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一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(八)

 二月一日午後一時二分十八秒。
 場所は不明。イモール、カエルヒコ、ベアッ土は久方ぶりに地上の空気を吸う。
 何故三名にそんな事をさせるのか? 其れは次の会話から概ね明白と成る。
「何でも俺様達に近場の銀河連合を倒して欲しいらしいナアナ」
「ピースケイスは少し調子が芳しくないのはわかりますっケロ。だからっていきなり銀河連合の追尾隊を追っ払って欲しいってのはとても無茶な指示ですねっケロ」
「ああイモォ、そうゆう指示を送るくらいならわざわざ外部船員である私達に協力させる意味が理解しかねるリィ」
「まあ良い。ようやく俺様の活躍を奴らに示す時が来たぜエイ!」今まで見てるだけだったベアッ土はこの機会を逆に望んでいた。「これで銛師としての俺様の強さを存分に魅せしめる好機と来たゼェイ!」
「今までずっと悔しい思いしていたのでしょうねっケロ」
「まあ好きにしようかリィ。私達はあくまで頭脳労働者として空論を与えてベアッ土君がそれを修正しつつ助けに成れば構わないリィ」
「良くわかりませんがッケロ、この場合は黙って様子見ていきましょうっケロ」
 有無リィ--口だけしか活躍できない物は黙ってベアッ土の活躍を見守る……イモールの脳裏にそう過る。
 さて、ピースケイスの周りを泳ぐ銀河連合は全部で三体。どれも鯨型と巨体。果たしてベアッ土は右前足に持つ銛でどのように打ち込むのか?
「答えは……そのまま飛び込めば楽ダアイ!」ベアッ土に戦略はない……「戦い方は戦って初メイテ」あるのは付け焼刃で考案する戦術のみ。「閃くのダアィ!」
「成程イモォ、カエルヒコ君の言った通りだりぃ」
「寧ろ却って助言は足を引っ張るだけですっケロ」
「だろうなイモォ、助言にも対応出来た戦いならまだ口出しもかなうからなリィ」カエルヒコの見解を評価するイモール。「如何やら世代交代は近いぞイモォ、カエルヒコ君リィ」
 止めて下さいッケロ、まだその器じゃありませんっケロ--謙遜するカエルヒコ。
 では肝心のベアッ土はどうなのか? 其れは三体を難なく自慢の銛で全て二撃以内で仕留めた。特に最初と二体目は一つも掠り傷を与えずに一撃で急所を貫く技量にイモールは感嘆する。『賞金稼ぎとして活動する生命はこうも肉体自慢なのか』と感じる程。
 その様子をじかに見るのは二名だけではない。例のネロリモ船長が四本足どころか尻尾まで外に出して現れた。
「見ておられたのですかイモォ、ネロリモ船長リィ?」
「見られて……何か都合が宜しくないとでも?」
「ガバア……当たり前ダアィ。お前みたいなのは何をするかわからんカラァな!」
「言いたい事がありますが……聞き流します」
「口喧嘩には乗らないそうですねっケロ、ベアッ土さんッケロ」
 其処も気に入らんゼエィ--既に全身を陸の上に仰がせるベアッ土。
「其れでネロリモ船長が顔を出した理由は何ですかリィ?」
「質問かね……良いだろう」ネロリモ船長は早急に答えてしまった。「追尾隊は……他にも居る!」
「何だっテエイ、もう銛の刃は刃毀れして使い物に成らないぜエイ」
「えッケロ、そうなのですかッケロ!」
 だから三体目は二撃も要したのかリィ--とイモールは納得する。
「気付かれたか、先生には」
「私も気付いていたのだよ……君程の--」
「お前に聞いてネエヨ!」話に割り込むネロリモ船長に怒鳴り声をあげるベアッ土。「唾飛んだだろうガアィ!」
 まあまあッケロ--宥めるカエルヒコ。
「ではベアッ土君の休憩の序なので……御披露目しましょう」
「お披露目とは何ですかリィ?」
「中に入って下さい……でないと変な賢さを持つ……奴等は奇襲しますよ」
 其れは一理あるゼエィ--感情的過ぎないのもベアッ土の賞金首としての価値を高める。
 三名はネロリモ船長の後を追うようにピースケイスの中まで……「うわああッケロ、銀河連合がこのままじゃあ--」突然、急激な落下速度で銀河連合が中へと侵入を果たしたか!
 カエルヒコの叫びとは反対の事が起こった--中に入った鳶型が入って直ぐに呼吸のする個所から火を噴き出して炎上……其の侭、燃え尽きた!
「えイモォ、私達は何ともないのにリィ!」
「ピースケイスでは認証されないモノ……特に銀河連合には死に匹敵するお灸が……発動する」
「俺様は頭が良くないから構造は知ラァン」
 僕だって知りませんっケロ--頭脳労働者でも難しい仕組みがピースケイスには存在する。
(全会一致で龍道……なんてのは思考停止の極論リィ。だがイモォ、私達の時代では其れ以上の模索は出来ないリィ)
 例えわかっていてもイモールは思考停止するしか道はなかった。この後に三名はネロリモ船長に案内される形で船長室にてピースケイスの戦いぶりを観戦する事に。其の観戦内容は回顧録にて説明が為される。
『--正直、巨大一角族だと思われていた頃からの疑問が解消される気分だ。
ピースケイスは最早やり方が銀河連合とどう変わりあるのかを聞きたい。幾ら銀河連合が
如何しようもない存在であろうともあそこまでやる物なのか。
 出来る限り詳しく説明すると増援としてやって来たのは侵入した鳥型だけじゃない。
海豚型、鮫型、鮪型等々総勢十八体。確かにベアッ土君が足を上げたくなる数だ。そんな
大群にピースケイスが用いた戦法は全面の尖った先端。一角族と誤った認識の元である
あの先端だ。あれを海豚速度二に近い速さで繰り出せば如何なるか? とてもじゃない
が、同じ生命がこれを平気でやるのは見てられない。途中で目を背けた。だが、当の彼は
笑みを浮かべる。討伐に酔っているではないか。これが遥か明日の生命のあるべき姿
なのか?
 この心情は私だけじゃない。闘争本能の塊である筈のベアッ土君もその惨状を見て
思わず何かを吐き出しそうな気分に成ったそうだ。カエルヒコ君は私と見解を同じく
する。其れ位に私はこの頃から徐々にネロリモ船長に対して友好的な間柄を築ける気が
しないと感じ始める。
 其れでもまだピースケイスへの関心は薄れない。薄れない以上は出て行く事を考えたり
はしなかった。けれども--』

 二月八日午前五時十二分三十七秒。
 場所は不明。三名は外部船員室にて目覚める。
 だが、今日は今までと違う。何が異なるかは三名の会話で明らかに成ってゆく。
「お早う……ウウウ、寒イッテ!」
「お早うッケロ、ベアッ土さん……うへっくしょんッケロ!」
「お早うイモォ、カエルヒコ君にベアッ土君リィ。確かに寒いなリィ」
 寒さを感じ始めたのと同時に扉が強くそして暴れるように開く--齢十九に成ったばかりの鳥人族の少年が怖い表情で三名に目で指示を送る!
「この歳でイモォ、わかったリィ!」少年の言いたい事を理解したイモールは二名に合図を送る。「二名共直ぐに少年の後を追うぞリィ!」
「あれでわかるのカヨウ!」
 其れがイモール・アーロニク先生の偉大な所ですっケロ--と褒めるカエルヒコ。
 三名は鳥人族の少年に案内される形で本来は立ち入りが許されない機関室までやって来た。その内部を見て三者三様の反応を見せる。其れから三名は其処に立つネロリモ船長の指示に従い、直ぐに作業を始める。その内容も敢えて回顧録に記す。但し、今までと比べて簡潔に。
『--一の週より前の銀河連合の追撃隊はピースケイスを自分達の用意した氷山海域
まで誘き寄せるための作戦だった。其の結果、奴等は予定通りにピースケイスを内部から
攻め立てる事に成功する。最初の布陣が氷山固めでスクリューを停止させる事とは。
しかもこの氷は只の氷ではない。銀河連合其のモノの氷。氷型に依る圧壊戦術に依って
ネロリモ船長は加勢を余儀なくされた。結果はベアッ土君の大奮闘もあって機関部を占拠
した氷型の除去に成功した。
 だが--』

 午前八時一分十三秒。
 突然、氷型の気化と共に隙間を縫うように蛸族のような触手が鳥人族の少年の左足を掴んで離さない……「うわあああ、誰かー誰かあ!」少年は命の危機に反応して訛りを出して助けを呼んだ--これには三名も驚く!
「ああっケロ、僕よりも年下そうな少年がッケロ!」
「俺様が……畜生ガアイ!」後少し届かずに左前脚を丸めて硬い床を叩くベアッ土。「体の痛みより痛いじゃないかああよおおウガア!」
「オオ……オオオオウ!」ネロリモ船長は我を忘れて分離包丁を右手に少年を助けるべく飛び込む。「もう……死なせないぞおおおう!」
「ネロリモ船長が凍える海に飛び込んだッケロ!」
「あの船長がイモォ、又しても取り乱したリィ!」
「何……わかっタアゾ」ベアッ土は自らの勘で残った船員達が何を言いたいのかを理解した。「先生とカエルヒコは今直ぐ、副船長と思われる少し白と黒の髭を生やシィタ奴の後に付いて来い!」
「えッケロ、ベアッ土さんの--」
 わかったイモォ、ベアッ土君を信じるリィ--イモールは直ぐ様に従う!
「先生ッケロ!」
「今は一刻を争うイモォ、カエルヒコ君リィ」
「……わかりましたっケロ」
 三名は齢七十八にして十一の月と八日目に成る一目いちめ族の中年の後を付いていき、操舵室と思われる場所まで案内された。
 其処で三名はネロリモ船長が極冠の海中にて縦横無尽に分離包丁を振舞って巨大な蛸型を単機で仕留める様子を観戦した。如何して其れが可能なのかはこれも又、説明を省く。だが、三名はネロリモ船長が次元の違う手練れである事を認める……しかし--
少年は……右翼だけ残してイモォ、何という事だリィ!
 こんな事なら何も残さずに姿を消す方がどれだけ希み望まれるか……だがイモォ、現実は情というモノを知らないリィ!)
 どれだけ次元の違う手練れでも助けられない命は存在する。ネロリモ船長は中に入るなり、少年の亡骸を抱きしめて一名だけ自室に戻ってゆく--音が漏れなくとも中で号泣するのがわかる程悲しみに満ちた背中を見せて!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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