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一兆年の夜 第九十五話 十五少年少女漂流日誌(二)

 三月八日午前一時十一分二十四秒。
 場所は応神海。船は順調に南雄略に向けて進む。何処にも不備は存在しない。だが--
「お兄ちゃん」
「何です、サヨ次?」
「何か音します?」
「確認します」
 完結した蜘蛛訛りでもサヨ道はサヨ次と同様に眠りに就けない。此れから何かが起こる事を直感していた。其れは大人にはわからない子供が持つ超常的な可能性の賜物。事実、此の船に乗るサヨ道サヨ次兄弟を含む十五名の少年は偶然一致にも程がある確率で危機を共有した。互いに知らない者達など関係なしに。
「音が、其れから揺れ始めました」
「うわああああ、お兄ちゃん」
「落ち着いて下さい。僕達はきっと神様に祈れば必ず--」
「こ、此処に居ました。そ、外が大変です!」
 ゆ、ユミ代ちゃんが来ました--如何やら兄弟のみならず、他の子供達も同様に直感する物だとサヨ道は気付く。
「急いで下さい。も、もう直ぐ此の船は--」
「其処に居タカア、急イデ逃げるんだ!」齢二十八にして七の月と二日目に成る菅原カンガルー族の青年は船に今も残る乗客の安全を最優先させる為にサヨ道達の所に駆け付ける。「自分が案内シマスカラ付イテ来テ下さい!」
「あ、俺はあのカンガルーのおじさんの後に付いて行きます」
「オイオイ、自分は--」
「あ、足を止めないで下さい」
「と、兎に角其のカンガルーの御兄さん……僕達を安全な場所まで案内して下さい!」
「わかった。ところで君ハオ兄サンダネ」サヨ道に声を掛けながら置いて行かないような速さで誘導する乗組員の青年。「其処の雌友達ト弟君ハ君ガ安心サセナサイ……自分は君を安心させるので精一杯なのだからね」
「わかりました。カンガルーのお兄さんも精一杯なのが良くわかりました」
 此処カラ先ハオ喋リナシダ……行くぞ--乗組員の青年は以降、無言で三名を案内させてゆく。
(僕はお兄ちゃん。僕はお兄ちゃんです。僕は……兎に角、ユミ代ちゃんとサヨ次は絶対に僕が守らないといけないのです!)
 少々尻に力を入れるサヨ道。弟と大事な雌を持ってしまった雄の子は力を抜く事も必要である事をまるで知らない。其の為に此れが後々、彼自身にとって大変な事態を招いて行く……

 午前一時三十一分一秒。
 そうしてやって来たのは脱出艇のある部屋。其れは八隻ある内の既に三隻ほど使用された跡。残り五隻だが、内一隻は穴が開いていて使い物に成らない。しかも一隻当たり乗り込めるのは人族の大きさで三名まで。カンガルーの青年は人族よりも若干大きい為に其れが余計にこの場に居る十五名の少年少女達を悩ませる!
「おいおーい、俺達の分にはでかい奴等で大きく容積を使うじゃないかーい!」
「どっ如何するか!」
「俺に聞くナヨ、カカロ徒!」
「此の僕が海の藻屑だなんちゅ!」
「あのチュンレイの兄貴が弱気だなんちゅ」
「吾輩だって弱気にっ成るっての」
「よわきって、ところでよわきっておいしいの?」
「ぼくに聞かれてわかったら世の中ってんだぶ!」
「此れは大変な事態となったウ」
「ねええええええねえ、はあああああ早くしってったらああああ」
「おねえさん、おちついテエイ」
「みんな混乱しています」
「震える科、ユミ代?」
「震えない訳ありませんのです!」
「いやです、兄ちゃん!」
「僕は、ウウウ……穴に力を入れ過ぎました!」
 サヨ道の余りにも締りの良くない事柄は目の前に現れたわに型銀河連合の前で吹き飛んだ--其れは真っ直ぐ脱出艇に向かって突っ込んで来るではないか!
「やらせるかあああ……ウオオオオオ!」
「お、お兄さんが--」
「い、いけないです。お兄さんの前右足の方から先が……食い千切られてます!」
「はっきりと……言うかーい!」
「で、でもう。でもう、お兄さんは左前足で其の銀河連合に一撃を与えて追い払ってまっがう!」
 ハアハア……如何ドウヤラココマデノヨウダ--そう言って青年は自らの死期を知り、荒れ狂う波に呑まれて二度と戻らなくなった!
「お、おにいいさあああああああん!」
 其の荒れ狂う波はカンガルーの青年を呑み込んだだけでは飽き足らずに脱出艇前で必死にしがみつく十五名の少年少女を呑み込んでいった!
(いけません。僕達昆虫種族は……高濃度の海水には、あ、あ、あ--)
 だが、幸いな事に十五名の為に用意した穴付きも含めた脱出艇が十五名を上手く乗せて肺に海水が溜まる事を阻止しながらとある島へと流していくのだった……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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