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一兆年の夜 第八十九話 気球に乗って五日(一)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十一月一日午前六時一分三秒。

 場所は真古天神武プロタゴラス大陸ソフィス地方新タゴラス村西地区。
 かつて真古式神武が喰われると共に長い歴史に幕を閉じた数々の村、町、市、集落……だが、ここへ新たな希望として馳せ参じる生命が居た。彼らはプロタゴラス大陸に生き残った生命に生きる希望を与え、ある組織への編入を促した。その組織の名は解放戦線。
 最初こそ若さ故に経験の足りない部分も多々あって上手くいかなかったこの組織。だが、数を揃える毎にやれる事が増えてゆく。そして自ら新たな国家神武の建国を望むように成った。
 そんな歴史もあってソフィス地方は解放戦線にとっても思い出深い地と成った。それ以上に砂漠という作物が育つのも難しい環境下は逆に銀河連合による穢れを逸早く浄化するのに適する事実はタゴラス村の早期復活に繋がる。
 ではそろそろ本題に入る。西地区で一番小さな藁家に住むのは齢四十にして一の月と十一日目に成るティスノス雀族の老年。彼は解放戦線に所属した下霧したきりスズの遺児であり、父の遺言書に従ってずっとタゴラス村創設に勤めた。しかも集落だったタゴラスの地を何とか生命を集めようと積極的に六虎経済都市に赴くなど署名嘆願も忘れずに。その甲斐あって徐々にタゴラス集落に生命が集まり、去る年を以ってタゴラス村に昇格。徐々に喰われる前に戻しつつある。尚、未だティスノス雀族なのはそれも又父の遺言に従っての事。但し、五名の子供達は既にタゴラス雀族に帰化した模様。其れでも下霧の姓は受け継ぐ。
 とまあこのようにほんの少し紹介した老年……彼の名前は下霧スズはらかつては趣味さえも抑えてタゴラスの為に尽力した生命。だが、それも終わりが近付く。何故なら彼は長年の夢だった秘境探しに向けて準備を進める。
 そろそろ説明し忘れていた事が一つ。彼の家の真ん前に大きな何かが置かれてある。それは火を起こしてそれで上部に設置された風船を膨らましながらその力を使って物を浮かすといういわば気球。別に彼が初めて作ったのではない。だが、初めて開発した生命については説明するのも余裕がないのでこの際省くとしよう。現在、スズ原は何を思うのか?
(や、やっと完成した。こお、これを機にわしは長い年月も夢だった秘境探しに乗り出せる)
 おおう、暇かああい--そこへ齢三十九にして八の月と六日目に成る蘇我梟族の老年が現れた。
「お、お前は蘇我フクやまか。ま、また冷やかしに来たのか?」
「その逆ううううだ。俺も一緒に乗せてくれえええいい」
 ひょっ、ひょっとしてやっとわしの気球を理解出来たな--と涙脆いスズ原は右眼から一滴程涙を流す。
「相変わらず下霧一族は直ぐ泣ああああく癖が治らないな。まああああああ良いさ。じゃあ始めええええようか!」
「だ、大丈夫だぞ。こ、これは熱の力で浮く種類だ。そお、その為の熱燃料もある者に運ばせてある」
「ある者おおおって--」
 何て奴なんだああ、全く祖父さんは物遣いが荒いのもいい加減にしないと流石の俺も起こってしまうって言う--齢二十一にして二日目に成るタゴラス鷲族の下霧ワッシャルは要するに養父であるスズ原に燃料運びさせられた模様。
「こ、これはああああ菅原炭!」フク山はそれが通常の菅原炭ではない事にも気付く。「これは火を起こせば一気に煙が溢れる奴ううううだぞ!」
「ま、まああれだ。そ、その為にここまで巨大化した。何い、一の年も掛けて試験運用したので浮くのに最適な鶏量の計算も済んだ。で、ではそろそろ行こうかのう」
 最大四名まで乗せる事が可能な気球。だが、スズ原にとって長期間飛行する為に一名分は捨てざる負えない。それは長い旅をする為であった。
(さてとお、その為にわしら三名は空中種族だけで構成した。幸いはあ、断られるかと思ったが何と了承してくれて助かる。では、行こうかのう!)
 ワッシャルが風船部分をある程度持ち上げる係を担当。火を灯して徐々に風船部を浮かせる。しかも浮かせる過程で均衡が崩れやすいので必ず四点以上で固定。スズ原の場合はそれだと安心出来ないと感じてその倍の八点固定させる。それから徐々に雲の方角へと持ち上がると均衡点は安定領域へと入る。そこから中に居るスズ原とフク山は固定した鎖を外す。七割以上膨らみ始めると物を浮かす程の力が掛かる。それからワッシャルの役目は終わってスズ原の所まで駆け込む。
 それから三十の分より後……遂には高度成人体型五百を突破--遂に空の旅は始まる!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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