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一兆年の夜 第九十六話 スクリュースタンダードアイランド(末)

『--結論から行くとあの銀河連合は我々では倒せない。何故ならあの銀河連合は
指揮官型の其れとは比較に成らない程に悍ましい。其れをどうやって確認したか? 島に
来て二の日より後だったな。わしらは其れを此の目で見た。最初は歳のせいで目が徐々に
見えなくなったせいでそう映ったのかと思った。だが、若い感性を持つサヨ道君が其れを
見て悲鳴を上げた。キッ次君にカエルヒコは口を閉ざしたまま震えておったな。あれは
規格外にも程がある位に悍ましい姿と見るからにあれに勝てるとは思えないと視覚的に
思い知らさせる代物だった。成程、数値の上の話で相手を納得させるよりも実際に
此の目で見る方が何百倍も何万倍も理解が早まる、とはな。此れが誰かの諺として残る
論より証拠、百聞は一見に如かず、かあ。わしは動力源である銀河連合を見た感想は
其れだ。
 だが、何時までも恐怖で立ち竦む訳にはゆかない。わしはあれに戦意を削がれたが、
だからって此れから湧き出る戦意の元までは削がれてはいなかった。其れは
カエルヒコ君、キッ次君、サヨ道君だって同様だった。わし以外の三名は死と隣り合わせ
の体験をした事が背骨を支えているのだろう。わしの場合は研究家としての本能が
削がれた分だけ湧き出る戦意が流れ込んだだけだ。其れからわしは四の週掛けて上下の
者達に対して希望を薄めつつも余剰部品を組み上げて完成に至った。此れが後のわしの
行動を決定付かせるコケッ区雷撃望遠弾の試作品だ。焼き付けの刃を組み合わせた
だけでしかない。だがな、此処には長い年月も掛けて更には時を超えて此の時代に
飛ばされた一般生命達の思いが込められている。銀河連合が全存在を懸けても理解
出来ない希望は一握りの突出した存在ではなく、誰にでも可能性のある一般生命が放つ
モノ
であるという事を思い知らせる為に。
 まあ段落を変えてこれを使用する前について吐露しよう。他の三名は議論を
戦わせる者達も居れば根拠のない理由を胸に委ねるしかないと主張する者も居た。わしの
場合は今にして思えばもっと上手く作れたのではないかって思う程にこいつに目を
向けられない。だが、其れは今のわしであって当時のわしは違った。わしは安心し
切れない思いが支配していた。若しも上手く行かなかったら如何すれば良いか、其れ
ばかりが支配的だった。そんなわしの背中を押したのが三名と上下より駆け付ける島に
住む生命達。まさか此処に来て上下の隔てを乗り越えて昔のように手足手羽先を取り合う
姿を拝めようとは当事者達は思わなかっただろう。彼らのお陰でわしの安心し切れない
思いは吹っ飛んだ。やはり希望は彼等にこそあって然るべきだと改めて思ったな。此れが
全生命体の希望なのだろう、私からすれば!
 そうして私は実行。そしてスクリュースタンダードアイランドは其の銀河連合を中心に
十六方向に亀裂を齎しながら崩れ落ち始める。私達四名は急いで脱出する。だが、脱出
しない生命達が居た。其れがスクリュースタンダードアイランドに住む住者達。彼等は今
の時代を生きるよりも昔の時代が籠った此の島と共に運命を共にする覚悟で居た。こんな
悲しい出来事を私は見なければいけなかったのか。私は生き様だの死に様だのを此れ
以降、どれだけ好まないのかを知ったな。わしら今に生まれ今に生きる四名は用意された
小舟に乗っての脱出を試みる。
 話だろう。無事脱出したわしら四名。沈みゆくスクリュースタンダードアイランド
最初こそ動く島やらわしを連行した生命やら其の島の実態に議論ばかりで何もしない
上の者達や働くだけで建設的な事一つも思い付かない下の者達に苛立ちばかり募ったな。
だが、終わってみると悲しいかな。此れが全生命が持つ誰かと別れると悲しいと思う心
なのだろう。此れがわしが著作を綴った大きな理由だ。悲しいと思う心が消える前に
残しておきたい。仮に書物が何かのきっかけで全て消えたとしても誰かが其れを目に焼き
付けて伝える事が出来たなら筆者は冥利に尽きる思いだ。
 そして最後に此れだけは伝えねば成らない。わしはコケッ区式雷撃望遠弾を製造して
彼等の思いに応える為に、全生命体の希望としての一般生命の目覚めを早める為に事を
起こす旨をここに発表。未だに仙者である事が全生命体の希望だと信じて已まない識者
の者達にも新仙者だの革仙者だのを信じる者達にも思い知らせないといけない。少し
尖っただけの一般生命である私がやれる事を如何して一般生命が出来ない。希望とは
誰かに縋る事でも自ら生命の枠を超える事でもない。枠を超えなくても良いんだ。誰かに
縋らなくて良いんだ。自らの力で生み出すのが希望だ。自らの力で生み出さずして何が
希望だ。私はこう宣言する。
 だからこそ私は起つのです!
                              著者 禾野コケッ区』

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十三年五月三十一日午後十時五十八分四十一秒。

 第九十六話 スクリュースタンダードアイランド 完

 第九十七話 恐るべき発明 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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