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一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(三)

 未明。
 場所は不明。
 イモールは目覚める。すると其処には助手のカエルヒコとたまたま組まされたベアッ土が座っていた。特に人族に肉体が近いベアッ土は座るのも窮屈な様子。
(ここはイモォ、何処だリィ? カエルヒコとベアッ土が居るのはわかるがイモォ、だがこの暗さを表現する黒い壁の数々では何と想像すれば良いかわからないリィ。ここは果たして想念の海なのかイモォ、其れとも秘境の一部なのかリィ?
 ンン……揺れるリィ!)
 イモールは何度も乗船した経験の持ち主。例え揺れ幅が少ない船であろうとも僅かな足元の揺らめきを逃さない。
「あッケロ、気が付きましたッケロ!」
「てっキイリ先生が死んだかと思ったぞ!」
「二名とも無事で何よりだリィ」
「あッケロ、最初は何処から説明すれば良いかわかりませんがッケロ」
 んなもん簡単だ……俺様達は深海野郎共に閉じ込められタアヨ--ベアッ土は明確に答える生命だった。
「明確過ぎますっケロ、ベアッ土さんッケロ!」
 いやイモォ、今ので十分にわかったリィ--逆にイモールはベアッ土の明確さに感謝する。
「でっけろ、でも時と場合によるでしょうっケロ?」
「だがイモォ、曖昧に答えるのは却って混乱を招くリィ。だったら先に事実から述べた方が相手は後で巨大な衝撃を受けるよりもまだましだリィ」
「全くコオレだから学者共の話し方は回りくどいっテェノ!」
「其れは同感しますっケロ」
 イモールはここから誰かが中に入って来るまで次のように推理する。それは正しかろうと誤ろうとも一向に構わない。
(ここは確実にあの一角族の中だろうリィ。何故か……其れはあの一角族には解明されない謎があったリィ。其れが鯨型を一撃で仕留めておきながらも反動も少ないまま海域を去る場面が多々あったリィ。幾ら生命の中には頑丈な部類の種族が存在しようとも其れは有り得ないリィ。其れに深海種族ほどイモォ、深海で生きるために身体構造に多大なる変化が訪れようとも圧力の急激な変化は内部構造を脆くしてみせるリィ。何故なら圧力とは其れだけ頑丈さではどうにも成らない空気の問題なのだからリィ。特に真空の世界は其れだけ深いのだからリィ。
 さてイモォ、では私達は一角族の中にいるリィ。じゃあ一角族は秘境なのかリィ? 答えはそうじゃないリィ。答えは……とある潜水が可能な船の中にいるといえば正解なのかリィ? だがイモォ、待って欲しいリィ!
 潜水が出来る船なんて外部構造は何で出来ているリィ? 圧力の問題は何処へ行ったリィ? 何れにせよイモォ、私の推理は間違ってくれると有り難いリィ。あっていれば潔く認めるしかないリィ!)
 そう、前者なら受け入れ難い新発見として覚悟する。後者なら杞の地に依ると憂いとして、胸が空く思いと成る。だが、その答えは直ぐに披露される事と成る。
「入って来タアナ、俺様達をここから出せえエイ!」
「……」齢五十七にして十の月と三日目に成る黒羽を生やした人族らしき青年は何も答えない。「……」
「……」齢八十二にして九の月と十八日目に成る明らかに高齢の筈なのに老年に差し掛かる上半身人族だが、下半身が馬族のような中年は前に出るも何も答える素振りはしない。「……」
「なイモォ、何だリィ!」初めて見たイモールは驚く様子。「貴方達のような生命が深海にはたくさん居るのですかリィ!」
「……」青年は中年に何か手話のような通話を行う。「……」
「……」一方の中年は瞼の開閉だけで青年を下がらせる。「……」
 イモールは貝族の会話法に精通する為に解読しようと試みたが--
「全然違うリィ。あの下半身馬族の中年がやって見せた会話は私の知る開閉式会話じゃないリィ!」
「ええッケロ、先生でもわからないのですかッケロ!」
「こリャア御足上げだな!」
「……」只一名だけ残った中年は右手でイモールだけ指差す。「……」
「えイモォ、私を指名するのですかリィ?」
「……」中年は首を縦に振る。「……」
「きっケロ、気を付けて下さいッケロ!」
「きっとあいつは外に放り出す気ダアゼ!」
 大丈夫だイモォ、彼らは私達と同じ一般生命だ……第一に剥き出していないじゃないかリィ--剥き出さなければ銀河連合である可能性はないと断言するイモール。
「……」まるで『その通りです』と頷くかのように中年は首を縦に振った。「……」
「では暫く其処で大人しく待っていてくれイモォ、二名共リィ!」
 イモールは中年の後に付いて行くように黒壁の部屋から出てゆく。
『--其れが彼との出会いだった。彼は遥か明日の時代よりやって来た生命であるかの
ようだった。初対面の私はそう感じた。だが、驚くのはまだ早い。
 次が私にとっても読者の皆さんにとっても驚きの数々の始まりだ。其れは--』

 未明。恐らく午後八時二十八分頃だとイモールは推測する。
 イモールは階段を二回も登って更に遥か奥にある白い扉まで歩き続ける。四本足で尚且つ直ぐ体温が変化しやすい両性種族の繊細な肉体に気遣いをしながらも。その上で余裕が生まれると扉に到着するまでイモールは次のように思考する。
(其れにしても不思議な肉体だリィ。上半身は人族でイモォ、下半身は馬族リィ。しかも正体もわからぬ数字だけが羅列する廊下の壁やら何やらと……これは前に何処かで聞かされた話があったなリィ。生憎イモォ、興味なかったので聞き流してしまった事柄ではあるリィ。
 思い出すならばそうだなあイモォ、やはりとある山椒魚族の少年が青年に至るまでの話だったなリィ。彼は其処で何処にも存在しない種族と初めて出会ったと回顧録で伝えたそうだリィ。詳しい話は彼に関する話を参照してくれリィ。多分イモォ、この生命は其の遥か明日から来たのだろうリィ。でないと--)
「到着しました……何か?」
 ウワアアアリィ--突然話す物だからイモールは天井まで飛び上がるかのように驚いた!
「無理為さない……貴方は変温でしょう?」
「両性種族の事を御存知なのですかリィ?」
「御存知も何も……私に知らない事はないと自分に言い聞かせられる……物でしてね」
「それがあなたの訛りですかリィ?」
「いえ、人馬族の訛りは……もっと別ですよ」
「ではイモォ、敢えて自らを隠してそのような訛りを為さるのですかリィ?」
 其れは……中でゆっくり話しましょうか、先生--と人馬族を名乗る中年は扉を開けて体を中へと潜り込ませる。
 イモールは息を呑んでから後に続いてゆく……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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