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一兆年の夜 第九十四話 衛星世界旅行(終)

 三月三十七日午前九時七分四十三秒。
 場所は西サッカス町望遠弾倶楽部。一階会議室。
 アン太、ウシマル、そしてサク造の三名は早朝の六の時から食事を摂り、其れから三十の分より後に日常話から始めてから昨の日の夜に観測した出来事について語り始める。
「副所長」
「ンァああ、フォ他の会員の出迎えはラコ丸君に任せたよ」
「あいつは準両生種族だろう? 体に淡水を浴びる時間はあっかん?」
「其処はラコ丸君次第です。ウシマル君」
「ンゥ有無。ソォ其れよりもそろそろ始めようか」
「昨の日の夜に観測したもう一つの望遠弾のようなモノですかう。あれ……如何すれば良いんですうか!」
「銀河連合も衛星世界への旅行がしたかったのでしょう」
「ンゥいや、ンォ幾ら蜘蛛訛りでも其処は疑問に思う所だぞ!」
「済みません。私達は如何しても完結したように話します。ですので気にしないで話を続けて下さい」
 ンゥ気に成るがなあ--とアン太は未だに訛りの壁は巨大である事を認識する。
 アン太は続ける。先ずは試作六号が既にお月様の一部と化して周回を始めた事。此れはアン太達が議論するにはあくまで三名が宇宙空間の中で果てたという事を意味してはいない。
 ウシマルの意見では恐らくはお月様に着陸して其処で何かを採集するのではないかと予想される。其の為にウシマル曰く周回軌道に乗ってから少しずつ着陸に向かって進んでいると踏まえる。
 此れに対してサク造は異なる意見を出す。彼曰く本来は周回軌道に乗るのは着陸時に行う為だけに利用するのであって実際にはお月様の一部と化する事態は想定していなかった。サク造曰く恐らくは内部で何らかの異常事態が発生して周回軌道に乗ったまま気が付けば如何する事も出来ない状況に追い込まれた可能性が高いと主張。
 二名の意見は何方も的を得ているように思える。余り自己主張しないアン太は二名の意見に耳を傾けつつも次のように語る。
「ソォ細かい事まではあれだけ距離が遠いと難しい」
「若しかして何か重要な意見でもあるのですかう?」
「其れはどんな意見です」
「ンゥ私が思うにあの銀河連合が乗り込むと思われる何かに追われる形で所長達は間隔を誤って衛星の一部と化してしまったんじゃないかな?」
「いや、勝手に所長さん達を死なせないで下さいう!」
「スゥ其処まで言ったつもりはなかったがな。ンォだが近いだろう」
「如何です。私から考えたら言うだけなら如何とでも言えます」
 其れを言ったら御仕舞っだう--とサク造に突っ込むウシマル。
 ではそろそろ視点を試作六号に戻そう。

 三月三十七日午前九時九分一秒。
 場所は不明。
 最初に目覚めたのはチーンパ。彼は御来て早々に頭は働かないが、無意識の内に酸素供給機に足をやる……「んんんっんん、うおおっおおおおお!」其処で目盛りが信じられない所に設定されている事に気付いて急いで二段階目に合わせた!
「五月蠅いなーあ、朝からいきーなり--」
 寝惚けっている場合じゃっないだろうがああああ--チーンパは二名を後左足で頭の方を軽く蹴って眠気を飛ばしてゆく。
「いでで! 何するんですか!」
「何をするっんですか? 其れは誰かに言いたっい言葉だ!」チーンパは酸素供給機に指差す。「目盛っりの設定が全開に成っていたぞ!」
「何だってえええ! 一体何が起こっているんだ!」
「目盛りーが……ところで今どれくらい時間ーが経った?」
 あ……そうだった--チーンパは重要な何かを思い出し始める。
「僕達って……開放状態で少々興奮したままに酔ってしまったのか! だったら僕達は! 僕達は!」
「嘆いた所で今更始ーまらなーい。少々思い出しーたが……あれーは私がうっかりーやってしまった事だ。思い出せる範囲ーで、だがーな」
「完全に酒酔っい状態で俺達はやっちまったさ。だから……空腹感も起きたっての状態もどうも良くない方向に傾きやっすい訳だ」
「ま! まあ今は兎も角としてもこの状況を如何するかを考える方が先決です!」
「先決かーあ……確かにそうーだな。今の私達がやるべきなーのは」二凝は東西南北と天井に取り付けられてある窓から何かを捉え始める。「わかるのは何か丸いー物が幾つもー目に留まーった訳だ」
「俺も確認しってみる」チーンパは丸い物が複数あるのが見える窓から試作六号がどのように動いているのかを推理する。「こりゃああれだな……着陸は余っりにも賭っけに成るぞ!」
「如何して其れがわかるのですか!」
「ここは天井一っつと東西南北の四方からは見えるが足下は如何頑張っても見えないってわかるよな?」
「はい! 設計上は足下は元々射出口で精一杯ですので!」
「だが、あの銀河連合が作りしあれを見てっみろ!」チーンパは指差しながら望遠弾試作六号に似た何かが追尾する事について説明する。「あれは如何ゆう訳か前見ったのよりも膨張していっるように見えるな」
「ぎ! 銀河連合……いけない! まだあいつらは--」
「其れは取りー越し苦労だーろう」
「え! 取り越し苦労!」
「まあ其の説明は後にしてあれは空気のなっい世界で遂に凍ってしまい、更には真空と呼ばれっる空間で内部に溜め込んだ空気が次々と外へ出よっうとしている。其の結果があんな風にあちこちから空気を出しなっがら膨張した姿さ」
「うーん! 其れよりもあの銀河連合を見て如何して着陸が困難だとわかるのですか!」
「まあ追尾する向きを見ったんだ。其処かっら計算してな……其れでわかった」
「如何やーら私達はお月様の衛星ーの一部と化してーしまった訳か……落下軌道ーに入らずに安定ー周回軌道を永遠ーに回り続けーるかーあ。うーん……はっくしょおうーい!」二凝は寒さに気が付いてくしゃみをする。「ウウウーう、寒くないーか?」
「あ、あっあ、フ、震えっる!」
「まさか!」キッ次は確認する。「やっぱり……あの騒ぎの時に全部使い果たしてしまったんだ!」
「其れだっけじゃねえ……お日様の光が届いてっない!」
「熱せられていーないという訳かーあ!」
 試作六号は夏を過ぎ、冬の時代に入った。三名は此の冬の為に食事と適度の掃除、そして酸素供給機の調整に必要最低限の観測といった重要な作業以外では毛布に包まって一歩も出られない状態と成る。其れだけではない。適度の掃除も結露と凍結が始まると氷柱つららという宇宙空間内では万が一の事態にもなりかねない物以外は手も足も手羽先も出せない状態であった。
 こうした何の変化も進展もない冬の時代は五の日も続く。其の間、試作六号も追尾する銀河連合が操りし望遠弾に似た何かもお月様の周りを回るだけ。宇宙空間なので落下の法則と同じく一定の間隔で同じような速度で移動し続けるだけ。其の間に互いを攻撃する訳でも挑発する訳でもない。只時間の流れだけが過ぎて行く。

 三月四十二日午後一時七分四秒。
 場所は不明。永遠の夜を満喫出来る周回軌道である事は確か。
 そんな中で変化は突然訪れる--突然、外から急激な速度で向かって来る物が一つ!
「わわわわ! な! あんなの避けられなあああい!」
「ぶ、ぶつかっるかああ!」
「いー、いーや!」
 運良く其れは試作六号を横切り、別に追尾した隕石群と正面衝突--突然、爆発を起こすかのように試作六号を含めて周囲を揺らしてゆく!
「なああああ! お! 終わりの始まりだあああ!」
「い、いーや……お、おいー」
「宇宙空間は真空なっのだぞ。如何して衝撃が此方にも伝わっるか!」
 だが、如何ゆう訳か伝わった。そして一定の周回軌道は変化を起こして今度は冬から秋まで一の日に周回する軌道へと変化--此れに依って僅かではあるが機内での凍結は多少穏やかと成る。
「其れでも銀河連合の駆るあれは追尾して来ますね!」
「だがー、動きはーしない。其れでもあれーを毎のー日も見続けるのは良い気分に成らーないな」
 周回軌道に変化は訪れても試作六号はお月様に着陸する事は永遠にない。

 三月四十三日午後九時十八分五十秒。
 場所は不明。時折、水の惑星が見える時間帯が確認出来る軌道。
 三名はそろそろ此の密閉空間での生活に堪忍の限界が訪れようとしていた。其の要因と成るのが食料……そして酸素供給機の故障。とうとう酸素供給機は此の日に来て使い物に成らなくなった。当然、其の対策は取られる物の……保つのは精々一の日だけとチーンパも二凝も推測する。
(ああ! 僕のせいだ! 僕がもう少しましな場所に酸素供給機を置いておけばあのような馬か鹿かわからない騒ぎを起こさずに済んだのに!)
 キッ次が嘆いている中でチーンパは……「諦めっるのはまだ早っい」と慰める。
「で! でも僕達は此のままこの中で酸素欠乏の末に想念の海に旅立つかも知れないのですよ! そんな慰めの言葉なんて気分を逸らせるに値しません!」
「キッ次君の言うー通りだ。もう第二加速ーも使い果たしたーのだぞ。如何やって衛星のー引力から脱出して母なるー水の惑星に落下してーゆくというのだ!」
「其の為にもう一度あの流れっ星を期待すっるんだよ!」
「馬か鹿ですか! 所長! 激突したら一瞬でこの機体は穴が開いて僕達は勢い良く外に弾き飛ばされますって!」
「そーうか……反動ーか。其れでー」二凝は何故チーンパが設置式望遠砲の前に立つのかに気付く。「其処にー立って頭の中ーで精密計算ーを行っていたーのか!」
「幾ら望遠砲でも精々期待が傾く程度ですよ! しかも!」キッ次は其れが意味を為さない理由を述べる。「衛星軌道を少し変えるだけでとても脱出には心許ない事くらいは……わかっているでしょう!」
「だからこその流れ星のー期待だろうが……当たり所ーの調節をするなんーて運任せにーも程があるぞ。無理ーな事はするな!」
「其れでも俺は諦っめが……良くっない生命なんだよ!」
 チーンパは諦めない。一方でキッ次は後ろ向きに傾き、二凝は如何足掻いても今の状況では母なる惑星への帰還は可能ではないと考える。三者三様に考えを巡らす時……キッ次は不思議な考えに至る。
(ああ! 僕は今……遺言を思い付こうとしている! もう無理なんだよ! 無理だから僕は此れから念でも良いから水の惑星に届けたいんだ! そうだなあ! これにしよう!
 拝啓望遠弾倶楽部と何時も取材するサッカス速報で働くの皆さん……如何か僕達が此の孤独溢れる宇宙にて朽ち果てる事をお許しを! 其れは次の三つが理由です! 一つに僕達は惑星内で惑星外の事を知ったつもりで居ました! 家の中でずっと生活する生命が家の外を知ったつもりで居るようにそんなのは絵に描いた餅を簡単に想像するような物でした!
 二つ目が僕達が旅行間隔で行ける物だと感を違えた事です! 宇宙空間は星の中とは異なるのです! 引力の加護から離れた世界はもう噴射で軌道を変える以外に道は……噴射で!
 そ! そうだ!)
 キッ次は忘れていたある物を思い出す--キッ次が両手羽先高く上げる事に対して二名は次のように反応する。
「少量ーの酸素でそろそろ頭が安定しなくー成ったか?」
「今微妙っな所なんだ。音を鳴らして構えてっいる場合か!」
「良い事を思い出しました! 第三加速器を使いましょう!」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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