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一兆年の夜 第九十五話 十五少年少女漂流日誌(四)

 三月四十八日午前十一時二十四分。
 場所はチュンナ島。正式名称があるのかは定かではないが、新たに少年少女の指導者と成ったチュンレイがそう命名した以上はチュンレイを含めて十五名はそう呼ぶ。
 其処でチュンレイに指導される十四名は最初の一の週こそ上手く事を運んでゆく。特に先者の存在を確認出来ただけでも一歩進む……サヨ道はそう考える。
(僕とユミ代ちゃんはやや南側の浜辺に流れ着いた。でもサヨ次達は西側付近に流れ着いた。僕の見解からすると船はチュンレイ島の西側からやや南西側を航行していた。其れからあの夜の銀河連合に依る襲来と海の神様のお怒りで僕達は此処まで流れ着いた。
 其れから僕達は此の島のほぼ中央にある森林にて自分の住処を作り上げる。共同寝床は完成したけど、まだまだ十分ではない。それぞれの個室、食糧庫、道具保管庫……と今ある材木を切り取って徐々に作り上げないといけない……けど材木を切り倒すには如何しても体の大きい種族が行わないといけないのです。僕みたいな小柄な種族は材木を加工する事が出来ても分割する事が出来ない。其れ故にそれぞれの特性を活かして行わないといけないのです。
 僕とした事が今までの事を振り返ってしまった。其れよりも先者は僕とユミ代ちゃんが流れ着いた方角の反対側にある崖の高い場所の洞窟で白骨死体と成って発見されました。父さんから聞かれた話に依ると既に土或は風の栄養物と成る段階に入ったばかりだった。風に吹かれて骨は少しずつ削り取られ、季節毎の気温差に依って生じる溶解で少しずつ土に栄養を与えて行く。後は満ち潮によって発生する波に依る大喰らいです。僕が発見し、後から駆け付けたマシリ斗達の議論の結果は此の白骨死体は死後一の年は経過しているとわかりました。そんな彼なのか彼女なのか判明しませんが、其の方の残した紙の記録帳に依ると次のような事が記されておりました)
『--俺はもう直ぐ死ぬ。其れでも俺が生きて来た物だけは遺しておきたい。其の為に俺
は記す。此の島は如何やっても脱出は可能ではない。
 此の島にある物を使って何度も試みたのだからわかる。此の島の流れはどんな季節に
成ろうとも全く変化がない。夏の季節に北側から脱出を試みても何故か東側に戻って
来る。冬の季節に同様の方角から脱出を試みても何故か同じ方角である東側に戻る。
反対も試みた。夏に南側、冬に南側。其れに流れ着いたのは何故か東側。其処で俺は
夏の季節に敢えて西側から試みた。此れは上手くいくと感じて暫く一の週は食料に気を
遣いながら脱出を試みた。すると島と思われる物が見えた。一の週もの疲労は吹っ飛び、
大喜びで筏を漕いだ。すると如何だ? 其の島は一の週も前に脱出した島ではないか。
しかも何時も通り東側に流れ着くという。ちゃんと方位磁石を使って更には夜中の天体
観測を怠らなかった、にも拘らずだぞ。余りにも奇怪な現象に俺は疲れでおかしいの
ではないかと考えた。なので俺は別の季節でも西側からの脱出を試みた。だが、結果は
どれも一の週より後に島の東側に流れ着くばかりで成果を得られない。
 たまたまではない。此の後も観測に誤りはないかも踏まえて俺は復習も兼ねて試みた。
結果は同じ。どの季節だろうと北、東、南から脱出を試みても東側に流れ着くだけ。西側
に至っては一の週も掛けて筏を漕ぐも東側に戻るだけ。そう、俺が死ぬ二の年より前
くらいだったかな? とうとう諦めてここで一生を過ごそうと決意した。
 そうだ--』
 残念ながらこの先は年月に依る絶え間ない風化等で十五名には全く読めない状態と成った。紙に記録する事のどうしようもない問題の前では十五名は如何する事も出来ない。
「此の生命がそう言うんだから間違いないかも知れない? ねえ、お兄ちゃん?」
「間違いない。其の証拠にこの洞窟内部には既に時間が過ぎて食べられない黄三日月と椰子の実、後は其れを刈り取る為の道具一式や葉っぱなどで作る衣装が残ってある」
「でも食糧以外は使えるかも知れない」
「白骨死体を最初に見た時は何なのかわからなかったけど、この生命がどんな種族なのかわかりました」
「其れって一の日より前に結論付いた」
「まあそうです。此のカンガルー族の生命が如何ゆう理由でここに流れ着く事に成ったのかわかりません。ですが、ここで暮らす知恵は彼にしかわかりません。ですので僕達は彼の遺した物で何とかこの島を生き抜くしかありません!」
「でも一生暮らすのは良くないです。俺は家に帰りたいのです!」
「甘ったれるでありません」
「で、でも--」
「でもも其れでもでもありません。僕達は彼から託された希望を胸にこの島を必死に生き抜く以外の道しかないのです!」
「希望かあ……俺に取ったらお兄ちゃんが希望です」
「ああ、実は言わなければいけない事がありました」
「何なのです、お兄ちゃん?」
 僕は脱出艇前で思わず脱便しました--とサヨ次に告白するサヨ道。
「何だ、其れです。俺は気にしないです」
「お前は僕と一緒の時期が長いから言えます。でも他の生命……特にユミ代ちゃんに告白出来ないのです」
「やっぱり好きなんです」
 コラ、馬か鹿かな事を言いました--とサヨ道は真っ赤な顔でサヨ次を叱りつける。
「其れでも俺からすれば毎の朝尿に比べたら全然大した事ないです」
「尿を漏らすのと便を漏らすのとでは見栄えも聞こえも大きく異なります。なので僕は誰かの希望には成れません!」
 此れがサヨ道が立候補しない本当の理由。ところがあろう事かサヨ次は此の事を一の月に行われる指導者指名選挙の場で十三名に伝えてしまった!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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