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一兆年の夜 第九十三話 惑星から衛星へ(合)

 二月二十八日午後零時四十八分十一秒。
 場所は西サッカス町東地区望遠倶楽部本部。全部で二階建てであり、尚且つ一階は特に望遠弾発射台が敷かれており、西サッカス町の大部分を占める面積を誇る。
 さて、一階食堂にてチーンパとキッ次、そして簿記会計を務める齢三十五にして四日目に成るサッカス蟻族の有野アン太の三名は食事を摂る。其処へ一派入り口の扉を叩く音が耳に入る。キッ次は翼を羽ばたかせて急行。すると扉の向こう側より……「私ーだ、二凝ーだ」という声がしたのでキッ次は安全を期するべくチーンパとアン太を呼んで中に入り始める二凝の身体検査をする。
「良かったっな、お前は紛っれもなく銀河連合ではない」
「当たり前ーだ。働き盛ーりの私が道半ばに銀河連合に死なーれてたまるか!」
「でも銀河連合のやり口は徐々に細かく成るのですよ! そうでしょ! アン太さん!」
「ンゥまあそうだが、アァ何だ……奴等は必ず此方の穴を衝いてくる!」
「堂々巡りじゃっないか。余計に後出しっで対策を取るしかないじゃないか……いっそ予想さっれる事態に備えて此方かっら迎え撃つという策は出来ないのか?」
「却って足のー平を見せる。結局は後出し以外に打つー足がない」
「ええっい、もうそうゆう話は止めっだ。取り合えず二凝は昼飯を食べって来たか?」
 ああー、既ーにな--と事前に行うのが大二凝という雄である。
「取り合えっず二階でじっくり試作第五号の望遠弾を眺めっておけよ」
「まあまあ! 此れでも所長は二凝さんも認めておりますので!」
「ォオ兎に角、クァ午後の三の時から発射実験を始めますぞ」
「是非共其のー末路を見てみたいでーすね」
 二凝は今度も望遠弾が必ず衛星に届かないと考えるようだ。
(其れだけは避けたいな! だからこそ僕は試作第六号に関してだけは少し設計図にないある物を挟み込んだ! 此れは内緒だからな! もしも設計図を盗まれても銀河連合に察知される事はない……筈だ!)
 キッ次は内緒で第六号にある物を挟み込んだ。其れは後程語られてゆく。

 午後三時零分七秒。
 場所は望遠弾倶楽部。一階発射室。其処には成人体型は直径十一、高さ五十にも成る望遠弾が設置されていた。
 尻部及び下腹部には真古天神武からの援助を受けて果ては藤原大陸まで掻き集められた雄略火薬、藤原火薬、そして武内火薬が詰まった起爆装置。第四号までの実験では二段式であるなら空気の壁を突破する事が可能と成る事が判明。其れでも星の引力を振り切るだけの速度には至らない。水の惑星の引力は想像を絶する程に過保護だった。其の過剰なまでの保護を振り切るには二段目までに一段目をもう少し早い速度の実現を目指さないといけない。
 因みに四名中半分は二階観測室にて其の様子を窺う。様子を窺うのはアン太と二凝。何故か? 起爆には近場で火を点ける者が最低でも二名必要。当然、二名は急いで傍を離れないと爆発に巻き込まれる。
 実は一回目に爆発に巻き込まれて二名死亡した。其の中にはキッ次の父キジ一も居た。其の爆発力は実際に確かめないとわからない程であり、実験の度に観測室は徐々に離れて行く。最初は第五回目に比べて成人体型にして半径の半分もなかった。だが、現在では二回目で想定を超える爆発力によって約二の年もの間は改修を余儀なくされる程だった。その度に西サッカス町は拡大を余儀なくされる。気が付けば市よりも巨大な町と化した。衛星まで飛ばすという果てない夢はこうまで土地を求め続けるのか!
 話を戻すと起爆に入るまで三の分。勿論、此れはアン太の長年の経験と積み重ねて来た細かい計算もあって実現に至った。勿論、計算出来るのは彼だけではない。チーンパもキッ次も入念なる計算が可能である。最も発想力が乏しい為にアン太は簿記会計にばかり集中しがちである。発想力はチーンパよりもキッ次の方が優れる。ではチーンパは何の為に居るのか? 其れはやり遂げるだけの突破力と土壇場に於いての対応力である。元軍者というだけあって其処だけは誰も彼に勝てない。そんな訳でキッ次は火を点す準備を始める。火打石を両手羽先で持ちつつもチーンパの合図を待つ。
「緊張しますね! 所長!」
「いっや、少し待ってくっれないか?」
 チーンパは望遠弾の東手前にて反対側に位置する観測室を眺める内に何かを見付ける。直ぐにチーンパは観測室に走ってゆく!
 観測室内では何故チーンパが合図を無視して真っ直ぐ向かって来るのかを二名は気付かない。直ぐにアン太はチーンパの様子を確かめに扉を開けようと--
「幾ら何でもー近過ぎるー音……オイ、有野ーさん。そいつーに近付くなあー!」
「ゥエ?」
 時既に遅く、扉は開く--すると現れた剥き出しの何かはアン太に圧し掛かる!
「ウゥオオワアアアアアアアアア、ァウアアアアアア!」
「ウオーオオ、元軍者ーを舐めるなーあああ!」
 間一髪でアン太は助かり、犬型は犬族で元軍者の二凝の噛み付きで頸動脈を引き千切られて其の侭息絶えた!
「ハアーハア……何とかー、助かーった」
「ハァ、ハァはあ……銀河連合の侵入を何時許したのだ!」
「裏扉か或はたまたーま昨の日から侵入していーて……何方にせよ後出しーでまた対策をしないとーいけませんな」
「……あぁ、ぉそ其れよりも所長は何処に行った?」
「探そう……と言いーたいが、先ーずはキッ次を一名だけにしては居られーない!」
「ゥオわかった。ゥス直ぐにキッ次君の所まで向かう!」
 二足に分かれた二名の内一名はキッ次の所に、もう一名はチーンパを探しに向かう。時間にして僅か二の分と八の秒にて二凝はチーンパを発見する。其処は図面作成室……「盗まれった……第六号を描いった設計図が!」だが、こちらは本当の意味で時既に遅かった。
「第六ー号?」
「折角明くる日かっら製作予定の第六号望遠弾が……如何すれっば良いんだああ!」
「あの銀河連合は設計図ーを盗む為の引き付け役だったーか!」
「全く御先が真っ暗--」
「其れなら大丈夫です!」其処へアン太と共にやって来たキッ次。「既に僕は本物の設計図の作成を完了しました!」
 何、本物だって--其れは二凝どころかチーンパとアン太にも知られていない事だった。
「んぁまあ今は第五号の実験を優先する。サァ再び持ち場に就くぞ!」
 第六号を描いた本物の設計図の事は此の際は重要ではない。重要なのは第五号の実験結果。果たして結果は如何成るのか?

 午後五時一分零秒。
 再点検を済ませる事で第一加速に於ける問題点をほんの少し解消したように感じる望遠弾倶楽部の三名。因みに第一加速とは外付けで起爆する装置で発射する加速の事。即ち、次の第二加速までに何処まで速度を上げられるかを表した物。其れから第二加速第一加速で速度を上げる毎に生じる空気の壁を突破する為の加速。此れに依り、一気に引力の外まで運ぶ事で衛星まで望遠弾を飛ばすという仕組み。その第一加速に於ける多点分散の問題を解消した事が三名にとって喜ばしい事だった。
 後は合図と共に点火し、二名は急いで観測室へと避難するだけ。数の分の後……徐々に望遠弾の下に溜まる火薬は点火を始める。その現場を始めてみた二凝は少し髭を右前足で握り締めるまでに怯える。どれだけ戦場を潜り抜けようとも火の尋常ならざる物の前では大人しく出来ない模様。
 やがて火は炎と成り、やがては光の領域まで踏み込んで望遠弾の尻に巨大な一撃をお見舞いした--起爆を起こして観測室全窓硝子どころか図面作成室の扉を破壊する程の衝撃波を走らせて弾丸は空に向かって突き進む--第一加速に火が点いた!
「だ、大丈っ夫か?」
「ンァ何時やってもこの衝撃波は馴れん!」
「寧ろ慣れなーくて、け、結ー構、こけ、ここオオーウい!」
「鶏族の真似事ですか! 二凝さん!」
「まだ衝撃波のっ影響は凄まじいな。暫くは屈っめ……俺が合図を出っすまで決して体を起こすのではない!」
 其の衝撃波の嵐は二の分より後には静まり返る--其処で合図を送り、四名共試作五号の様子を確認する。
(ああ! 何か空にて爆発炎上が起こってる! きっと第二加速器が自動で作動せずに寧ろ第一加速に使った火薬の量が過剰過ぎて漏れてしまったんだ! ああ! 何という事だ!)
 実験は成功しなかった。第一加速に使った火薬が原因で自動作動する筈だった第二加速は予想を覆して内部爆発を引き起こす事に。
「ハーハ、だから私の言った通りーではないか!」
「いや、第一加速で雲の上と思われる高っさまで二の分までに上昇した。此れはほんっの少しの進歩ではないか!」
「何が進歩だ。肝心の自動作動の第二加速のせーいで空中炎上するのがいけない。生命がー乗っていなかったから良かーった物を!」
 生命……そうっか、其の方法があった--チーンパはある事を閃いた!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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