地区神武聖堂天同紅蓮の間。
 齢二十八にして九日目に成る紅蓮。彼の両頬は齢零にして五の月と十九日目に成るくれないれんの双子の兄妹に引っ張られる。
「イデデ……何を父さんを起こしているんだよ、紅に連」
「とうとーう」
「かあかあ、があ、があ」
「えっと母さんが? 紅奈が如何し……な!」
 紅蓮は蓮の顔中に染まった血を見て何かを察知した--上体を起こして上を見上げると其処には臍から先を貫かれて今も立つのが不思議な紅奈が右手に蘇我鋭棒を持って襲い掛かる指揮官型と戦っていた!
「お、起きたの……遅いです、わ!」齢二十五にして五の月に成ったばかりの紅奈は僅か一の分もの間、指揮官型を相手に三名を守っていた。「で、も……泣かないで、下さい、ね」
「な、泣かないだなんて」そんな頼みを応じれる筈のない紅蓮は既に涙を流して己の神武包丁を探す。「待ってろよ……直ぐに加勢する!」
「紅蓮の腕じゃあ」指揮官型の猛攻に左肘から先を切り離されながらも一撃、二撃と与えて行く瀕死の紅奈。「却って足を、引っ張り……うわあああ!」
「あ、ああ」
「うえ?」
「見るなあ、二名とも見るんじゃなあい!」二名に布団を被せてでも惨劇の瞬間を見せまいとする紅蓮。「お前等に……母さんの霰もない姿を見せられない!」
「いいえ、見せなさい!」紅奈は左肩に突き刺させたまま、指揮官型の首を貫いた。「僕は……無残ではありませぬ、事を!」
「紅奈……クウ」
 紅蓮が必死で見せまいと布団を被せても紅と蓮は其れを抜けて母の最期の雄姿を両眼に焼き付けるのだった!
「まーまー」
「とうとう、とうとう」
「ああ、お前達の母さんは……格好良かったよ」紅蓮は両手で二名を抱えると紅奈の仁王立ちした亡骸迄運んでゆく。「ほら、ゆっくり、ゆっくり……と」
「かあかあ?」
「とうとう、ねえ、とうとう?」
「ウウウ……御免、泣かないなんてやっぱり無理だよ!」
「やっと駆け付ける事が出来ま……っがん!」齢二十四にして九日目に成るアリゲランダの第二子であるアリゲルーダは間に合わなかった事を受けて人族立ちを止めて四足歩行立ちで現実に屈する。「俺が……もっと速かったら、ウウウっざん!」
「無理だ……相手は指揮官型だった。其れを、紅奈は……たった一名だけで僕達を守り通しながら、倒したんだ」
「何という強い御方でしたか……何故にこんな運命をっがん!」
 ウウウ、ウオオオオオオオオ--紅蓮の雄叫びは此の後、二の時も続いた!

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR