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一兆年の夜 第八十九話 気球に乗って五日(四)

 十一月四日午後十時二分三秒。
 場所は不明。
 この時間帯に三名の中で進展があった--午後六時ちょうどに何かの石を発見し、実際に火を灯すと点いた。
 それから気球を浮かす為に夕食を食べ終えた後に試すと……浮いた!
「やったああ、やったああぞ!」
「其れじゃあああワッシャン、火を消して下ろすのじゃあああ」
「わかりましたぞ。出発は次の日の朝でも良いんですよね、良いのですよね!」
「あ、当り前じゃないか。あ、当り前じゃないか」
「大事な事なので二度口にいいいいしたのか、スズ原ああああ?」
 そ、それが何か--と自覚のないスズ原だった。
(ど、如何成るかと思ったわ。このまま、このまま秘境内で暮らしてしまうのかと思ったら居ても経っても居られんのう。
 彼の、彼の蘇我フク兵衛の一名が行方知らずと成ったと噂される話の信憑性を裏付ける証拠はこれじゃが)
「如何しいいいいたのだ? 俺は遠い親戚の翼掛かりについてはあんまり興味の湧くうううう事じゃないしな」
「結局は、結局はこの紙は何の翼掛かりも掴めなかったな」
「そうううううゆう事だな。じゃあさっさと寝てえええから早急に出発を急ごうぜ……ン?」フク山は何かを捉える。「あ、ここに何かああああ近付く!」
 近付くのは空中種族と三名は思った。そう、何かを発見した当初は。
(むむ、むむうう!)
 だが、其れはあからさまに筋繊維を内臓を剥き出していた。「あれは銀河連合で間違いない!」と思い始めるのに一の分も掛からない!
「うわああああああ、しかもおおお望遠砲のような何かを両翼に取り付けた混合型だああああ!」
 その後にフク山は直ぐに物陰に隠れるように命に叫ぶ。その指示は正しく、実際に鷹混合型は両翼に取り付けてあった望遠砲のような何かから合計五発ほど発射。その威力は地面に人族の手の親指程の穴を穿った!
(折角、折角飛び立てたと思ったら銀河連合がやって来るなんて信じられない。あいつのせいで、あいつのせいで気球の風船に穴でも空いたら二度と地上の土を踏みしめる事なく一生を送ってしまう。せめて、せめて死ぬときは地上の土の上で…・…それがわしの死生観なのにいい!)
 その思い合って長年の夢を叶えた功労者である気球を守らんとスズ原は飛び出した。
「なあああ、スズ原あああよ……止めんかあああい!」
 いいや、いいや止めない……あれはお前だけじゃなくまだ若いワッシャンも地上に送り返す為にわしが作った気球じゃあああ--スズ原は飛び出す。
 彼は翼を広げて果敢に鷹混合型と格闘戦を繰り広げる。だが、老いは決定的な差として出てしまう。何とスズ原は叩き落とされた!
「スズ原アアアア、だから言わんこっちゃなあああい!」
「お祖父さんをやらせはしないって俺の辞書に書かれてあるって誰が言ったか……俺が言ったんだ!」
 地面に叩き付けられたスズ原の勇気に感化された二名は鷹混合型と格闘するも……二名共、鷹混合型の空力に圧されてスズ原同様に地面に叩きのめされた!
(と、当然の話じゃ。二名共、二名共軍者ではなく頭脳労働に力を注ぐ生命じゃ。若い、若くて身体能力に優れたワッシャンでも戦い慣れしておらんのじゃ。だ、だからこそ両の翼の重みがあって少々重心の均衡が少し良くない鷹混合型の元々の戦い慣れした圧倒的な差を埋めるには十分じゃない。な、何という差じゃ。わ、わしらが戦いを知らん為に均衡の良くない相手に格闘戦で圧倒されるなんてのう!)
 スズ原の分析は正しい。事実、鷹混合型は望遠砲のような何かを両翼に備える事で却って空気抵抗の調整に翼間取る。空気抵抗が難しい結果もあって三名は狙い通りに鷹混合型に穿たれる事はない。射撃には重心の安定が何よりも課題であるのだから。ところがそれだけでは三名掛かりであの鷹混合型に打ち勝つ事が出来るかと問われたら……違う。頭脳に特化した生命は戦いの何たるかを頭で判断しがちである。肝心の身体が反応出来ないと机の上での空気みたいな理論でしかない。スズ原は自ら肉体鍛錬者みたいに縦横無尽に動かせる生命ではない事を知っているが為に安易に楽観視した分析が出来ないのである。
 徐々に重心が十分でなくとも外す事のない距離まで近付く鷹混合型。先に死なせるのは真っ先に向かったスズ原。スズ原は死ぬ事は恐くない。けれども地上の土に覆い被さって死ぬのが彼の死生観……故に震え始める。其れは別の恐怖心としてスズ原を震えさせる。それを見て鷹混合型は大笑いする。声を発しない銀河連合ではあるが、大笑いする事は出来る。だが、其処には思いやりなど一つもない。正に空の秘境で眠る神々の一つである全身は伸び切るが最後に真っ白な伸縮自在の人族と成るそれが呑み込んでしまった実本来の意味であるように。其れは遠過ぎる過去に於いて余りにも口にも文字にも出来ないし、聞きたくもない。
 その時、鷹混合型の背中に燃えた炭が飛来--それは鷹混合型の剥き出しの筋繊維に燃え移る!
「ウググ、ウウウ……そ、それは!」
「済まああああない、スズ原」
「お祖父さんを助ける為ならば帰還出来ない事を覚悟の上で投げる投げる投げる火を点ける火を点ける!」
 やがて鷹混合型は秘境の断崖から自ら身を乗り出して落下してゆくのであった--燃え盛る炎と格闘しながら!
 その様子を見て三名は次のように語る。
「た、助かったのか?」
「わ、わからああああんのう。けれええええども、俺達いいいいは」
 ううう、これで帰還のは少し困難になった、成ったんだ、成ったんだ--ワッシャンが嘆き叫んでいる間に二名は計算を始める。
 すると秘境を見付ける一の時より前と同じく浮上し始めも含めて一の時しか残っていなかった!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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