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一兆年の夜 第九十一話 必死の逃亡者達(二)

 十一月二十一日午前五時五十九分三十二秒。
 場所はピアス県第四南西地区。
 其処にある五番目に小さな建物から何とか出てゆく生命が居る。彼の名前は時山ラク一……物語の主人公アンティラ・ピオールの自決を止めた生命。なのに住まうのは駱駝族にとって潜るのが大変な建物。入る度に屈まなければ成らないその構造は扉を潜る程度の存在する幅さえも気遣う始末。
「ンァそんな小さな建物に住まうのか? ゥグ大変じゃないか?」
「潜ってから荷物を口繰り寄せるじょお。こんなのが大変じゃなくて何が大変じゃあ」
「ァアまあそうだな。ィイラク殿さんも長年そんな事を口走っていたが……実物を見るのは初めてだ」
「幸い、瘤の大きさも駱駝族の屈強な肉体の割には意外と細いのじゃあ」
「ァアわかった。ォソれよりも良くも一の日も待たせたな。ウゥつまらない事ならこの場で首を括ってやるからな!」
「まあまあ、ではそろそろ行きましょうじい」
 ドォこへ行く--何も知らないアンティラは尋ねる。
 ラク一が行くのはコルギ市。しかも奪還して今年で三十の年を迎える。其処へ何しに向かうのか? それ以前に如何してアンティラを連れて向かうのか?
「実はおらが運ぶ中にはピアス饅頭があるじぇえ」
「ァアピアス饅頭が如何した? エェピオール社の定番商品を如何してコルギ市にまで広げる?」
「知らないのじょお? 実はピアス饅頭は社内でもピアス以外に広げたいそうだじょお」
「ァア良くないに決まっている。ガァ自社の饅頭は地方名産として売るもんだ。ダァ誰が外に売って堪るか!」
「でも社長さんはもう社長じゃないじい」
 ゥウぬぬぬ、ドラール・ジニンめ--後継者に選んだドラールは約束に背いてピアス以外でも売る方針を固めた模様!
 アンティラはピオール社に向かおうとしたが、ラク一の巨体が進路を遮る--仮に擦り抜けようとも持ち上げて逃げられないようにする。
「オォのれ、ラク一!」
「旅に出ますじゃあ。ピアス饅頭がコルギ市でも通用する事を証明する為だじぃ」
 ァア別に証明したくなあああい--旅は道連れの如くアンティラはラク一に運ばれてゆく!
(ァアこいつは何を考えている。ガァピアス饅頭を売りつける為にわざわざ俺を連れてゆく理由が見付からない。イィ見つかる訳がない!
 ナァ何を考えているのだああ!)

 午後七時十八分二十一秒。
 場所はヒッピア砂漠。
 螺旋の砂の前で二名は夜を明かそうか議論を戦わせる!
「ァア螺旋の砂の前で大人しくしている場合じゃない!」
「だが、ここで動いたら呑まれてしまうじょお!」
「ァアだが、螺旋の砂同士が急接近する前に中央を渡り切れば十分に乗り切れる!」
「無茶じゃあ。引力は満ち潮だけじゃなく、砂の上でも発生するじい!」
「ナァ何だと!」
「其れよりもアンティラさんじゃあ」
「ナァ何だ……って、螺旋の砂の上を疾走する奴は何だ?」
 二名は其れが内臓まで剥き出ししている事に気付く。例え目が遠くを捉えるのも難しい年齢に成ろうとも一瞬で皮膚に何も被さっていないモノが何の存在なのかを把握する事は簡単--恐らく形は薄翅蜉蝣薄翅蜉蝣うすばかげろうの幼虫である蟻地獄型と思われる。
 二名は来た道を戻るように走ってゆく--途中アンティラはラク一の瘤に乗っかって安全に避難してゆく!
 だが、二名を捉えた蟻地獄型は逃がさない--これより短くも長い逃亡劇が始まる!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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