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一兆年の夜 第九十一話 必死の逃亡者達(五)

 十一月二十七日午前六時一分一秒。
 場所は不明。其処は試験管の中の世界。
 星の中では有り得ない月の位置。月はお日様の光に浴び方によって形を変え、少しずつ位置を変えて動き続ける。だが、アンティラとラク一が流れ着いた世界には其れがない。そこで二名は気付いた。ここは水の惑星の上ではない。だからこそ幾ら方位通りに進んでもコルギ村に辿り着く筈がない。
 現在、二名は再び誰も住まない神々だけが残された村に到着して一夜を過ごした。其れから朝の光。お日様も又、不自然な角度のまま二名を照らす。
(ァアここは正に試験管の中の世界だ。ダァあの光で俺達は見知らぬ世界に跳ばされてしまった。ウゥラク一の話も聞かずに大人しく自決して居れば良かったのだあ。ソォすればこんな目に遭わずに済んだのに!)
 アンティラは悔いるように目覚めの朝を迎える。彼は睡眠が足りない訳ではないのに目元に隈が出来る。生きる意味もないのに只の生命の頼み事を聞いただけで見知らぬ世界に跳ばされてしまった。其れだけではなく、自決用の縄まで無くしてしまった。幾ら栄養価の高い仙人掌が直ぐ其処に生えていても変えるべき場所に戻れずに一生を過ごすのは心に堪えてしまう。
 ふわあああ、良い朝だじょお--一方のラク一は前向きの様子。
「ウゥお前は父親に似てどうして呑気で居られるのだよ!」とラク一の巨大な鼻に乗っかり、何度も足蹴するアンティラ。「ガァ俺達は別の惑星に跳ばされたのだぞ、わかってるのかああ!」
「まあまあじゃあ。其れに心配は要らないじょお」
「ナァにが心配要らないのだよ。ンィ俺達は確かに食糧に困る事はない。ンゥ砂漠を彷徨っても仙人掌さえあれば生きられる!」と言いつつも反対の事も口にするアンティラ。「ソォれでも見ず知らずの場所に跳ばされ、帰るべき場所に戻れない事は精神的に堪えるのだぞおおう!」
 イッデ、ま、まあ……そうだねじぇえ--鼻の痛みを訴えてアンティラを降ろしたラク一。
 其れから二名はもう一つの村の探索を始める。建物の構造や配置、そして広場の有無の違いがあれどここもまた秘境ではない事に気付く二名。やはり空気の問題、秘境にはなくてはならない説明の付かない彫像の数々がこの村にもない。
「これはまるであの話に似ているじゅう」
「ァアの話?」
「約二百六十の年より前に起こった東海洋藤原で起こった事件の事じゃあ」
「ァアああ、あれか。ンェ確か銀河連合の体内に入り、無事に生還したというお話だったな」
「ひょっとしてここは銀河連合の内部じゃないかなじょお?」
「ンァな馬か鹿な事が……あ!」アンティラは其処で足下の土を掘り始める。「ァアあああああ!」
 お、落ち着いて下さいイイいじい--アンティラを咥えて止めようとするラク一。
「ブゥぶへえ、早まるな!」
「一体何をしているのですかじょお!」
 ァワかったぞおおう、この世界の正体がアアア--天に向かってアンティラは叫ぶ!
 其れからアンティラは語り始める。最もこれはあくまで約二百六十の年より前に起こった事件と同質ならばを前提とした推理であり、真実には届かない説。
 兎に角、アンティラが提唱するのはここは銀河連合の体内。しかもずっと時間だけが過ぎてゆくような感覚に陥り、遠回りをされて来たのは銀河連合の体内では肉体が小さく成るだけでなく、時間の流れさえも変質する為。実際の経過時間は二名が感じる物よりもほんの一瞬の出来事に過ぎない。其れだけじゃない。この世界では二名の脳内と連結する事に依って世界が広がっているような錯覚に陥らせる。結果として狭い範囲なのにアンティラとラク一の記憶を基にして構築されゆき、世界は作られ続ける。だからこそお日様もお月様も実際とは異なる動きを見せる。これがアンティラの提唱する世界の真実。
「だが、少し納得いかない事が一つあるじゅう」
「ァア質問してみろ!」
「仙人掌の謎はじゃあ?」
 カェ其れはオイオイ納得いく理由を考えておく--とアンティラは顔を逸らした。
(ァウ仙人掌は確かに謎だな。ゥエ仙人掌は書物の中でしか知らない。シィなのに俺とラク一の記憶を基にしたなら仙人掌があるのは自然じゃない!
 キゥそもそも仙人掌が生える程の砂漠の環境とは一体何の要因があって出来上がるのだ!)
 砂漠が出来る理由をアンティラは知っている。其れは森林の過剰な伐採と降水量の少なさ、そして高止まりを知らない気温の高さ。それらが結んで大地は砂の海と化す。砂漠とは雨水を知らない大地が生む物。だが、其れを悲しむべきではない。結果として水の有難さを思い知り、仙人掌と呼ばれる副産物を産み出す。
 だが、プロタゴラス大陸で暮らすアンティラとラク一にとっては仙人掌は珍品その物。寧ろ仙人掌の数よりも水湧き湖の数の方が多い程。それだけ仙人掌が生える地域は見た事がない。ならば仙人掌の謎は果たして……だが、その謎を解明する前に再び蟻地獄型が二名の前に現れる--土を大量に巻き上げながら地面の下より這い出て来るように!
「もう驚かないし、恐怖もしないじょお!」
「ァアだが、油を断つのじゃないぞ。ヤァつは自らの肉体の小柄さを生かして頸動脈を狙う筈だ!」
 流石に三度も出会えば恐怖も和らいで寧ろ勇ましさが前に出る。そんな勇ましい巨漢も年長者にして冷静で小柄で生命の言う事は素直に聞く。
「わかっているさ。なので何時も通り--」
「ィイつも通り?」
 逃げますじょおおおお--少し毛が生えただけの勇ましさであったラク一!
(ナァラク一が成長したと思っていた俺が甘かった!)
 流石のアンティラもラク一の肉体に見合わない臆した病を治療する術を探すのを諦める程。二名は地面を掘って追撃する蟻地獄型から逃れるべく北北東の方角より村を出て最後の対面を果たすべく熱砂にしてハリセンボンたちが見渡す砂の上で最後の逃亡劇を始める……
 現在、逃亡一の週の目……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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