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一兆年の夜 第九十五話 十五少年少女漂流日誌(三)

 三月十日午前七時一分十八秒。
 場所は不明。砂浜に流されたのだけはわかる。
 だが、サヨ道が其れに気付くには時間が掛かりそうだ。何故なら意識を取り戻したのは日差しを浴びる事や海水を浴びる事だけでは物足りないのだから。
(こ、此処は何処です? 此処は……どんな所です? 僕は、死んだの、です? お父さんやお母さん、御免為さい。早く死んだ僕を如何かお許し下さい。僕は両親の期待に応える事なく、死んでしまいました。其れだけじゃありません。僕は弟のサヨ次や雌友達のユミ代ちゃんにまで迷い惑わせました。こんなの幾ら幾ら償っても償い切れません。如何か僕を……あれ、さっきから感じます。生命が死ぬ時って……あれ、目が開きます)
 瞼を開けると其処にはユミ代が見つめる。彼女は何度もサヨ道をゆすったり声を掛けていた。
「起きて下さい、サヨ道君。起きて下さい、サヨ道君!」
「う、あ、あ……ユミ代、ちゃん?」
「気付きました。気付きました」
「此処って……父さんや母さんが何時も言ってる想念の海です?」
「違います。辛い辛い現実です」
「何だ……現実です。現実……そうだ!」飛び起きるサヨ道。「僕って……臭くなかった?」
「何を言います?」
「だ、だって……あ、何でもありません」
 恥かしくなったサヨ道は二の日より前に漏らしたあの件を黙る事にした。
「な、何です?」
「何でもありません。と、兎に角……今はここがどこなのか知らないといけません!」
「此処は……何処です?」
 其れは僕の台詞です--とサヨ道は突っ込みを入れる。
「御免為さい。私も目覚めたばかりで全然わからないのです」
「そうか……ってサヨ次は何処に居ます?」
「其れは--」
「目覚めましっかだぶ、ありがたやありがたっよぶ!」
「だ、誰です?」
「あ、自己紹介がまだだっぶ。ぼくはよわい十にして月は……忘れたけどエピクロ土豚族の日高ツチ姫流っすぶ」
「土豚族で……えっと、ひめ、りゅうとは何という字です?」
「ぼくもあんまりしらなっだよぶ。まだ齢十だっぶ」
「私と同じ雌の子です。確か脱出艇の前に居た子です」
「いや、はっきりじゃなっしぶ」
「御免為さいです、君。僕達はそうゆう訛りなのです。何でも決め付けるような訛りです」
「よくわからなっけどぶ、よくわったぶ」
「土豚族は変な部分を溜め飛ばしてから最後に『ぶ』を付ける訛りです」
「よくわったけどぶ、よくわからっいぶ」
 サヨ道とユミ代はツチ姫流に案内される形で砂浜を後した。

 午前七時九分八秒。
 場所は不明。確かなのはサヨ道達は其処で良く知る顔ぶれに抱き着かれた!
「お兄ちゃあああん!」
「わわ、サヨ次イイ!」
「ユミ代……無事照何より妥!」
「少し力が入り過ぎます、ギガンマルド」
「よおーし、全員無事なのがわかっーた!」
「おい、其処の鳩。何勝手に指揮を執るっだう!」
「そりゃっあそうだっての。何っしろ此の方は将来は雑誌会社の編集長に成られるお方だぞ!」
「其処まで褒められるのかはワカラナイガナ」
 五月蠅いーぞ、二名ー共--マシリ斗はカカロ徒とガン和を注意する。
「其れなら俺だって同じだろう、鳩の小僧よう」
「そうううううだそうでええええす!」
「ウシ村にいさんはぼくたちのめんどうをみてくれたんダアイ!」
「其れなら僕みたいな上質な品質を保てる鼠が一番でちゅ!」
「其れはぼくもチュンレイにさんせいっすぶ」
「チュンレイの兄貴は冷静で高貴でしかも……頼れるでちゅ!」
「確かにチュンレイは、確かに……ところで其れ何?」
「黙ってなっよ、クンク良っさ」
「此の明らかに開発中の木の家の前で何を言い争います?」
「私も其れ気に成ります」
「あ、お兄ちゃんに説明しなくちゃです」
「実端です祢。こんな事牙ありまして--」
 サヨ次とギガンマルドは今までの経緯を語る。実はサヨ次は一の日より前にマシリ斗、カカロ徒、チュンレイ、クンク良、そしてウシ村と共に一足先にこの島に流れ着く。六名は最初こそ島に流れ着いた事に混乱していた。だが、組の長を務めるマシリと、チュンレイ、ウシ村は徐々にやるべき事を議論し始める。遂には此の後にやって来るギガンマルド、ガン和、フクマル、ウサリップ、ツチ姫流、バファルマ、クマ尊宅の時には既に一の人明くる日に何をするかで既に決めた後だった。そう、サヨ道やユミ代がやって来る頃には既に十三名は一致団結していた。其の貢献は誰にあるかで現在議論が始まる。
「俺に決まってーる!」最初は何事も引っ張りたいというマシリ斗。「俺の指導力あっての賜物であーる!」
「僕が居なけちゅば君みたいな鳩には到底及びも付かない案があってでちゅか?」二名目は何事にも理論で解決しようとするチュンレイ。「絶対有り得ないでちゅね」
「だがう、此処は年長者である俺が成るべきだう」三名目が唯一の難破した船の乗組員にして十五名の中で年長者のウシ村。「経験が物を言うっだう!」
 此の三名は誰が此の島に流れ着いた少年少女を纏めるかで言い争いに成った。
(僕はない。僕はさっき流れ着いたばっかです。依って此処は三名の内の誰かに票を投じていきます)
 サヨ道は年長者を信じてウシ村に票を投じた。結果は次の通りと成った。

 マシリ斗      三票
 チュンレイ     五票
 ウシ村       七票

「俺を入れてたったの三ー票!」
「多数決が罷り通ちゅのでちゅか!」
「では此れからは--」
 待って下さい--票を投じ終えたばかりではあったが、サヨ道は挙足した。
「何だーよ、蜘蛛族の野ー郎!」
「いや、誰だって結果に満足できない事だってあります。ですのでウシ村さんに投じた者として次のような提案をしたいのです!」
「僕以外で優れた提案を出せちゅと思っていまちゅか?」
「はい。取り合えず、一の月もの間は多数決で決まったえっと……ウシ村さんの正式名称は何と呼びます?」
「菅原牛族の菅原ウシ村だう。決して『むら』ではなくう、『そん』と呼べよう」
「わかりました。菅原ウシ村は今後一の月もの間は僕達の指導者に成って下さい。其れから再度指導者選びをして若しもウシ村さんが相応しくないとわかったら他の所に票が流れると僕は考えております」
「よくわからないが、えっとよくわからないけどなにがいいたいの?」
「そうゆう事でちゅか、理解した」
「つまり……此れから一の月までに俺にも機会が巡る訳ーか!」
「そうゆう事です。ではお願いします」
 サヨ道が提案した一の月ごとに指導者を選ぶ制度。此れがまさか自分が十四名を率いる立場に成ろうとは此の時のサヨ道が気付く筈がなかった。
(僕には無理です。あの時に其の場の空気を読まずに変な事をしてしまった僕には無理です。あのカンガルー族のお兄さんは僕に任せたのは一時的とはいえ……僕には其の後もサヨ次やユミ代ちゃんや他のみんなを引っ張る事なんで出来る筈がありません。僕には……僕自身で精一杯です。
 だって僕にはあの時にあれをやってしまったのです。僕に誰かを引っ張る力がある筈がありません!)
 其れから十五名は一の月もの間、ウシ村の指導の下で働いた。常に年長者としての威厳を持つウシ村の指導は副指導者の立場にあるサヨ道、マシリ斗、チュンレイより下の者達にとっては堪える物だった。ウシ村の現場で培った経験が甘い物を与えるよりも厳しい態度こそ下々にとって活力に成ると信じて疑わない。
 だが、其れは正しいようで実は急ぎ過ぎる答えであった。特にクマ尊宅と歳が変わらないツチ姫流には如何やってもウシ村の態度は理解に程遠い物のように感じられた。然もツチ姫流は雌の子……雄の子の感覚では理解し難い雌の心は時としてツチ姫流に仕事を放り出す口実を与えた。
 事実、其の度にチュンレイは馴れない肉体労働を強いられる始末。徐々にウシ村への満足しえない事柄は積もり始める。そして迎えた一の月の後……結果は御覧の通りと成った。

 マシリ斗   三票
 チュンレイ  七票
 ウシ村    五票

「何故なんだう?」
「其れは俺の台詞ーだ。何故俺じゃないんーだ!」
「其れ牙結果でしょう、ウシ村さん」
「私もです。票を投じる気持ちに成れません」
「と言ちゅ訳でこれからは僕が皆さんを引っ張りまちゅ!」
「多数決で決まったのなら僕から言える事はありません」
「という事はお兄ちゃんも俺と同じ所に入れたんです」
「わかったう。お前達の満足しえない事は重く受け止めるう!」
 こうしてチュンレイが二代目指導者と成って一の月もの間、十四名を引っ張ってゆく事に。
「序に此の島をチュンナ島と名付けちゅ!」
 但し、急に発案するチュンレイの波長に彼を良く知る者達でさえも付いていけない模様。
(チュンナって……チュンレイはいきなり遠い先祖の親戚の名前を付けるのです)
 序に親戚の話は作業の合間にチュンレイから聞かされた後だったサヨ道。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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