FC2ブログ

一兆年の夜 第九十七話 恐るべき発明(九)

『良いか、二名共。わしは無碍に命を散らしたりはしないっち。わし自身は電撃望遠弾を使った後に無事に生還してみせるっか。だが、お前達が居たらあの子に火を点ける事は果たせないって。銀河連合はお前達の命を突け狙うっち。幾らキリモンが軍者だからってバレイズはそうはいかんっち。世の中の全ての生命が希望に成るのは早急であるように強いモノ達が必ずしも強くいられる保証は何処にもないっけ。若しかすると強さを証明する前に果てるのが関の山だっか。だからこそ此処はわし一名で行くっき。わし一名であの子に点火するっか。其れが……わしが果たすべき清算じゃった!』

 午後二時零分零秒。
 キリモンとバレイズは裏島を包む恐るべき光の雲を確認する!
「此れが……コケッ区博士が生んだコケッ区式電撃望遠弾第一号の威力!」
「何て衝撃波だー!」余りにも強大な力は三隻の蒸気船を揺らして一部海に落っこちる寸前まで追い詰められる程。「俺達の希望は……時としてあのような忌々しいモノへと変貌するというのかー!」
「コケッ区博士は……いや、コケッ区博士は今でも生き続ける!」
「あ、当たり前だー。先生は日の出の時間帯に言ったじゃないかー。若しも死んでしまったら……あれこそ真実ではない言葉じゃないかー!」
「だろうな。私達は時として……いや」敢えて自らが頭脳労働者である事を強調するバレイズ。「私は時として行き過ぎた頭脳はやがて身に余る物を生み出す事も知らなくてはいけないのだと気が付いた!」
「先生は其れを示す前に全ての生命に自らの能力の証明を始めたー。高過ぎる能力は時として横に並ぶ生命が居ない状態を生み出すー。天同家ならまだしも俺達一般生命にとっては孤独でしかないー」
「ああ、そうだ。私はこうも考える」バレイズは交流について一説を語る。「誰かと誰かが出合い、語り、結ばれる古くからの行いは時として自らの能力を見つめ、他者を理解し合うきっかけを生み出す。自らが他者と比較して井の中の蛙族である事を自覚する為に」
「良くわからない事を口にするなー」
「だが、事実だろう。私だって横に誰かが居ないと孤独を感じる。いや、正確には自分の能力は若しかすると此処より外では下から数えた方が早いのではないかって安心出来ない思いが何時もこびりついて困る!」
「話が長い上に区切らないと何言ってるのかわからないー」
「済まないな。私も如何やら博士同様に他者との会話に慣れていないのかも知れない。いや、違うな!」此処でバレイズは満面の笑みを浮かべてこう感謝の意を表する。「有難う、キリモン君。お陰で自らがまだ井の中に閉じ込められた蛙族だって気付く事が出来た!」
「恐いなあ、いきなり笑顔で迫ったらー!」バレイズの笑顔に圧倒され、キリモンは話を戻す。「兎に角だー。コケッ区先生は横に並んでくれる生命を求めていたってのも事実だし、寧ろ本当は横に並ぶものが居ない事を証明したかったのかも知れないー!」
「だろうな。誰だって己は優秀だったのに突然、上には上が居る或は横に並んでくるモノが出現して恐がるのだな」
「そうゆう意味で俺と先生が互いに仲が上手く行かないように見えて上手く進展していたのはきっと--」
 其れ以上は蛇足に成る為、最後はキリモンの心の中と禾野コケッ区が遺した最後の手帳を紹介して緞帳を下ろそう。
(誰だって上に誰かが居る事を恐れるー。何故ならそいつは自分よりも先を行き、自分に何かを言いつけて迷い惑うからであるー。
 だが、下に誰かが居る事も恐れるー。何故なら下の者達は簡単な事も出来ないのかって己の中でそう見えてしまうからであるー。そうして下の者に無理難題を言って余計に下へと追いやってしまうー。成長を促す筈が成長させまいと妨げるようにー。
 其れから並び称される者も恐れる。並んでいると常に余裕が持てずに先を行こうと上を行こうと自らの能力を弁えずに突っ走るー。競い合う仲間だと思えばそうだけど、逆に少し油を断っていると直ぐに先を越す存在だと思うと此れ程恐れる者は居ないー。ひょっとすると己自身が見えなくなる可能性だって有り得るー。其れ位に並ぶ者達は恐ろしく思えるー。
 此れは良くある世の常ー。俺達は此れを自覚しながら生き続ける。上からも言われ、下には強く圧力を掛け、横には熱が出てしまう程にー。そうして辿り着く先……其処には希望何てないー。
 其れに気付いたある少し優秀な生命は一計を案じるー。だが、その一計を図る中で自らの罪に気付き始める。そして命を懸けて生産を果たしてゆくー。其の生命は其処で初めて自らも又、凡庸である事に気付いたー。そうだ……誰も尖っちゃいないー。尖っているように見えて実は何も知らないー。だからこそ其れに気付く為に他者との交流を欲するー。自ら凡庸である事に気付く為にー!
 其れでも、俺は彼の死を認めないー。彼は俺の中では偉大で越えられない壁として人生の終わりから想念の海に自我を取り込まれようとも刻み込まれてゆくー。誰が何と言おうと俺は主張し続ける……禾野コケッ区は今もまだ生き続ける--あの白き炎の中でずっと!

『--この石板が見付かったという事は既にわしは想念の海に旅立った後という訳だ。
まあ仕方のない話だ。わしも又、一生命体じゃ。如何やっても永遠には生き続けられ
ない。誰かの記憶に刻み込まれない限り、永遠に生き続けるなんて夢のまた夢という訳
だ。
 さて、あの子が。つまり君達が見たであろうコケッ区式電撃望遠弾第一号の事だ。
あれが当初のわしの計画通りに同胞達に向けられたならば真古天神武も流石に静観は
していられずにより一層軍備への増強に舵を切るだろう。其れがわしの狙いだ。わしは
前にも紹介した通り、全ての生命には希望があると主張しただろう。其れを実現する為に
君達全生命体には希望に成って貰わないといけない。其れが悠久の時を経て目覚めて
からでは遅い。時既に銀河連合は水の惑星中の生命を喰らって悠久を約束された生命
の命脈は断たれたも同然だ。そう成らない為にわしは一計を案じた。
 だが、若しも計画を大きく外して当初とは異なる結末を迎えたとしたならばわしは
わし自身が思っている程に優秀じゃない事を知ってしまった後だろう。其れも又、結末
として受け入れよう。何故ならわしは心の底で恐れているのかも知れない。誰かがわしを
超えてわし以上の事を成し遂げようとするのを。わしは自らの能力を過信する余り、他者
との交流を恐れていたのかも知れない。何故ならわしは自らの能力がもう少し凡庸で
あったならここまで苦悩する事もなかったと今でも思うのだから。才能とは時として孤独
にする。いや、才能に責任を求めるのは極めて身勝手だな。才能とはあくまで跳び箱で
しかない。其れも又、武器という名の概念だ。武器自身が誰かを傷付けるなんて有り
得ない。傷付けるのは何時も振舞う物と決まる。才能も又、武器なのだ。わしはその
用途が成っていない事に此れを記すまで気付かないだけだ。だからこそ計画を大きく
外すという事は即ち、わし自身が自ら凡庸である事に気付けたという訳じゃ。
 石板で何かを記すのは此の歳になって大変である事に気付いたな。抑々一度彫ったら
二度と書き直しがまま成らないからな。ひょっとすると此れが海洋種族が未だに水の惑星
の頂点に立てない原因かも知れない。だとすれば頂点に立つのは優れた種族や生命体
ではないかも知れない。頂点に立つ生命は決まってその惑星の立地条件に合った適性
が必要なのかも知れない。だとすれば人族が未だに水の惑星で頂点に立てるのは訛りが
原因ではない。
 だが、そろそろ限界だ。では全生命体が希望に目覚める其の時迄わしは歴史の舞台
から姿を消そう。何、無理して希望を抱く必要はない。希望とは自然と己に流れ着くモノ
だ。
                              著者 禾野コケッ区』

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十三年五月四十二日午後三時三十分零秒。

 第九十七話 恐るべき発明 完

 第九十八話 蒼穹の紅蓮 過去に思いを馳せて に続く……

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR