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一兆年の夜 第九十五話 十五少年少女漂流日誌(六)

 四月六十六日午後十時四分七秒。
 場所はチュンナ島北端。其処は先者が眠る洞窟。
 マシリ斗、カカロ徒、そしてガン和がやって来る。既に先客が其処に居た。
「お前まで居たのーか!」
「居てちゅないか、マシリ斗!」
「そっりゃあそうだろう。子っ分達は如何したんだよ!」
「みんな僕よりもサナ道の方に顔を向けちゅしまった。今じゃあ最も信じ頼りに成ちゅフクマルがサヨ道と意気投合してしまった!」
「あいつは一の月どころか次ーの、更にその次……とどんどん支持を集めてしまっていーる。結果は連続当選ーだ!」左翼で机を叩くマシリ斗。「何でだよ……何であいつは其処まで信頼されるのだーよ!」
「僕だって聞きたちゅ。僕みたいに頭が良い訳でも巧い案が出せちゅ訳でもない。マシリ斗みたいにいざといちゅ時は強引に進められちゅ訳じゃない。ウシ村みたいに仕事上手って訳じゃない……なのに何故あいつは支持を集めちゅ?」
「者っ望ですかね……イっデッ!」
「余計な事を言うーな、カカロー徒!」
「然もあいつは僕が良い案を出しても其れを直ぐに取り入れちゅに先ずは議論の場に持ち込んで来ちゅ。話し合いに時間を割く事で良い事があると言いたいのか!」
「だーが、あの案は……流石に木材の切り倒し過ぎだーぞ。流石に切り倒し過ぎて果物が実る木を減らすのはとてもなあ……木だって年老いた物と発展途上の--」
 わかってちゅよ、そんな事くらいは--と苛立ちを隠し切れないチュンレイ。
 其れから話はサヨ道一点に集中する。四名は此れ以上サヨ道指導者の下で働くのに余り感心しなかった。其処で新たに自分達だけで行動する事を明くる日に宣言すると決定。其の事について議論し合った……というのもカカロ徒とガン和は殆ど意見を出さずに重要な事を全てマシリ斗とチュンレイが言い合う。
 そうして運命の明くる日……

 四月六十七日午前九時十五分二秒。
 場所はチュンナ島。中央広場。
(何だって。四名共本気なのです!)
 サヨ道にとって今まで反対意見があろうとも出来る限りは話し合いを設けて解決して来ただけに五名の宣言には驚きを禁じ得ない!
「考え直してくれ、考え直してくれでちゅ!」
「かんがえなおすって、ところでかんがえなおすってなに?」
「わからない事多過ぎっるぞ、クンク良」
「本気なのかう?」
「あーあ、本気ーだ。もう誰が脱便野郎の下で働くかってーの!」
「まあああだ言ってるのおおおおか、そおおおおうゆう所が幾ら立候補しても当選しないって気付けってええええの!」
「まあまあ、マシリトのおにいさんにとってはそれがはなにツゥクのでしょう」
「四名だけで独立して何が出来るっよぶ。きっと根が諦めて元のさやに納まっに行くってぶ」
「其処まで本気なのだ那、四名端」
「確かに新天神武から続く最高官選挙は本当は二選までだけど、今ではサヨ道君は四選も果たしちゃったのです。満足しない事があって当然だと思う気持ちもわからなくありません」
「ああ、そちゅだ。四選だなんて過去の新天神武の歴史上では類例がない。そもそも誰も三選を禁じる案を出さなかったのがいけなちゅ」
「でもお兄ちゃん以外に誰が成る? 他は頼れる指導者が居ないのです!」
「たった一名に集中するのはいけなっいのはわかるけど。でも其れ以外に候補は居っないんだよ、チュンレイ!」
「そうそう、俺達たったの十五名です。新天神武や真古天神武みたいに時間を置けば頭角を現す候補者が出るには余りにも数が少な過ぎるのです」
「だったら俺こそが指導者に相応しいだろうーが!」
「其れだけっ御免でブ!」
「ぜったいにことわりマアス」
「君はもう少し自分の鏡を見るべきだう」
「言わせておけば……クーウ!」
「そうゆう訳です、四名共。僕も確かに連続当選は問題があると知ってます。ですが、民意も僕自身が幾ら考えた所でも他に居ない場合はそうするしかありませんのです。其れでも一番上が全てを決めるというのは強引極まります。其の為に君達が必要なのです!」
「やだーね。俺達はお前のそうゆう所が腹立たしいからこそ此処に独立を宣言したんーだ。もう此れからは俺達五名で生きていくーさ。なあーに、食糧の件は問題なーい。おーい、ガン和……出ーせ!」
「者使い荒イナア、マシリ斗サンハ」
 ガン和が取り出すのは取り分の範囲である。流石に勝手に決めるのは民主主義に反すると考えてマシリ斗がサヨ道達にも其の件を伝えに紙を記して申し出た。
(取り分……流石はチュンレイです。ちゃんと細かい部分にまで気を遣っています)
「わかりました。其れでは僕達だけで其れが本当に正しいのかを議論しましょう。
 こうしてサヨ道とウシ村は独立を決めた四名の内のマシリ斗とチュンレイの二名を連れて議論を始める。其れから徐々に妥協案及び修正案を提示していき、最終的な取り分を決定付ける--結局はチュンレイが決めた範囲と左程変わらない最終決定案だった。
「あれだけ話し合っても結局は振出しの時に戻るのです」
「其れ模又、民主主義乃良くない部分さ」
「何か一杯取られているようで満足しないのです」
「僕も思っぶ。何かっあぶ」
「でもこれもしかたないとおもうゾォイ」
「満んんんん足出来なければ満足出来る道を目指して独立かあ……歴史を余り知らない私が語ってもねえええええ」
「結っ局申し出た時と左程変わって……イッデッ、おっ前かよ!」
「そうゆう所がマシリ斗さんに怒ラレルンダロウガ、カカロ徒!」
「ところでさっきと、ところでさっきとなにかちがいあるの?」
「俺に聞くなって、クンク良」
「うう、兄貴ちゅ」
「じゃあ決まりましたので此れからは--」
 待ってでちゅ--右前足で挙足するのはフクマル。
「フクマル、お前は何を言いたい?」
「兄貴一名だけは辛いちゅ。俺も行かせてくれちゅ!」
「フクマル……お前は!」
「如何します、チュンレイ?」
「……好きにしちゅ」
「やったあちゅ!」
「フクマル、なんでフクマルが?」
「唯一血よりも濃い弟分だっからだよ、気付けよ其のくっらいは!」
「フクマルも行っのぶ?」
「だってあのマシリ斗達だぞ、直ぐに孤立してしまうのが目に見えてしまちゅ。だったら少しでも唯一の仲間として俺が行くんでちゅ!」
 ウウウ、有難う……フクマル--誰にも見せないように背を向けて涙を流すチュンレイ。
「勘当の場面なのになんか俺は納得いかんーぞ!」
「諦っめましょう、マッシリ斗さん。マッシリ斗さんはそうゆう風に見られ……イデッ!」
「だから人事多インダヨ、カカロ徒!」
「じゃあ向こうでも元気でお願いします!」
「其の訛りのせいで他に言うべき事も言えないでちゅね」
「もう何も言うーな、振り返るーな。俺達はもう独立したんーだ。此れからは何者の助けも要らないーぞ!」
 こうしてマシリ斗、チュンレイ、カカロ徒、ガン和、そしてフクロンは十名の前から去ってゆく。
「結局行かせて良かったのです、サヨ道君?」
「俺にとっては其れが大変いい選択に成るとは思えないう」
「決定事項を今更言うのは民主主義の方針に噛み付くような物です、二名共」
 去る者は追わず来る者は歓待する……其れがサヨ道達の決断である。
(こうやって生命の歴史が築かれていったんです。特に僕達みたいな右も左もわからない生命には刺激の強過ぎる経験の数々です。其れでも僕達は進まなくちゃいけません。
 其れが希望を背負う物の宿命です!)

 四月九十六日午後十一時二分七秒。
 場所はチュンナ島北端。尿を出す為に起きるガン和。
「直ぐに済マセナイトナア」
 ガン和は枯れも含めて五名が暮らす洞窟の真上よりやや東に向かった場所で放尿する。するとガン和は何かを見付ける--其れは何か剥き出した状態で巨大な蒸気船のような何かに乗って近付いてゆくように感じられる!
「アワワワ、ありゃあ一体何ダッテエナア!」
 尿を撒き散らしながらガン和は洞窟に駆け込んでゆく!

 九十七日午前五時三十二分四秒。
 場所は南端。やや東側の浜辺。
 ユミ代とバファルマ、そしてツチ姫流の雌の子三名は雄七名には秘密の会話をする。言わば雌会と呼ばれる雄禁制の会。実態は最新料理の披露と今の月流行りの言葉とお飾りについて良い歳でもないのに三名は楽しく仲良く会話するのだった。
 そんな三名の前に何かが浜辺に流れ着く。
「何いいいいかしいいいいいら?」
「あ、見た感じは鰐族っいぶ」
「直うううううぐに容態の確認に入らないと……という訳でユミ代はギガンマルドを連れて来いいいいて!」
「わかりました、バファルマさん!」
 謎の蒸気船の出現と齢三十一にして九の月と二日目に成る鰐族の熟女の登場こそ、十五名の少年少女達の物語を終止符へと向かわせるとは此の時……まだ誰も気付く術はない!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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