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一兆年の夜 第九十三話 惑星から衛星へ(論)

 午後五時十一分三十二秒。
 場所は仮本部内。
 五度もの実験を終えた五名は帰宅の準備に入る。其の中でチーンパとキッ次は納得がいかない。
「ォオ諦めろ。イィ幾らやったって衝撃を緩和する方法は発見する事なんて出来ない!」
「何度やっても圧し潰された形ってのは悔しいじゃないですか!」
「悔しいけどう、其れは仕方ないう」
「少なくとも中で操作するという危険が改めて知る事が出来ただけでも一歩前進です」
「中が未だ危険なっのが俺達にとって悔しいんだよ。其処まで水の惑星が過保護だったなんて……其処まで一般生命に惑星の外に出しったくないか!」
「ィシ仕方のない話だ。ゥス数値上でも内部に掛かる衝撃は私達が無事で居られる保証がない程に尋常ではない。ウゥ幾ら空間を開けても発射する際に掛かる衝撃と望遠弾に只管掛かる引力との均衡を保つ為にはそう成るしかない」
「確かに望遠砲から発射した弾丸はぶつかった個所に当たっるだけで先端が凹むのではない……ぶつっかる前から尋常ではない空気抵抗によって形が変化していき、当たった時には左右或は上下から押っし潰される。受け流っす事が出来ればどれだけ内部を確保出来っるかわからない」
「内部の確保……其れだ!」
「ど、如何したんだう?」
「きっと見付けました。そうです、合間君?」
「耐えられないのなら受け流せば良い! 武の世界では如何に相手の攻撃を受け流すかに焦点が掛かる!」
「武の世界と一緒にすっるな、キッ次」
「いや! 直ぐに小型試作第百七十八号の制作に取り掛かろう!」
 キッ次は転んだら只では起きない。少しでも可能性を見出すと其れに取り掛かる。故にチーンパはキッ次を重用する。決して贖罪ではない。確かに父親を死なせた思いがあろうとも其れは本者とは関係しない。彼の能力を信じてチーンパはキッ次を大事に扱う。
「全くお前は俺の大事な相棒だっぜ!」
「でも彼は第一号試作品で--」
「イィや、ぉそおゆうので所長はキッ次君を採用したのではない。ゥア採用する前に一度能力あるかを試したのだ……なあ?」
 ああ、身内の力で入っれても発揮しなければ所詮は足を……翼を引っ張るだけだ--とチーンパはあくまで本者の能力を信じて採用を心掛ける。
「寧ろ父さんは父さんだ! 父さんは衛星に足を踏み入れる事を夢見て人生を謳歌したんだ! 僕だって其れを可能とする夢の乗り物を作って衛星へと辿り着く為に果てたい!」
「だな。キジ一も戦友だったベイズも見果てぬ夢の為に命を燃やっした。罪を感じる位なら俺達は償う意味でも進っめなければいけないのだよ!」其れから右拳を握り締めてこう宣言するチーンパ。「其れがあいつらにとって一番の供養と成っる!」
 衛星に到達する夢は見果てぬ。惑星の外は果てしなく謎が深い。宇宙空間に飛び込む生命は何時如何なる時でも命懸けである。其の見返りは少ない。だが、見返りを求めて新境地に飛び込む生命に明日はない。いや、其の生命は遠過ぎる過去には何処にも居ない。彼等は銀河連合とは決して相容れない。何かの為には例え一文無しに成ろうとも実行してみせる。其れが良くない方向に作用する結果が訪れようとも決して後悔などさせない。其れが一般生命の進むべき道なら尚更の事!
(ベイズ・ボルティーニさんの事ですね! 彼は基本戦略確立の天才と称される戦略家だった軍者! 其の彼が衛星に辿り着く事は戦略上一般生命にとって有利に繋がると提言した訳だ! だが! 道半ばにして試作第一号の発射事故に巻き込まれて僕の父さん同様に命を落としてしまった! 後少し生きてさえいれば衛星に於ける基本戦略も確立していたであろう!)
 キッ次が思うようにベイズが軍者を引退してチーンパと共に衛星に望遠弾を飛ばす事業に参加したのは一重に新たな戦略を確立する為。衛星に辿り着くという見果てぬ夢を持つチーンパやキッ次とは大違いである。彼は大規模な流れ星を防ぐ為に衛星を使って水の惑星に降り注ぐ前に迎撃する事を提案した。其れが戦略上は最も効率を引き上げて惑星内から迎撃する或は惑星より少し外から迎撃するという後出しをしなくて済むという意味合いも籠めてである。しかも彼は生前に望遠弾を発射する際は引力の掛かりが少ない方角からやる方が必要火薬量が少なくなるという事も発見した。但し、其れを証明するにはまだまだ最新の計測器を開発する必要に迫られる。
 こうして実験結果から突き付けられる現実と僅かに見えた希望を胸に五名は帰宅してゆく。

 二月五十五日午前十時二分七秒。
 場所は西サッカス町東地区仮本部内。
 其処に二凝が立ち寄る。迎えるのはキッ次。
「あ! お早う御座います! 貴方のようなお方が仮本部に立ち寄るなんて!」
「んー? あの生意気な所長は何処ーに居る?」
「あ! 今は新本部の設計について簿記会計のアン太と共に夕方まで話し合うみたいです!」
「そーうか。其れで今日の朝刊は読んーだか?」
「読みましたね! 其れでもまだ衛星に辿り着けないと主張するのですか!」
「当たーり前だ。引力は水の惑星ーだけじゃない。衛星ーや或はお日様ーだって掛かっている。その見えない糸の力を侮るーなよ!」
「わかっていますよ! だからこそ……あ! サク造さん! お願いします!」
「わかりました」
 サク造はある物を二凝に披露する。
「此れーは……弾力液ー!」
「気休め程度にこいつを使えば……第二加速の手動操作の時に比較的安全で居られます!」
「だーが、弾力液は熱にー弱い。其れを知っているーのか?」
「ええ! 知ってますとも! だから僕は耐熱用に此れも掛けるのです!」
「ウグぐぐ……まだだ、まだ其れでも望遠弾は衛星に届かなーい!」
 あらゆる事実を突き付けられてもまだ二凝は衛星には届かない事を撤回しない!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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