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一兆年の夜 第九十七話 恐るべき発明(五)

 午後四時十八分十六秒。
 場所は裏島。崖を上る生命が一名。
(同じ軍者としてあいつらを恥じているー。先生を助けようとせずに電撃望遠弾を恐れるなんてー。だったら俺自らが先生を助けてやるー!)
 キリン族でありながらも崖上りが上手なキリモン。彼は真古天神武で度々開催される攀じ登り大会で三大会連続の三位以上を受賞するなど、軍に所属するキリン族の軍者の中で最も突出した攀じ登りの名者である。そんな彼にとって裏島にある崖は御足の者である。
(まだ攀じ登りの技術はさび付いていないー。お陰でやって来て凡そ三の分くらいで登り切る事に成功したー。だが、本番は此処からだなー。早速、出迎えが来たようだー)
 迎え入れる銀河連合は三体。内容はサーバル型、バンディクート型、そして袋鼠型。どれも迎え撃つには地形適応の面で宜しくない上に巨体で何よりも間合いが長くて小回りの利く首を持つキリン族の生命であるキリモン相手に太刀打ち出来るとは思えない奴等である。
 当然、キリモンも苦戦する事なく一の分も掛けずに三体に大量出血させる事に成功した。
(全く、攀じ登りには大量の筋力を要する事くらい知ってるだろうー。更には俺自身がそんな三体を相手に苦戦する道理がない。地中ならいざ知らず、バンディクートも袋鼠も地上に出て戦うような種類じゃないだろうがー。全く何を考えて奴等を俺の前に迎えさせたのかー!)
 確かに太刀打ち出来る存在ではない。唯一機動力の面でも勝るサーバル型でもキリン族の生命を打ち倒すには向かない。だが、キリモンにそれらを差し出したのは即ち……「うわあああ、返り血が突然動き出したああー!」何と三体の中に隠れ潜んでいた赤血球型、白血球型、そして色素蛋白質型が一斉にキリモンの毛穴に向かって進行し始めた--流石のキリモンも足も首も届かない極小の相手には御足上げだ!
 だと思ったよおおおう……それい--其処へ反対側からやって来たバレイズが桶に入った水をキリモンに振りかけた!
「な、何をする……ってあれー?」其の水を浴びた事で全身に付着する返り血は自然に足元へと転がり落ちた。「って此れ……油じゃないかー!」
「フウ、流石の水分種類も油を浴びれば剥がれ落ちるか」
「いや、待てよー。水と油の件は俺も知ってる。なのに何故返り血はみるみる剥がれ落ちるのだー?」
「其れは返り血を動かすのが銀河連合なら話は別だ。あれも一応生き物と仮定すれば必ず脂肪分を燃やした際に油を発生させる。ならば油を掛ければ自然と油よりも軽い奴等は剥がれ落ちて行く……すると如何だ。成功したぞ!」
「何が成功だ……俺が油まみれじゃねえか、畜生ー」
 キリモンは暫くの間、掛かった油に苦戦する。一方のバレイズは尋ねられても居ないのに語り始めた。彼に依るとキリモンが独断で島に向かう事を既に承知していた。少し遅かった為に見張りの軍者に見つかり、暫く遅れる事と成った。そんな時に連行される中で油を使って作業する船員を見付ける。其れを見てバレイズは閃く。若しも奴等が細かい種類を使って相手にわざと倒させる事があるならキリモンは間違いなく死んでしまう。其れを防ぐ為に油を持参して行くしかない。其れからバレイズは二回目の密航を成功させ、間一髪でキリモンを救った。
「其れは有難うー、だが……少し言いたいー」
「何か?」
「俺が尋ねるまで勝手に喋るなー。お陰で涙流して感謝出来なくなっただろうがー!」
 全く此れだから軍者ってのは見える範囲でしか物が言えないんだよ--と理屈にも成らない言葉を口にするバレイズ。
(まあ、無理して涙流す必要はないけどー。感謝するのは正しいが、其れが行き過ぎると却って相手の為に成らないー。感謝を当たり前のように行うのは大事だが、感謝は一回だけで十分な時は其れ以上の使用を心掛けないー。謝罪も同様にー。
 と関係ない話をしている場合じゃないー。今は先生の救出に向かわねば成らないー!)
 キリモンが密航した理由はコケッ区を救出する為。一方のバレイズは別の理由がある。だが、お喋りなバレイズは尋ねられる前に喋り始める。
「私の目的は--」
「だから其の時に聞くから今は静かにしてろー。銀河連合に察知されるだろうがー!」
 二名は徐々にではあるが、コケッ区が閉じ込められる隠れ拠点に近付きつつある。

 午後十時四十三分七十七秒。
 場所は隠れ拠点南口前。キリモンとバレイズは其処で誰も居なくなる時期を待つ。
(幾ら長い首が様子を見るのに適していても結局は隠密行動に向かないキリン族の図体だー。何時気付かれるかわからないなー)
「ああ、其れと私が密航した目的は--」
「だから静かにしろー。気が向いたら俺が尋ねるからさー」
 其れは一の週より後か--少々ひねくれ者のバレイズはそう尋ねる。
「大袈裟な奴だー。何で乗船させたんだー」
 そのやり取りから十五の分より後に南口の警備は完全に足薄と成る。此処しかないと考える二名は素早く中へと踏み込んでゆく……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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