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一兆年の夜 第九十八話 蒼穹の紅蓮 過去に思いを馳せて(休)

『--さて、約二つ分ほど休憩を挟む。此れはあくまで私と兄さんの物語である。
此の侭、進むと本編に入ってしまう。父さんがとうとう医師の言葉に従って隠居を初めて
代わりに私が三代目王として世襲し、此処から私と兄さんの物語が始まる事を。其の前に
少しだけ端話を一つか二つ紹介しよう。先ずは初めての挫折を味わう一の週より前に私
はある出会いを果たした。其れは--』

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十四年十月十六日午後一時七分三秒。

 場所は真古天神武六虎府経済都市第一西地区。其の中で真ん中より三番目に小さな建物にある出入り口付近の長方形の机にて椅子に腰かけながら蒼穹を待つ紅蓮。
「遅いなあ……又抜け出してとある会社の無断視察する約束したのに」紅蓮は蒼穹への満足しない言葉を呟く。「何時も僕の事を馬と鹿を誤る生命だと言って来る兄さんが此処に来て待ち合わせ時間に遅れる或は待ち合わせの場所を誤るとか……面白くない洒落をする気か?」
 そんな紅蓮の独り言を聞くのは齢十三にして二の月と六日目に成るルケラオス人族の少女。髪は真っ白という珍しい筈なのに長髪で尚且つ両眼共右は赤と左は藍という左右対称である。そんな彼女は紅蓮の正面に腰掛ける。
「あ、其処は待ち合わせの生命の座る席ですよ」
「あらやだ……僕ったら、間違えてしまいまして」
「僕……君、めすでしょ?」
「別に良いでしょ、一名称くらいは?」
「いや、良くないよ。少しは--」
 おお、熱いねえっざ--此処は食事処……故に働く生命は注文されたら料理を作り、其れを店専用の皿に盛り付けた後に盆の上に乗せて注文した御客の前に運搬する。
「おお、有難う」但し、紅蓮は既に昼食を食べ終えている為に運ばれたのは一杯の飲料水。「うーん、最近は美味い水ばかり飲んでいて少し舌がえっと……忘れた」
「贅沢……でしてよ」
「ああ、贅沢だよ。そうだ……えっと字は何て書くの?」
「はあ、此れは待つ方は相当苦労して付き合っているのですわね」
「何だって」紅蓮は初めて兄以外で己を見られる事に少し感情を露わにして両手を机の上に乗せて見下ろすように立った。「僕を馬か鹿か見たな!」
「良くない訳、其れって」
「そう思って良いのはなあ……いや」雌に向かって無気に成る事を恥ずかしがり、少し顔を横に逸らす紅蓮。「今のは忘れて」
「あらあら、君は寸での所で間抜けですのね」
「何なんだよ、さっきから」漸く紅蓮は名前を尋ねる前の自己紹介を始める。「あ、序に僕は紅蓮って言うんだ。神武人族でえっと……苗字は訳あって紹介しない」
「あら、君も苗字隠したいのね……なら僕も紹介するわね。僕は紅奈くれな……君とお揃いね」
「くれなか……うーん、字が想像付かないな」
「あ、飲み水くれない?」
「あ、良いけど」
 紅奈は左人差し指に水を付けて其処から机に向かって字を示す--紅奈--と!
「……変わった読み方しているね」
「普通はそうは読めない。『こうな』或は『くな』と呼ばれるわ……知らない者からは」
「だよね」
「あらあら、何か異論挟むかと思いましたわ」
「いろん?」
 はあ、お付き合いの方は相当苦労為さっておりますね--と紅蓮の学習能力の低さに溜息を漏らす紅奈。
(ん? 何で俺が座ろうとする席に何処の馬族の骨とも知らん人族の雌が座ってんだよ!)
 おい、其処は俺の席だ--椅子の背中を右足で蹴る蒼穹。
「あら、何て礼の知らない生命がやって来るの?」
「あ、兄さん!」
「あら、此の礼儀知らずの生命が紅蓮様の兄ですか?」
「ああ、弟仲が良いのは勝手だが……其処は俺が座る所だ、横に行け!」
「あらあら、先に座る者が優先されますわ」
「ああ、何て腹立たしい雌だ。俺が出会った中で最も腹立たしいぞ!」
「え、兄さん……紅奈以外にも雌の事あった事あるの?」意外な事を知る紅蓮。「僕にはないしょで色々行くなんて……何て生命だ!」
「ああ、其の事は気が向けば話す。其れよりも」蒼穹は何が何でも紅奈が座る席が特等席だと思っていた。「誰かは知らんが、お前は横の席に座り直せ!」
「其れは貴方みたいな驕った方が譲るべきですわ……今は亡きお母様は何時も雌優先を謳っておりましたわ!」
「五月蠅い。俺は平等主義者なんだよ。だからお前が横の席に--」
「五月蠅いのは貴方でしょ、此の……わからず屋さん!」
「二名共けんかするなって……わかったよ!」紅蓮は埒が明かないと見るや自分が横の席に座り、其処へ蒼穹に座るよう促す。「兄さん、僕の席を譲るよ」
「ハア……全くお者良しめ。其れは銀河連合にとって格好の餌食に成るぞ!」
「あら、貴方……銀河連合に挑んだ事あるの?」
「止めてくれ……其の話は俺達にとって隠したい事だし」
「はあ、此の雄が座るのでしたら」
「え、紅奈……もう席を立つの!」
「ええ、こんな雄と一緒の机なんて堪忍出来ませんわ。其れじゃあ……又」
 紅奈は去ってゆく。
「何なんだよ、あいつは?」
「ああ、僕達と同じように苗字を隠していたな」
「ところでどんな字だ?」
「え、興味湧いたの?」
「湧くか……だが、名前が気に成る。わかるか、如何ゆう字か?」
「……忘れた」
 はあ、お前という奴は--学習能力が高くない紅蓮に呆れる蒼穹だった。

『--後で判明する事に成る私の妻である紅奈。彼女との出会いは此処から始まった。
当初は私達兄弟は余り仲が宜しくない方だった。当然だろう、兄さんは誰に対しても余り
良い顔しないせいなのかも知れない。けれども僕と彼女が再会する時は少し特殊な環境
であったな。まさか父さんが--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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