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一兆年の夜 第八十九話 気球に乗って五日(二)

 十一月二日午前十時二分十八秒。
 場所は未定。
 ここに来て三名は危機に立たされる。何と残り燃料が僅か一の時分しかない。
(そ、創作物を読んで五の日は保つと思っていたのが誤りだった。よお、予想以上に消費が激しい物だったなんて。わ、わしとした事が何と浅はかな)
 それでも交代々々で何とか足りない燃料を補給し回る頻度が少なくて済んだのは一重に風の強い僅かな硬度を飛んでいたおかげなのかも知れない。スズ原もフク山もワッシャルも思ったよりも睡眠に悩まされる事はなかった。
 何れにしても燃料が足りない状況は三名にとっては大問題。三名は三の時という状況下で何をすべきなのかを話し合った。
「いや、ワッシャンは会話に参加するとややこしく成るから安全確認だけに集中しろ!」
「ええ、幾ら何でも安全確認する程危険な高度なのか? で、でも--」
 い、良いからさっさと黙ってやらんかい--と鷲族独特の回りくどい訛りに痺れを切らすスズ原であった。
「普通に考えたらそもそも五の日も飛んでいいいいいいられる訳がない。如何して飛んんんんんんでいられると思った?」
「な、何度も実験をした成果じゃ。そお、それにお前さんお遠い親戚が行方知らずの理由に空の秘境が絡んでいると見たからな。そ、其れでわしはそれを込みでやったんじゃ!」
「もっと燃料を積むべえええいきだったのではないか? 例えば二名分を燃料で一杯にいいいして、とおおおか」
「そお、其れだと今度は火事の恐れがあるのじゃ。あ、余りにも多く積み込み過ぎなのも難儀じゃぞ」
「ううむ、重量問題があああう先か」フク山は全ての乗り物に必ずぶつかる消費効率の問題に頭を抱える。「其おおおれとも長く保たせるのが先か……必ずそれにぶつかるのか」
 そ、其れはわしらも同じじゃ--生き物も乗り物に置き換えると見えてくる筋肉と肺活量の問題をスズ原は語り始める。
 その語りは最後の火が消えた時に良い所で唐突に終わる。がその間だけスズ原は何とか語ると次のように成る。それは筋肉も只付けるだけで最大限発揮される訳ではない。其処には筋肉の過剰搭載で生じる皮膚、そして流れる血液量の超過、更には過重搭載された際に生じる骨の限界……骨が問題が生じると幾ら筋肉でも何とか成る物ではない。骨とは船で言う竜骨に相当するように重要機関である。とここで更に畳み掛けようとする前にとうとう火は消えた。
「さああああて、これから俺達はこの寒い所で心身共に凍えて氷漬けさああああれるだろうな」
「や、止めろ。き、気にして来たじゃあ、じゃあないかあ!」
 こ、こうゆう時こそわし訛りが体をあたあっためて身の毛もよだつ上体を、肺への負荷もああ、肺が痛い痛い、そ、それに何か吐き出したくも吐きだくも、ウウウウ--ワッシャンも苦しそうな様子。
(き、気球の良い所は正に暖も務まる所じゃな。じゃ、じゃがあそれが費えると訪れるのは大分低空に成らないと鼓膜に直接生じる違和は中々に辛い。あ、後はやはりこんな高度じゃから急に動悸が激しく成るのじゃな。こ、高山で生じる病もそうゆう点では硬度に届けば届く程……あ、ああ。
 わしは、わしはとうとう幻を覚え始めた。まさか雲の上に桃源郷が見えるなんて……そうか、そうじゃなあ。これが、これ……何!
 ちょ、ちょっと二名を叩き起こすか!)
 スズ原は自らの見える物が幻かどうか確かめる為に眩暈を起こすフク山と血が貧しい症状を起こすワッシャンを右翼で叩いて起こす。
「イデデええウイ……少しマシになれ、ども--」
「な、何なん? 気分がすぐれない、から、ね、寝かせて、くれ、ないと、なあ--」
 あれは見えるか、あれが見えるかと聞いている--大事な事を二回も口にするスズ原。
「あああれは、ああ……俺は幻を見つめラアあれる」
「ああ、きっと死期が近い。まさか雲の上に建物が並び立つという光景を最後の最後に見える事と成ったなんて有り得ないにも程が--」
 ちょっとオオオ待てえええい、幾ら何でも同じ光景を見えるなんて偶然があるかあああい--とフク山はそれが通常と異なる事を叫ぶ!
「えっと其れって何を意味するかって……何イイい、其れは本当だったらまるでまるで……ああ、そうなのか!」
「一旦は、一旦はお喋りは止めてその方向に進ませておかないとな。さ、さあ燃料無しの状態で何処まで流される事が可能か?」
 気球は方向転換が可能だが、其れはあくまで生じた熱を向けての話。火が消えた状態だと手動或は翼動で細かい操作を要求される。其れだけ船とは勝手が異なる。そう考えた三名であった。
(だが、だがお陰で秘境に到着したわしら。そ、其処で何があるのか……)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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