FC2ブログ

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(六)

 十二月五十七日午後二時十五分三十二秒。
 場所は不明。ピースケイスは既に半分まで顔を出し、空気の入れ替えを始める。
 イモール、カエルヒコ、其れからベアッ土は約五の月ぶりに外の空気を取り込む。
「生き返るゼエイ」
「意外ですねっケロ。まさかネロリモ船長が許可を取って下さるなんてッケロ」
「其れ以前にピースケイスはとある無者島に発着リィ。しかも降りても安全な浅瀬ときた物だリィ」
「お前らは元ヨォリ、元々でかい俺様はこのくらいの浅瀬で溺れたりしねえゼエイ」
「こうゆう時に陸も水も両方扱える両生種族ってのは便利ですねっケロ」
 だがイモォ、私たち両生種族は塩分濃度の濃い水辺で活動出来るように構成されていないリィ--と海中種族との壁を伝えるイモールだった。
(其れにしてもネロリモ船長に依るとここは私達の国に属しない土地の一つだと言っていたが……熱いなイモォ、其れに湿っているリィ。これだけの蒸し暑さは幾ら夏の季節であろうとも体に堪えるリィ。特にここでずっと遊べば一気に肌黒く成るぞリィ!)
 イモールは既にネロリモ船長から日が沈む頃合に成ると急いでピースケイスに戻る事を伝えられる。理由を尋ねると何でも夕の方に成ると謎の木船がこの島にやって来て其処で取れる椰子の実等を採って行く為。その際にピースケイスの存在を知られると都合の良くない事も起こるのだとか。事実、存在を知ったが為にイモール等三名はピースケイスの外部船員として搭乗する羽目に成った。ネロリモ船長は出来るだけこの時代に生きる生命に知られたくないように水の惑星中の海を泳ぎ回る。
 だが、一つの疑問も浮かぶ。
(じゃあ何故私達を招き入れざる負えない原因と成った幾つかの事件に首を突っ込むリィ? 正直イモォ、これが気に成って仕方がないリィ)
 船内でずっと気に成る事があった。事実、イモールはネロリモ船長と対話する時間に必ずその事を計七度も尋ねた。いずれも巧妙に話を逸らされた為に真実を知るに至らない。
 そんな事を考える中でカエルヒコ達の進んだ方角より何か騒がしく成る。イモールが駆け付けると其処で見たのは何と計二十八体もの銀河連合の群れ。構成は犬型五体、猿型七体、雉型十体、そして鬼型六体と流石に森の扱いに自信のあるベアッ土でも一目見ただけで四足順序良く一歩下がる程。
「これは逸れ銀河連合かリィ。選りにも選ってこのモノ達が相手だとベアッ土でも難しいリィ!」
「流石に鬼族の怪力の前では熊族も獅子族同様に弱音を吐いてシイマう」
「直ぐにピースケイスに戻りましょうっケロ!」
 その必要……はない--その声と共にネロリモ船長は馬族の下半身を縦横無尽に扱いながらも人族の器用な上半身を振舞って左手に構える肩から爪先まで伸ばした包丁のような物で先頭の犬型を縦一文字に両断!
「凄い切れ味ダアゼ!」
「あッケロ、危ないッケロ!」
 カエルヒコの言葉通りに上空から雉型三体が降下しながら両足に持った鳥類用鋭棒に良く似たモノでネロリモ船長を串刺しにしようと試みる。
「フム……見よ、分離包丁の凄みを!」
 何とネロリモ船長の包丁は刃が七つに分離したかと思えばそのまま左側の雉型の首を刎ねながら右薙ぎに三体纏めて瞬倒した!
「ああ、あの包丁は隙間々々に何かで固定してから伸びていったゾオウ!」
「蛇族の腹見たいだリィ」
「ああっケロ、其の侭船長が突撃して刃に一つも刃毀れを起こさずにッケロ!」
「そ、そんな包丁が、あったら、あっタアラ……銛師はもう仕事を畳むしかネエイ!」
 いやっケロ、畳まないで下さいよっケロ--と慰めるカエルヒコ。
(あっという間にイモォ、数的な問題を何でも分離包丁とやらが解決したぞリィ。だがイモォ、あれは決して便利な包丁ではないリィ)
 分離包丁の特性を一目で理解するイモール。頭脳労働者の理論に照らし合わせるとあれは確かに素晴らしいが、今の時代まで如何して誰もあのような包丁を作らなかったのかを推理すれば答えは自ずと判明する。その答えは気が向けばイモールの回顧録で紹介。
「さて……刃毀れを起こさない理由は一重に龍道の……龍道の特殊性に依る所が大きい」
龍道? 何ダアイ、そりゃあ?」
「僕だってわかりかねますっケロ、ネロリモ船長ッケロ?」
「確かピースケイスの分類は『潜水龍道隠密突撃艦』と聞きましたねリィ。もしやピースケイスには其の龍道と関係しているのですか?」
「ああそうだ……だが、今は龍道と分離包丁の特性よりも先に……椰子の実などの回収に当たらないといけない」
「何ダヨォ、まったく肝心な事は直ぐ話を逸らす下半身馬野郎メエィ!」
 人馬族と……呼ぶように--ネロリモ船長は如何なる事でも冷静に答える。
『--其れから私達は急いで椰子の実を回収してゆく。意外と作業は難航する。この島
にある木々が高いのだよ。成人体型にして六十六ほどあると上るのにも苦労する。だが、
椰子というのは身の付いた所まで辿り着くと抜き取る作業は意外に楽。抜いてから
落とせば良いのだから。何しろ、椰子の実の殻は頑丈で余程高い所から落とさない限りは
突然割れたりする事は稀。但し、注意する必要があるのは落とす際に付近に生命が
立たない事。頭に椰子の実が当たって惨事でも起こったらどれだけ罪を償えば良いか
わかった話じゃないからね。まあその可能性は少ないがね。
 次はこの島には弾力液と呼ばれる白い液体を抽出出来る木も生えている訳だよ。弾力液
とは要は伸ばせば元に戻る力で元の長さに戻る液体の事だよ。これが意外と重宝されて
いて、工業素材の国内売り上げの一割も占める訳さ。まあ統計は適当に述べただけ
なので余り信じないように。兎に角、弾力液の木々は椰子の実が成る木の更に奥深くに
あった。其処まで辿り着くのが大変極まる。何しろ、逸れ銀河連合の集落が其処を守り
通している物だから如何しようもない。其処でネロリモ船長は船員である黒羽族の中年に
指示を出して全身を透明状態にする液体を塗り付けた訳だよ。原理はまあ、この時代では
如何考察しても難しいので匙を投げる。兎に角、五名程の船員と私とカエルヒコ、
其れからあの銛師の全身を塗りたくった。流石に銛師は塗られる前は雄の意地を張って
いたが何時の間にか仲良く成ったカエルヒコにお願いされると渋々従ったな。全く、何時
仲良く成ったのだろうか?
 そうして私達は弾力液のある木々を求めて集落を通過した。余計な戦いは長期的な視点
に立つと状況を芳しく無くならせるだけだからだろう。其れから私達はネロリモ船長に
手足渡しされた特殊な抽出機で弾力液を抽出してゆく。作業は昼の三の時少し過ぎた所
で終わった。後は再び集落を通過して無事にピースケイスに辿り着けば済む。戻る前に
ネロリモ船長は不思議な行動をしたな。其れは当初、私も含めて三名共気にしなかった。
遥か明日の世界で良くやる儀式の一つだと思って。
 話を戻して通過する途中で異常事態が発生。カエルヒコに塗った透明化の液体が
十分じゃなかった為に逸れ銀河連合が集落を抜けて直ぐに鋭棒や包丁や物部刃の
ようなモノを投擲し始めた。幸い、最初の五打を浴びずに済んだお陰で私達は走って
逃げる事が出来たな。奴等はピースケイスに乗り込んだ私達でも尚も食い付いて来た。
中には開く何かを見つけようと躍起になる頭脳面に優れたモノもいたが、遥か明日の時代
の代物に今の時代の私達が匙を投げる用に彼らが簡単に結論へと辿り着ける筈がない。
依ってピースケイスが完全に水没する頃にはもう逸れ銀河連合の追手は一体も
居なかったな。
 其れじゃあ次の話に移ろう。次は--』

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十一年一月二日午前五時三十一分四十一秒。

 場所は不明。イモール達は外部船員室にて待機中。
(今で七の月の目に入ったなリィ。本当にネロリモ船長は私達を一生ピースケイスの中で過ごさせる気なのかリィ? だとすれば益々イモォ、ネロリモ船長の目的が謎のままだリィ)
 其れでもまだ心の何処かでピースケイスとの旅を楽しむ己が居た。イモールはまだ旅を続けようと考える。その理由は如何してなのか? 答えは--

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR