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一兆年の夜 第九十八話 蒼穹の紅蓮 過去に思いを馳せて(五)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十五年一月三十五日午前五時七分十八秒。

 場所はマンドロス山標高成人体型百七十七南側。
 其処で仮設民家道具迄持参してまで登山する蒼穹、紅蓮、白浪、紅奈の四名。当然、此の事は内緒の筈だったが--
(親父の奴は本当にいい加減で俺達が抜け出す事を想定して先回りするかのように昨の日の早朝に許可を出しやがった。お陰で……俺は好きな時間に登山する事も出来ずに紅蓮達の足に合わせて登山する羽目に成ったな)
「ふあああ、早い目覚めですね……三名共」
「紅蓮は相変わらず遅い目覚めでありまして」
「でも……螺旋巻時計で計算してみたら紅蓮さんは比較的早い目覚めですわ」
「そうゆう所で力を使うなよ、白浪」呆れつつも蒼穹はこうも言う。「でも此れも含めてお前は稽古の時は随分と上手い包丁捌きするよなあ」
「そりゃあどっかの誰かさんと違って楽しくやってるんですのよ」
「楽しむ物じゃないのですわ、お姉様」と紅奈は訂正を求める。「本来、僕達は倒す為の術を身に付ける必要はなかったのですわ」
「でもでも、私達は倒す術と思わずに楽しむ術と思わなくちゃやっていけないのですよ」
「そうは言いましても--」
「おっと喧嘩は止めろよ、二名共。俺達が哲学的な事を論じても結局、流れは止まらない」
「兄さん、僕がわからない事を他の生命もわからないと思いますよ」
「お前なあ、そうゆう学ぼうという意思がないと--」
「あらあら、喧嘩は辞めるのは何方様?」
「援護したな、クソう!」
 如何考えても利が有りませんよ、蒼穹さん--左肩に左手を乗せる笑顔の白浪。
(まあ退屈せずに済むけど、なあ……いや、今回登山したのは其の為じゃない。四の年より前に埋葬した少女の墓に案内する事が俺の目的だよ。楽しむとかそうゆうのは死んだ生命に見せる事が正しいのか正直わからないが!)
 蒼穹もやはり一般生命。死に対しては一般生命同様に敏感に考える所があった。一般生命は如何しても生き死にが関係すると悩み、苦しみ……其れと向き合って前進するのである。
「恐い顔しないでって、蒼穹さん」
「お前に俺の何がわかる?」
「全部わからない」
「だったら--」
「でも蒼穹さんは直ぐ下を向く行けない所は考え直すべきです」
「考え直すべきって?」
「ええ、悲しく見るのは気分なのです」白浪は次のように論破りを行う。「でも楽しく見る事は……意志の力です!」
「意志の力?」
「ええ、だから考える時は楽しく見る事を常にして下さい……そうすれば想念の海に旅立つ全ての生命に笑顔で対応出来るのです!」
「楽しい事を……簡単に言ってくれるぜ」
「簡単だから言ってるのです」
「お前という奴は……わかったよ。俺は気分屋だって言いたいんだろ!」
「そんな事を言ってません。私は意志を強くしなさい……そう言ってるのです!」
 はあ、お前みたいに楽な考えが出来ればどれほど幸せか--だが、蒼穹を納得させるには余りにも短絡過ぎた白浪の言葉。
「ああー、又しても私の事を馬と鹿を誤る生命だと思いましたね!」
 はいはい--そう言って蒼穹は朝食の準備を始める。
「こら、適当にして勝手に進めないで下さい!」
 蒼穹と白浪の関係はまだ……発展しない。其れを見て紅蓮と紅奈は次のような会話を行う。
「あの二名はまだ互いに喧嘩するねえ」
「蒼穹がもう少し懐を広く出来たら良いのですわ」
「無理だよ。兄さんは昔から何でも熟すせいで他者の意見に対して自分で論じ破ってしまう癖があるんだよ」
「何でも熟す……紅蓮、其れは貴方の思い込みです」
「え?」
「僕から言わせればまだまだ蒼穹は何も熟せておりません。熟せていないのですからああして自分で全てを解決しようとするのです」
「熟していないから自分で解決しようと……する?」
「ええ、本当に熟せる生命ならば……他者に頼る事も熟す上で大切なのです」
「そうか……じゃあ僕は熟せているんだね」
「いえ、紅蓮は逆にもっと頑張って下さい……と言わせて貰います!」
 何だよ、結局……兄さんと同じように言うんだね、紅奈は--と紅蓮は肩を落とした。
「はあ、僕は貴方の事で苦労しております。如何して出来ない事だらけなのですかって」
「だって……僕には、出来ない方が兄さんの為に成ると考えているんだ」
 紅蓮……貴方は--紅奈は初めて紅蓮の本音を知った。
 其れから四名は朝食を作って三十の分までに済ませると登山を開始。僅か三の時より後に例の墓まで辿り着いた。
「此処に初恋の人族が居るのですか?」
「初恋じゃねえ。抑々俺はまともに話す前に銀河連合の襲撃を受けたんだよ」
「其の方は今でも此処で眠っておりますのね」
「少し墓が汚くなっている。掃除しようよ、三名共」
 そうして四名は二の時も掛けて掃除を済ませる。勿論、墓石は変えずに其のまま。理由は遠過ぎる過去でも墓石として挿した物は永遠に其の者の魂が宿るとされる。墓石を変える事は即ち、魂の変容を意味する。一般生命にそんな事が出来る筈がない。其れから四名は一の分もの間黙祷する。
(初恋か……でも違うんだよな。俺は友達に成る筈だったお前を守れなかった。其の悔いを少しでも晴らす為に埋葬したんだ。如何か……安らかに眠ってくれよな。後は俺が責任以て遺族の方に生き様を知らせてやる)
 蒼穹成りに冥福を祈った。自分が余りにも熟せていないが為にまだ十分に生きる事が出来た命を呆気なく散らしてしまった事に。

『--幸い、銀河連合の襲撃がなくて良かった。あったら僕達は大変厳しい状況だった
かも知れない。そろそろ終わりが近付いて来たな。という訳で前篇の締めを飾るのは
私が父さんから王の位を譲り受ける其の時だな。とうとう、父さんは会議中に意識を
失ったあの日だ。直ぐに僕と兄さんはアリガルダルと共に搬送先の病院に駆け付けたな。
 確か--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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