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一兆年の夜 第八十九話 気球に乗って五日(五)

 十一月五日午前八時零分二秒。
 場所は未定。
 残り一の時掛けて地上を目指す三名。その余りにも余裕のない飛行を前にして再びスズ原とフク山は飛行から二の日より後に始めたあの会話を思い出す。
「じゅ、重要機関で再び思い出すが……良いかな?」
「ああ、良い所で話が終わああああったからな」
「ねえねえ、話って--」
 お前は、お前は周囲の警戒だけに務めろおお--と話がややこしく成るワッシャルだけ参加出来ない。
 スズ原に依ると昨の日の銀河連合との戦いで気付いたのは足りない部分は技と術と経験がモノを言うとの事。技は力が足りないと感じた時にそれを埋める為の知恵、術は技に磨きを掛ける為の行動、そして経験は踏み出す心を養う為の背骨。正に均衡点に近付く為に鷹混合型がやって見せた重心の乱れを補う戦いの歴史。鷹混合型との圧倒的な差を埋める為の弱き者達が見せる心の光と誰かを守る為に自ら率先して何かを捨てる度胸。三名がこうして生きているのは鷹混合型を倒す為に戦闘能力の差を埋める為の燃料を使う事への術と其れに踏み切れる度胸があった事の表れ。何とも偏るのがどれだけ危ういかを実感するか。
「あ、もう無くなりました。ああ、又寒く成るぞ!」
「いいいいや、雲下へ入いいいいいった。そこからは高度を下げええええる毎に高山で生じる様々な病は多少マシに成るぞ!」
 気温だって、気温だってまだましに成るってのう--とスズ原はフク山に乗じるように安心させた!
(問題は、問題は地上の方じゃな。火を、火を起こせなくなったからって空気まで無くなる事はない。け、けれども過剰な空気の調整がわしらには課題と成るのう。さあ、さあ如何する? げ、激突を避ける為に敢えてわしは空中種族だけを連れて行ったのじゃ。いざと、いざという時は飛んで避難が出来るからのう。ほぅ、他の種族では物に頼らないと着地も出来んからのう。ウウ、ううむ……む?)
「おおおおうい、地上に打ち付けられていったんじゃああああないのか?」
 ぎ、ぎ、ぎんぎんじゃなくて、ほら、銀河連合って言いたんだ……言った、言っちゃったああ--噛みながらもワッシャルはわかった。
「あいつ……あいつは両翼に備えていた望遠砲のような物を外して更には機動力を!」
「拙いいいいなあ、もう俺達には炭のおおおおような物もないぞ。あのままあああでは後二の分で--」
 じゃあ、じゃあわしが出てやろうか……そろそろ地上で眠る日も近いからのう--もう直ぐ地上という事もあり、スズ原は命を賭して気球から一気に翼を広げて鷹混合型と対峙してゆく!
「だ、駄目だああああ。あんたではあれに勝てない事は理屈でわかるだろうがあああい!」
「わかても、わかっていてもお前達の為にわしはここで命を賭すのだ!」更にこんな事も付け加える。「もう、もう夢は叶った。じゃあ、じゃあ想念の海でまた会おう!」
 スズ原は飛び出す--自然に自らあの紙を懐に持参している事も気付かずに!
「あ、飛び出すううう前に……あ」フク山は気付くも時既に遅し。「あの老いぼれえええめ、遺言告げる前にそれを俺に渡せよなあああ!」
 スズ原は身を挺して鷹混合型の突進を止めようとするも逆に吹っ飛ばされる!
(イデエエエエ、イデエエエエ……ああ、意識が--)
 誰もがもう限界だ……そう思った時、紙は突然スズ原の懐から飛び出して--何と猿と鯨の両方の特性を持つ成人体型約七十程の巨大な何かに変化を遂げてそれは背びれを青白く光らせると口から高温且青白い何かを真っ直ぐ鷹混合型にぶつけて焼き尽くしてしまうのだった!
(あ、あれは……あ、役目を終えると紙ごと空気の粒と化して……こ、これは夢に決まっている!)
 それからスズ原の意識は途切れる--






 午後三時二分四十秒。
 スズ原は目を覚ますとそこは見慣れた所。飛び出すと目の前に気球がある。気球の周りに二名が居る。
「お、起きましたか。いやあ、激突する瞬間にフク山の爺さんまで飛んで行って無理にでもすれすれで拾い上げなければ--」
「わかった、わかった。有難う、本当に有難う」
 雀訛りでしつこく感謝しいいいいなくとも良いだろう--と赤らめたので顔を逸らすフク山。
「それにしてもあの恐ろしい--」
「言うなあああああ……あれはきっと俺達が見たあああああ本当の幻なんだ!」とフク山もスズ原と同じ考えだった。「空の秘境だけはああああ幻じゃない……まあもう二度おおおおとあそこへ辿り着けないがな」
「だな、だな。わしは人生の最後を迎える前に辿り着いて良かった。いや、いやまだ人生は終わってなどいない」改めてスズ原はこう断定した。「わしらだって、わしらだってまだまだやれるではないか……まだまだ晩節を如何様にも出来るかも知れんぞおお!」
「頼みますよ。それ以上何かやったら俺の立つ瀬が--」
「お前は、お前はわしが現役でいるまでは大人しくわしの助翼して俺っての!」
「はっはっはあああ、こりゃあ長く生きいいいいそうだな。参った参ったああああ!」
 こうして気球に乗って五の日での出来事は幕を閉じた。其れは短くも不思議な冒険である。果たして本当に何も記されていない紙からあのような見るも恐ろしい怪奇存在が姿を現したのか?
 今後も遠過ぎる過去では注目の的だろう……

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十一月五日午後三時十五分十五秒。

 第八十九話 気球に乗って五日 完

 第九十話 一週間地底旅行 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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