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一兆年の夜 第九十四話 衛星世界旅行(着)

 三月四十三日午後十時零分五十五秒。
 場所は不明。ちょうど水の惑星がお月様に隠れてから大分経った時間帯。
 チーンパと二凝は初めて第三加速器の存在を知った。何でもキッ次曰く厠の隣に押し倒し棒が隠れている。其れを引っ張るだけで第三加速器を点火する縄が顔を出す。其れに点火するだけで第二加速器と同じ時間帯に爆発物に着火して噴射されるとの事。此れを聞いてチーンパはキッ次の頭に平手打ちをお見舞いさせる!
「痛いなあ……所長!」
「全く設計図にも会議の中にも出さっれなかった代物を密かに設置しやがって!」
「実はお楽しみで作ったのです! もしも衛星の大地から脱出する事を踏まえましてね……情けない事にすっかり忘れてしまいましたが!」
「其れがあるーなら如何してー今までそれを言わなかったのーだ?」
「恐らくは酸素酔い事件の時にすっかり隅の方に追っいやったのだろう。生命の脳の事だっろう、全く脳の整理は何時まで経とうとも出来なっい物だなあ」
「ははは! 情けない事に!」
「ま、気ーを落とさずーに」
「まあ気を取り直しって--」
「待てー、チーンパ」
「何だっよ、二凝っ!」
「今からやったーって母なるー星への帰還が叶う訳ーない!」
「そっんなの……あっ!」チーンパは気付く。「現在の位置はちょうど水の惑星には見えっない衛星の裏側だったな!」
「という事は!」
「ああー、水の惑星ーが見え始めーた時にこそ始めるべきだ……いーや、其れじゃあ安心出来なーい」
「如何して安心出来なっいと言い切れる、二凝!」
「考えてみーたまえ!」二凝の口調は熱を帯びる。「仮に水の惑星ーが見えても望遠ー弾の向きは何処を目指すーか!」
「……仕方ない。本当は話していっる場合じゃないが……根拠のない直感を信じ切っるのは却って第三加速器に余計な使い方をしってしまうからなあ!」
「細かい計算を議論するんですね!」
 こうしてたった一回だけの機会を懸けた運命の議論が始まる。其れは噛み砕いて紹介する。先ずは向きを如何するのか? チーンパは望遠弾を全弾使ってでも試作六号を回転させる事を主張。二凝は逆に必要な分だけ使って時期が来ると共に直前で合わせると同時に点火させる事を主張。次に時間帯を如何するのか? 此れは議論する内に突然両者の主張が変わる事が屡々。特に緊急時に思い付くチーンパにはこの傾向が強くみられる。最後に追尾する銀河連合は果たしてほったらかしにしても良いのか? 大柄且つ細かい事に気を取られるチーンパは無視を主張する。一方の二凝は軌道変更時に少し攻撃を加えて放してやるべきだと主張。
 元々仲が芳しくない両者の議論は激しさを増す一方。三つの議題に対して最終的に決着を付けたのは……両者を結び付けたキッ次だった。キッ次は妥協案を提示する事で何とか和解へと導かせる--そして運命の時が切って落とされる!

 三月四十四日午前四時一分二秒。
 場所は不明。ちょうど水の惑星が顔を出す頃合。
「点火完了しました!」
「いよいーよだなー」
「泣いても笑ってもここに全てを懸けっる……此れで俺達は宇宙の各地で眠っる神様の前で帰還を試みっる!」
(父さん……そして衛星旅行に携わった大勢の生命よ! 如何か僕達に導きをおお!)
 其れから第三加速器は点火--最初こそ機体全体を大きく揺らして三名の心理に巨大な一撃を加えつつも……望遠弾試作六号の尻に巨大な爆発を起こす!
 そして……三名は振り回されつつも試作六号が衛星の引力を振り切って一気に水の惑星の落下軌道まで食い込む事を感じて行く--いや、目で見えなくとも三名はそうだと信じる!
 そして--

 三月四十四日午後十時七分四十一秒。
 場所は真古天神武テオディダクトス大陸最南端。かつて深海研究者イモール・アーロニク一派を発見した崖の下にて。
 其処へ望遠弾倶楽部のアン太、ウシマル、サク造、そして齢二十三にして五の月と一日目に成るエウク犬族の青年にしてサッカス速報所属の記者であるイーヌン・イトモアは早朝に観測室で何かがテオディダクトス最南端の海に向かって落下するのを確認する。其れを確かめる為に現地の者達に木船を用意して下りてゆく。其の時--
「な、あれーは何ーだああ!」
 イーヌンの叫びと共に目前より成人体型距離にして千の所に焔を纏った巨大な弾丸のような何かが落下し、其処で小規模ではあるが津波が発生--幸い、船が壊れただけで四名共津波が来る前にやや高い崖にしがみついて免れた!
「其のせいで船が……ありゃあ何なんだってう!」
「銀河連合が乗り込んでいた望遠弾試作六号に良く似た何かです」
「ンェ益々近付けなくなるじゃないか!」
 だが、都合の良い時は一度くらい訪れる。何と船で落下した海域まで向かおうとするのは望遠弾倶楽部の幹部とサッカス速報の一記者だけではない。何と南サッカス町の町長が足配した船三隻が西側より現れるではないか--四名は其れに乗り込み、現場へと向かった。
 勿論、何も持たずに近付く訳ではない。船を三隻も足配したのは銀河連合に依る襲撃を予想しての事だった。だが、其れは取り越し苦労に終わる。
「コォ此れを見て下さい!」
「臭いの余りにも強烈な所からして……というか此れって望遠弾のような物からも発せられてるう!」
「銀河連合は訳あって宇宙空間の中で果てました」
「ンゥ中に避難しよう。クァ強烈過ぎて鼻どころか気まで飛ばされてしまう!」
「はい。見て下さい、皆さん!」
 サク造が顔を挙げて差す方向に何か弾丸のような物が浮かぶのが見えた。四名は銀河連合の放つ物に気を付けつつも手摺の限度まで体を前に出す。すると……「間違いなってん!」ちょうど正面よりやや右側が四角に開くと中からチーンパが顔を出す。
「ンァ所長が……其れにキッ次君と二凝さんも無事に生還を果たしましたか!」
 此処から先はキッ次の回想で幕を下ろそう。
(こうして僕達は生還を果たした! 果たしたのは良いけど……惑星の引力は重たい! 宇宙空間を一度でも適応したのが良くなかった! 僕達は着水して早々に体を動かす事さえも苦労した! しかも僕に至っては後で右手羽先に三か所程の骨折が確認されたよ! こんなにも母なる惑星の引力は重たかったのだね! 幸い! 何か掴む分には余程無理な動きをしない限りは楽な姿勢のまま進む事が出来……無事に出入り口の扉を開場する事に成功する! 本当は誰かの助けを待つべきだと二凝さんと意見を一致させましたが! 所長は待つのが好きじゃない生命故に直ぐに出てから生存を確認しないと誰も助けないと言って聞きませんでしたね! まあ! どの道僕達は助かった訳だよ! 帰還後一の週までは水の惑星の環境に慣れるまでは病院の中で適応化を余儀なくされましたね! 歩く事さえも難しい状況だったから!
 あ! 蛇足ですけど結局銀河連合は宇宙の中で死んだのでしょうか! 二名共死んだと信じて彼らが追尾してる時も余り気にして居なかった節がありましたね! 其れにしても何故でしょうねえ! 此れはきっと膨張の話が原因かも知れない……多分!)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十一年三月四十四日午後十一時零分零秒。

 第九十四話 衛星世界旅行 完

 第九十五話 十五少年少女漂流日誌 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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