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一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(四)

 未明。
 謎の人馬族と思われる中年に促されるように中に入ると其処には透明の床が広がる。床の上には一台の調律線鍵盤台が一つ。イモールから見て右横に全部で五段もある本棚、左横に何故か硝子窓のような壁が広がる。しかも望遠鏡も立てられる。最後は鍵盤台の奥にある机と寝台。寝台の上に掛けられる布団が分厚いのは人馬族である為か?
 何れにせよ、今の時代ではどんな技術体系を持ったらこのような物が作られるのかを想像し続けるイモール。それが今の時代の生命にとって苦痛と感じたのか、人馬型は話し掛ける。
「頭で幾ら論じても……徒労に終わる物は終わるのです、先生」
「済まないがイモォ、あなたの名前は何と言いますかリィ?」
「質問ですね……私はアウストラネロリモ」
「其れは真の名前なのですかリィ?」
 直ぐに通り名だと気付きましたね……先生--アウストラネロリモは直ぐに返答する。
「訛りを隠すのだから本当の名前まで隠さないなんて筋の通らない事があるかリィ」
「そうですね……敢えて先生を始めとした三名は……私の事をアウストラネロリモとお呼び下さい」
「その狙いは何ですかリィ?」
「其れも質問ですね……わかりました。狙いは……特にありません」
「そうですかリィ」
「では私から……質問します。貴方の御名前は何と呼べば宜しいのですか?」
「自己紹介ですねイモォ?」
「質問には……答えで返して下さい」
「わかりましたリィ。私は気を失った当時は齢三十二にして十の月と二日目に成る仁徳井守族のイモール・アーロニクと申しますリィ」
「えっと……どれが名前ですか?」
「イモールとお呼び下さいイモォ、アウストラネロリモさんリィ」
「わかりました……では少しお願いしたい事があります」
「何でしょうかリィ?」
 私の事は……アウストラネロリモの他に……ネロリモ船長と呼んでも構いません--とアウストラネロリモは更なる呼称も要求する。
「わかりましたイモォ、ネロリも船長リィ」
 其れから会話は始まる。其れについては回顧録で紹介するとしよう。
『--彼は出身さえも語らない人馬族と名乗る生命だった。何故語らないかは私には
どう推理しても最後までわからない事だらけの話だ。其れだけネロリモ船長という雄は
得体も知れない生命だった。
 だが、判明した幾つかの事を上げよう。これは彼の部屋で初めて質疑応答する内に
判明した事柄だ。載せても問題はない。その内容は時々段落を変えて説明してしまう。
少々、窮屈な話になる事を御容赦下さい。
 先ずはネロリモ船長が齢八十二の大高齢である事。腰砕けてなどいない。本当に
そうなのである。選者も真っ青な程に高齢の御方だ。だが、当のネロリモ船長はこれ位は
まだ若造の領域だと主張する。基本、彼の言い分では一般生命は平均百歳まで生きる
そうだ。こちらの常識よりも二の倍数も長い。其れでも私はしつこく聞き返した。流石に
三回目ともなればやや苛立ちが目立ち始めたと思って其処で質問を止めた私。
 次に尋ねたのはこの船についてだ。其処で判明したのはこの船は何でも
<潜水龍道隠密突撃艦>という枠組みに入り、名称は<ピースケイス>と呼ぶそうだ。
しかも動力は雲力と呼ばれる雲の力を放出して動くそうだ。其れには幾つか質問したい
気持ちに駆られたな。
 例えば<潜水龍道隠密突撃艦>とは何なのか? 他には<ピースケイス>の意味や、
雲の力とは何なのか? だが、どれも巧妙に話を摩り替えられた。余程、私達には
知られたくない何かがあるのだろう。そうゆう訳で私はこれについてはこれ以上尋ね
なかった。
 次はこの部屋にある幾つかの道具についてだ。一つ目が調律線鍵盤台、二つ目が本棚
の売り尽くし販売の意味、広がる硝子窓の壁の意味、其れから透明の床だ。
 一つ目は何でも鍵盤に少し力を乗せるだけで音が出る楽器との事。しかも鍵盤台の上に
広げられる紙に記された蛙族の幼年期時代の姿に良く似た記号を頼りに鍵盤を選んで
引くと歌に成るそうだ。私はネロリモ船長にお願いして演奏してみたさ。すると本当に歌
と成って部屋中に広がったな。もっとも演奏の才能に恵まれない私ではネロリモ船長
みたいに凄い演奏は出来まい事をここに告白する。
 二つ目は全部で本棚五段十二列に並べられた物は何か? 試しに抜いてみたら何と
鉄のような感触のする何かを取り出してしまった。しかも突然、四角の枠の中から何かが
飛び出した。恐くなって私は元に戻したまま以降は取り出すのを止めたな。あんな物は
許容する程若くはなかった。あれはまだ全生命にとって早過ぎる産物だ。
 三つ目は硝子窓の壁。あれは何でも外に何か迫った時の為に船長室から確認出来る物
以外でも発揮されるそうだ。其れについては後程紹介する。
 最後は床だな。まるで生命の内臓を見せられるかのように船の構造を見せ付けられる。
まるで用を足したのにわざわざ出した物を見せられた気分だ。私はこれについては例え
尋ねたとしてもその詳細をここに記すにはまだ全生命には早い物だと判断して紹介を断念
する。
 では最後に紹介するのが船員達も何者なのか? 其れについてははっきりとした答えは
返ってこなかった以上は皆まで紹介しない事だけを伝える。ただ紹介出来る範囲で言う
なら全員遥か明日の時代の生命。ネロリモ船長と同じく初めて出会ったあの青年は黒羽族
と呼ばれる種族だそうだ。正直、蝙蝠族の羽を生やした人族だなんて一体どうすれば其れ
が可能なのか知りたい位だ。
 他には白翼を生やした天使族、下半身が蛇族のような蛇足族、足が魚類の其れである
人魚族、下半身と両肩から爪先まで鳥類の鳥人とりびと族、小柄で耳だけが巨大な巨耳おおみみ族とキリ
がない。
 まだまだ全生命体には早過ぎる情報ばかりだ。流石に好奇心旺盛な私も圧倒されると
諦めざる負えない。其れだけここ<ピースケイス>は知の宝庫と呼んでも過言ではない。
其れから--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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