FC2ブログ

一兆年の夜 第九十七話 恐るべき発明(三)

 五月四十日午後十一時二十三分十八秒。
 場所は真古天神武外伝雄略海。其処はかつて秘伝雄略島を始めとした海の種族を惑わせる海として名を馳せる。
 其処にある名も無き三つの島の内の一つに真古天神武の蒸気船三隻がやって来た。其の内の中央の船にキリモンは長い首を使って何かを覗こうとする。
(神に描かれたのは三つの無名の島だー。然もどれも特徴的な形をしてあったー。先ずは北西に位置する島はある学者はただもの島と呼んで実際に地理の調査に当たった研究班が本当に山から崖に掛けてまでただものの形をしていたー。生態なのか健康法なのかわからない謎の概念であるただものを模した島があったなんてー。
 ただもの島と通称される島の反対側に位置するやや東よりも島は通称おかもと島と呼ばれ、此れも同様の調査班で綿密な調査をしたからわかるのだー。ただものとおかもと……一体何なんだろうー? 銀河の中にも混じっていたりと色々と謎が多過ぎるー。
 そして俺達がやって来たのはただもの島とおかもと島の間に挟まる無名の島ー。此方は何の通称もなく、本当に名が付けられていないんだー。其の為に先生が住み着いたあの島と並んで銀河連合の隠れ拠点の可能性が強かったー。そして実際に俺は此の島に銀河連合の存在を確認したー。何か鳩型や烏型のような奴等が俺達が来たのに目を凝らして何体かは位置を探られないように遠回りしながら拠点に戻って行くのを確認するー。
 其れにしても先生は何処に閉じ込められたのだー?)
 キリモンは後に船員から渡されたキリン族用の望遠鏡で確認もする。だが、西側から島を覗くのか……大した結果を得られない。其処でキリモンは船長にお願いして反対側へ進む事を打診するも……「無理だやわ」熊猫族の船長はある理由で断った--其れが余計な菅原炭を使うと自力での外伝雄略海を脱出出来なくなる事。
「事態は一刻を争うってのに……何故島に乗り込もうとしないんだー!」
 其れを船長に尋ねるキリモン。其れに答えたのがあろう事か船長ではない。
「断ったのは私だよ、キリモン・ギリーズ君」齢二十三にして五の月と八日目に成る仁徳人族の青年が答える。「もしも奴等がコケッ区式電撃望遠弾まで運んでいるとしたら乗り込めば奴等は島ごと私達を吹っ飛ばすかも知れないぞ!」
「その上から目線の物言いは……バレイズ・ボルティーニだなー!」
「やあ、キリモン君」
「そりゃあ如何ゆう事だ、バレイズー!」
「冷静に分析した結果さ、キリモン君。コケッ区式電撃望遠弾がどのような製法でどれだけの力を齎すのかをお前は知らんのか?」
「たかが望遠弾一つで島が吹き飛ぶなんて火災事故だって無理だぞー!」
「普通の感覚ならな。だが、私は子供の頃に養父に連れられて望遠弾倶楽部が主催する衛星旅行に向かう望遠弾試作六号が飛んでゆく時の迫力と言ったら……今思えばあれだけの大きな力を発するんだぞ。現場はどのようにして衝撃波を抑えたのだろうかなあってな」
「其れとどう関係するのだよー!」
「弟子なのに知らんのか、キリモン君!」
「俺は先生の看護員であって正式な弟子ではないのだー!」
「そうか……だからかあ、真古天神武に蒸気船三隻も出すだけの事が出来るのだな」
「其れは其れだー。兎に角、何が言いたい!」
「コケッ区博士は島を吹き飛ばすだけの技術を既に持っている。実際に動く島を一つ沈めているという噂を聞いてな」
「え、何だってー!」
 バレイズは更に語る。禾野コケッ区が用いる技術の原点を。其れは電気と呼ばれる万能なる動力を使ってコケッ区式電撃望遠弾を開発した。コケッ区がどのようにして其れが島を吹っ飛ばす程の力を有するのかを知ったかをバレイズは詳しく知らない。けれどもバレイズの推測ではコケッ区はかつて動く島に暮らす一般生命に連行された過去を持つ。其処で何かの経緯があって動く島を沈めた物だと予想される。此の経験を踏まえてコケッ区の一般生命への距離感を更に強め、何と銀河連合が暮らしていると疑われるあの島に住み込むように成った。尚、あの島はバレイズ曰く表島と呼ばれる。何でもキリモンが望遠鏡で覗く島とは瓜二つな事からバレイズが先程名付けた模様。
「じゃあ俺達が船の上で覗く島は裏島と呼ぶのかー?」
「だな。まあ島の命名権よりも先にコケッ区博士が開発した物がどのような奴なのかの説明がまだ終わってない」
「まだ続くのかー」
 バレイズに依るとコケッ区はセミジャック・ミーントが唱える従来の物理学では説明のつかない箇所が幾つかある事も指摘。更には質量保存に法則がある理論に当たると必ずしも一致しない事も既に指摘していた。だが、ミーントの物理学を信奉する学者研究者達はコケッ区の説を一蹴。此れがコケッ区が一般生命と距離を取るように成る一因でもある。従来の物理学を一つも疑わずに新しい説にだって光を当てて然るべきなのに踏み込む勇気も出さずに常に信奉する科学に寄り添う……此れでは全生命体が銀河連合に立ち向かう気力が薄れて行くではないか、そう思っても仕方がない。常に頭が少し突出した生命は何時も世の中の閉塞感を打破しようと荒野に踏み込む。だが、閉塞感を打破した後は自らが閉塞感を作り出す。何時までも確信を持つ気高き精神を持つ生命は其の閉塞感を作り出す環境に罪を感じて世を捨てる者として一生を終える事を決意する。正にコケッ区とはそうゆう生命であった。
「いや、先生の事は良いー。先生が開発したコケッ区式電撃望遠弾が本当に島を吹き飛ばすだけの力を発揮するのかってのを聞きたいのだよー!」
「ああ、済まん済まん。ついついバルケミンから続く理屈だ俺の理論を展開してしまったな」
 話を戻すバレイズ。コケッ区は既に質量が力に変換出来る事を突き止めた。其れだけでなく、エーテルが宇宙を満たさない事も既に知っていた。バレイズは其れについてはまだ知らない。だが、バレイズは知っているような事を仄めかす。其れだけじゃない。コケッ区は光が最速で光よりも速い物が存在出来る筈がない事も既に証明していた。仮に出来ても其れは時間さえも超越して大変な事態を招く事も。そして自分達物質の塊は宇宙の中で速度を上げ続ける事が出来ても質量ある故にあ光速が限界である事も知っていた。
 また話を戻す。つまり如何ゆう事か? コケッ区は質量を力に変換出来るとある公式を基にしてコケッ区式電撃望遠弾を開発した。其れを動く島に向けて使い、其の威力を思い知った。其の結果、彼は全生命体の希望の為にわざと銀河連合が住み着くと思われる表島に住み着いて彼等に連行された。全ては完成品のコケッ区式電撃望遠弾を用いて一般生命が本当に一般生命を死なす事が出来るか? 仮に使われた場合は真古天神武内で激震が走る。自分達一般生命が作り上げた望遠弾が島だけでなく、救助しに来た軍者達を葬った事を。其れだけの力をコケッ区式電撃望遠弾は持ち得る、と!
「そんなの推測だろー!」
「其れがなあ……推測じゃないんだよなあ、私からすればな」

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR