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試作品 進行順調法 何処に需要があるのかわからない試作品(0/5)

 如何も理想を思っても実際とは乖離している事を数度思い知りながら嘆くdarkvernuであります。
 それでもやるべき事はやらないといけないと自分は思うな。ま、世の中お金の時代に於いて何処まで貯金を切り崩せるかはわからないけどね。そんな訳で引き延ばし漫画家は読むべき(押し付けがましいにも程があるぜ!)試作品を如何ぞ!

 漫画家の名前は大隈恵介。彼は週刊少年横綱で大人気連載中のファイターハガネの原作者。これまでファイター刃金は予想の斜めを行く展開を示した初めてのリアル格闘漫画。其れまでは格闘漫画と言えどもリアルさからは少々掛け離れた作品が多い。タイガーボールもそうであるようにプロレス漫画を自称するマッスルマンも暗殺拳を自称する晶の拳も同じ。まあこれらはバトル漫画に陥りやすいムーンサルトの特徴であると言える。その話は本題ではない。
 さて、大隈が進行順調法を知らない節ではない。けれども、昨今の展開に不満を抱く読者が多い。しかも大隈は進行審査会からの指摘を避ける為にファイター刃金を何度も題名を変えて乗り切って来た。最初はファイター刃金、次にハガネ、三番目が初鹿刃金、最近では刃金山。これらは全て進行審査会対策として用いられた事である。
 それじゃあ大隈と担当編集の徳川の会話を御紹介しよう。
「先生、又インタビュアー方式をやるのですか?」
「そうだ。また審査会の連中が勧告して来た。何時まで十兵衛編をやるのだって」
「だからってインタビュアー方式は賭けじゃないですか?」
「其れが好評なのだ。それとアメリカ大統領が変わる度に希次郎に威厳を示す回も奴等を黙らすのに十分だからな」
「流石は先生、天才ですね」
「まあな。本当は色々やりたいけど、お前らの経営が危うい事を受けて仕方なくハガネの連載を再開したのだぞ。それを忘れるなよ」
 成程、彼らは考えたな。展開で文句言われない為の手段として用いられるのがインタビュアー方式に依る第三者の発言。これを挿し込む事は展開引き延ばし等ではなく、新たな展開へと進む事を意味する事だと。それは事実であり、過去に麻雀漫画なのに時獄篇を展開したある作品が存在する。実在の大統領を捩ったキャラの出演に依る露骨な展開妨害等も審査を誤魔化すうえでは重要なの……かも知れない。
 だが、これらの展開が果たして何時までも通じるか。これに掛かる。実は既に進行審査会は検察当局に連絡を入れた後だった。それは先程の会話中に突如として舞い込む。
「何、徳川よ……応答してくれないか?」
「はいはーい、わかりましたよ」
「さて、今後は如何--」
「先生、大変です。黒スーツが十人以上でやって来ましたよ!」
「何!」
 インターホン越しだったので未だ立ち入る気配はない。だが、流石に刑事事件を起こす訳にはゆかないのが社会人としての常識。漫画家大隈は中へ入れる。
「大隈恵介さんですね?」
「はい、何でしょう?」
「恍けないで下さい。最近の刃金山の展開……酷い物ですね」「
「な、何が言いたいのですか?」
捜査令状が下りました……至急強制捜査に入らせていただきます!」
「チョ、ちょっと待ってくれ。俺の許可なしに勝手に……って負い、洗濯物まで調べるんじゃねえぞ!」
「あわわわ、とうとうここまで来ましたか。ど、如何か火島先生みたいに打ち切られる事がないようお願い致しますぅ!」
 過去に週刊少年横綱はある大御所作家の無期限執筆停止処分を受けていた。担当の徳川は大隈の自宅内を粗捜しする検察を見てその不安を募らせる。そんな徳川に寄り添う大隈。まるで自信ありげにずれ落ちそうな眼鏡を右人差し指で元の位置に戻しながらこう慰める。
「大丈夫だ、徳川。俺は打ち切られる心配はない」
「せ、先生」
 まるで摘発される心配がないような発言をする大隈。全て万事解決するかのような雰囲気を醸し出す。一体何処にその自信があるのか? 徳川だけでなく、捜査の指揮を務める丸佐も何やら疑問を浮かべる。
「おや、如何したのですか?」
「その自信がおありなのは何故ですか、大隈さん?」
「さあ、何の話ですか? 兎に角、どんどん調べ回って下さい」
「ああ、そうするぞ」
 捜査は表向きから玩具の中身まで容赦しない検察官達。さて、検察は何を探すのか? それは引き延ばしの決定的な証拠と成る物である。脱税には脱税の証拠と成る貴金属であるように引き延ばしには引き延ばしの証拠と成る決定的な証拠が重要と成る。そんな阿呆な事があるか……と思う読者が居れば説明しよう。
 勝手に物語を進めるプロは居ない。常に展開について担当編集と相談する物である。しかも忘れないようにメモ書きしてしっかり打ち合わせをする。これがプロとしての矜持。それを目も無しで進めるなんてあまりにも人間の脳に過度な期待を寄せる危険な進行である。どれだけ記憶力の良い作者も連載を長く続けると必ずほころびが生じる物。その為の長期連載を続ける為のプロットである。なのでメモ用紙がないという事は必ずしも有り得ない。
 故に検察は引き延ばしの証拠と成るメモ用紙等の捜索に当たる。引き延ばしをしたい作者と編集部はその隠蔽に勤める。果たしてメモは見付かるのか?
 それから深夜……大隈は丸佐に声を掛ける。
「如何でした、何か新しい発見でもありましたか?」
「駄目みたいだ。如何やら貴方が引き延ばしたという証拠は見つかりません」
「それはそうでしょ。何しろ、僕の作品は読者に予想外を提供するのですよ。なのに如何して打ち合わせの紙を用意するのですか?」
「其れで良くやっていけますね!」
「それがプロの漫画家ですので……其れじゃあまだまだネームが仕上がっておりませんので本日はこの辺で!」
「わかりました。その完成したネームとやらをぜひとも拝みたく存じます……ではお疲れ様!」
「ええ、お疲れ様!」
 この勝負、大隈に軍配が上がったか……


 さて、前半戦はここまでにして後半へ続く。

 大隈恵介引き延ばし事件の捜査に当たるのは丸佐茂……ベテラン検察官。これまでにマルサに解決出来ない引き延ばし事件はないと言われる程の敏腕検察官。僅か二十八歳で当時、沖田栄次郎引き延ばし事件を担当。天才的な感性と漫画への深い愛から引き延ばしは有り得ないと言われた沖田。其れに対して彼は新米でありながらも引き延ばしの証拠へと繋がる僅かな言動の変化を逃がさなかった。必死に当時担当の検察官に進言する事で重い腰を上げさせ、それから摘発に成功した。これにより、長年世界中に一億は下らないと言われるファンを持つワンナウトピースを進行順調法違反の罪で執筆停止に追い込み、ここに打ち切りを宣告させるに至った。
 これに依って丸佐は出世して現在三十六歳……今回の指揮に当たる。だが、邸中を捜索しても引き延ばしに繋がる証拠は見付からない。果たして丸佐は大隈事実を突き付けられるのか?
「駄目ですよ、大隈先生は限りなくシロに近いよ!」
「いや、何度も漫画を読んだ。車内に溢れんばかりの単行本と今週号を含めた今回に至るまでの週刊少年横綱だぞ。それに助手席に束と成る審査会の報告書。これらを合わせても奴は必ずクロだ!」
「そんだけ集まれば立派な信者じゃありませんか!」
「馬鹿野郎が、白岩!」
「イデ、暴力反対!」
「ファンであると認めたら俺達は仕事をやってられないんだよ。俺達は泣く子も黙る検察官だぞ。だったら検察は検察らしくアンチを自称しなければいけない。第一最近の展開は何だ。何時まで佐々木小次郎と戦う? 豪さんが殺された上に守護るとか言っていた鞘部が勝ったのに練習試合扱いされて佐々木小次郎編は続投。これを引き延ばしと言わずして何が引き延ばしだ。読者を舐めるのもいい加減にしろ、大隈恵介!」
「辛い仕事ですね、創作系検察官というのも」
 説明が遅れて申し訳がない。実は丸佐達検察官はいわば引き延ばしを行う創作家を摘発する為の創作系検察官。創作系検察官は常に四大週刊誌は勿論の事、時には大人雑誌の朝御飯やライトニングボルトでお馴染みのデカイコミック魂も愛読しなくてはいけない。しかも中にはコンビニに置かれていない雑誌も存在する為に度々入手で苦労する模様。そこで出版社と繋がる者に無理矢理調達させて各漫画家等を監視する役目を担う。
「とはいえ、大隈の奴は一体どうやって打ち合わせるのだ? あいつは絶対に引き延ばしの証拠を握っている。だが、幾ら自宅を探しても見つからない!」
「きっと飽きた書店東京本社内に移しているのですよ--」
「一昨日調べただろう。だが、そこにはなかった。それに幾らあの自衛官上がりの男が強面でも大御所の火島にも劣るランクだぞ。そこまで隠し通せるスペースはない」
「だとしたら何処に隠したというのですか……ああ、今日の展開は一太刀浴びせて終わり。たったこれだけの為に大ゴマ使う理由が見付からないですよ!」
「全くだ。展開の思い付かない作者は必ず頁を埋める為に大ゴマを……そうか!」
「ど、如何したのですか!」
「確かあいつの自宅に何故か全く関係のない場面を描いたネームが置いてあったなあ!」
「そ、それが如何したのですか!」
「戻るぞ、白岩。帰り際で引っ掛かっていた事があった……そうか、あいつはそうゆう手法で引き延ばしを示唆するメモを書いてあったのだな!」

 そして午前六時零分……大隈は突然、自宅の裏門より出て来た。待ち伏せするように丸佐と白岩が目の前に居た。
「な、何なのです?」
「はい、これ」
 丸佐が取り出したのはXXXX年四十三号の週刊少年横綱。これに対して大隈は次のように質問する。
「これが何か意味あります?」
「素晴らしい方法ですね、大隈さん。貴方……やっぱり引き延ばしてらっしゃる!」
「はあ、何の事ですか?」
「これの、事ですよ!」
 丸佐はその号の刃金山を開く。これに対して大隈は白を切る。
「ははあ、アンチも突き詰めれば信者と様変わりするのですね」
「いやいやいや、私はファンでした。ですが、引き延ばしの事実を掴んでしまったら……この作品のアンチに転向しました。いえ、転向せざる負えません!」
「何が言いたいのです? 其れは確か佐々木小次郎が追っ手に対してエア斬撃を仕掛けた後に追っ手がインタビューに応じるシーンですよ!」
「そのシーンですよ。これは次のようなシーンなのです」
 それを紹介しよう。
 --いやあ、たまげました。まさか斬られるとは思ってもみませんでしたよ。あの時は私、首が無くなっていましたよ。このように血が伸び切るようにドアァーっと!?
 え、何がです? そう、ドアァーっと!? そんな訳でちびってしまいましたね……あ、これは内緒だよ。--
 さて、何処が引き延ばしを指示する回答なのか? それは後程。
「そ、それが如何したのですか? 普通のインタビューシーンじゃありませんか」
「確かに一ファンからすればテンプレート通りのインタビューシーンですね。ですが、このインタビュー……明らかにおかしいのです!」
「な、何がおかしいというのですか!」
「白岩、ちゃんと持ってきたよな?」
「はい」
 白岩は当時の雑誌三つとその話を収録した単行本を二冊用意。
 --立ち上がる事すら大いに遠い……最早内臓がどろろと伸び切り、か。
 大きな収穫だ……次に活かせる……--
 --握りの要とはいえ、小指と親指でギッシルとッッ
 鞘部の剛力と張り合っている!?--
 --貴様のその無礼、あれよあれよと極まっとるッ--
 これが当時の週刊誌に掲載された台詞。
 次に紹介するのが単行本収録時の同じシーン。
 --立ち上がる事すら大いに遠い……最早これまで、か。
 大きな収穫だ……次に活かせる……--
 --握りの要とはいえ、小指と親指でッッ
 鞘部の剛力と張り合っている!?--
 --貴様の先程からの無礼、誠に極まっとるッ--
 読者の皆さんはもうおわかりだろう。
「こ、これが如何したのです?」
「嫌、十分に証拠と成るのですよ……大隈さん!」
「ど、何処が証拠に成るというのですか!」
「雑誌では必ずあるというギッシルあれよあれよやそしてどろろ……ところが単行本ではそれがない!」
「別に単行本化の為に台詞を書き換える事なんて誰だってやっている事でしょう!」
「いや、これが証拠に成るのですよ。それら不自然な擬音は即ち、次の言葉と合わせて使えば……引き延ばしの指示語として活用される!」
「な、出鱈目も良い所だろう!」
「本当に出鱈目かな? ねえ、担当の徳川さん?」
 徳川は二人の検察官から這い出るように大隈の前に姿を現す。
「と、徳川君?」
「も、もう止めましょう。この人には既に見破られていますよ!」
「だ、黙れ。だ、第一にその先月号の何処に引き延ばしを示唆する台詞と成っている!」
「それはドアァーっとだ」
「で、でも後ろには何もないし二回目何て何の意味もないじゃないか!」
「いや、あるのだよ。これは敢えて前の言葉に修飾する形で使われた指示語……そうですね、徳川さん?」
「はい、これを見て私共は先生の引き延ばしの要求に応じました!」
「な、何だと!」
 大隈は膝を崩した。と同時に次々と検察当局と思われる車が集まり始める。
「あんたは良くやった。一ファンとして随分夢を見させて貰った。だが、大きなミスを犯した!」
「ク、昨日ネームの事を口にしなければ--」
「違う、ファンに謝れ!
 あんたは心を裏切っただけでなく、多くのキャラクターを台無しにした。引き延ばしならまだしもその腐った根性が引き延ばしの誘惑に踊らされた。読む側を舐め腐った精神は漫画家に値しない!」
「クソオオオオウ!」
 こうして大隈恵介引き延ばし事件は幕を閉じた。彼は二か月先の号にて刃金山の連載終了を宣言し、長きに渡るハガネシリーズに幕を下ろした……


 という訳で『進行順調法』をお送りしました。尚、大隈先生のモデルは彼の格闘ギャグマンガを連載していらっしゃるあの先生ですよ。それから現時点では四つのシーンの内、三つは単行本で調べれば出て来るよ。まあ、少し脚色を入れた状態で紹介したから全て丸写しではない……多分。

 それじゃあ今回はここまで。次回更新は多分、来週の金曜かよくて木曜かもな!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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