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一兆年の夜 第八十八話 躯伝の空 躯伝、安らかに眠る(八)

 十月二十八日午前九時零分二秒。
 場所は真古天神武六虎府経済都市中央地区。
 六虎府は大きく二つに分けられる。一つが旧タイガーフェスティを中心とした工業団地が並ぶ工業都市。もう一つがここ旧六影を中心に活気溢れる街並みを実現した経済都市。ここでは経済都市のみを紹介する。
 二つに分類する事に依る利点は一つ。それは経済都市は銀河連合に依る侵攻を大きな塀で防ぐ事ともう一つは者から者への侵入を防ぐ為に商品として出される物に入念な検査を行う。それは即ち、物だけでなくそれを扱う者自身にも適用される。しかも検査員は全員軍者出身者でほぼ隙が無い。それに依り、安心安全を保障される。保障されるという事は即ち気軽に商品を買う者達が増え、更には其処へ移住しようと思う生命も増加して活気溢れる経済都市と成る。尚、工業都市の利点については暇さえあれば後程紹介する。
 その経済都市中央地区にある六影官邸……即ち、経済都市を扱う府庁にて躯伝と正心は立ち寄る。尚、蒼天を守る付き者はカン次に一任された。
「ああ、ちい叔父様が無事で居るか心配ですわ」力は認める物の幼い頃より面倒を見て来た正心は少し離れただけで震え出す始末。「力は心配じゃないですわ。ですけど、何かあったら責任は私に掛かるのですわ!」
「落ち着くのじゃ、正心。暫くの間じゃろうに。全く気高く止まってもその点だけは年相応よのう!」
「はい、兎に角急ぎましょう……お祖父様」
 正心は親類という事もあって手続きなしで最低限の検査を以って通された--そこでも最低限の検査が必要なのは銀河連合対策以外にも安心安全な経済都市という観点が比重を占める。
 それから躯伝と正心は三階知事室に招かれた。尚、知事とは六虎府の経済都市および工業都市のどちらか一方に必ず知事と呼ばれる官職が最高責任者として置かれる。市長や府長、其れから町長や村長、更に酋長との異なる点は新天神武における選挙を取り入れる事。しかもそれは直接制ではなく、間接制を取る。経済都市或は工業都市の官僚が候補者の中からお気に入りを選んで最多得票を得た候補者がその都市の知事と成る。その為、他とは異なり実力派が長に成りやすい。或は官僚好みで国民から余り人気のない生命が知事に成りやすい為に少々民主主義が反映されにくい。
 さて、現在の経済都市の知事は二代目。初代知事は工業都市の知事も兼任したという藤原カエ道彦。だが、余りにも多忙だった為に新たな役職の必要に迫られた。そこでいっそ知事職を経済都市と工業都市の二つで分けようと提案したのが……二代目知事を務める齢三十七にして四の月と十一日目に成るテレス熊族の中年が椅子に座ったままで迎えた。
「ヤア、来たのおう」
「何の……って祖父さんを連れて来たのか、心!」齢十八にして七の月と十一日目に成る神武人族の少年地同正斗は驚きを隠せない。「キュー明さんからの連絡で俺をここまで呼ぶ理由は何なのかを期待したらそれなのか……全く何か俺はやったのか?」
「やあ……相変わらず父親に似ないのう、正斗」
「其れは褒めているのか落胆しているのか、どっちでしょうか?」
「お兄様、少しは前向きに成ったら如何ですか?」
 お前みたいに何でも出来たら苦労しないよ--と正心の多種多様さに悩みを抱える正斗だった。
「まあまあ正斗様。目指すのデェしょう、正伝様みたいに新たな国家神武を建国スウルという理想を!」
「まあそうだけど……祖父さんはそれ以外に用があって来たのだろう?」
「ああ、そうじゃ。という訳でここで話し合って良いか、ベア九斗?」
「勿論ジャア。躯伝様はわしら元解放戦線の面々に取っテエ、命の恩者じゃからナア」
「其れは褒め過ぎじゃ、ベア九斗」躯伝は決して己の功績を自慢したりしない。「わしは真古式神武が借りたまま返さない物を取り返しに来たまでじゃ……褒められるような事をした覚えは更々ないのう!」
「そう言わない辺り、祖父さんには届かないさ……俺達は!」
「そんな話は良いじゃろう。そろそろ本題に入るぞ。わしが王として出来る最後の仕事じゃからのう!」
 まさか……襲名させたのですか、蒼天に--と正斗は直ぐ察した。
「ええ、そうですわ。ですので今の御祖父様は水の惑星で初の大王を務めておりますわ」
 と言えども何の仕事もない只のお飾りじゃがのう--そう言うと躯伝は早速、正斗に対して次のような事を要求した。
 それは宮家の創設。躯伝はバレルバーとの話で出て来た直系以外で余りにも連続した家系が少ない事を指摘されての事だった。その為、躯伝は早急に受け皿としての役割として宮家の創設を構想に入れて来た。それから正伝が子を儲け、しかも目の前に居る正斗が次世代の天同の受け皿に成ると確信に至った。
「俺が、地同家が天同家の跡取りの為に男系を受け継いでゆくというのですか?」
「ああ、そうじゃ。お前さんはちょうど父親を辿ったら立派に新国家神武初代最高官参花さんかへと至る。じゃからお願いじゃ、正斗」
「で、でも天同家でも出来るのではないだろうか?」
「其れが難しいのじゃ。何しろ、宮家の一員になる筈だった烈正はメイリスを連れて何処に居るともわからない場所へ旅立ってしもうた。天豪と天明は襲名自体の証として天同の姓を捨てて一切関わりないようにしてのう。豪伝と豪天は婿養子に付いたはいいがどれも娘しか産まれなくて既に諦めの境地じゃ。史正に至っては烈正と同じく行方知れずじゃ。なのでお願いじゃ、正斗」
「で、でも俺みたいに親父のように戦いの際に秀でてる訳でもない俺が--」
「そんなのは関係ない。要は血を保持する為にじゃ。その為にはお主の一族の助力を世が必要とするのじゃ!」
「其れでも俺は正心みたいに--」
「お主の曾祖父優央もそれで随分悩んだのじゃ。悩みの一つや二つ抱えた所で何と言えよう。要はやるかやらないか……それだけじゃ!」
 ……わかったよ、祖父さん--一瞬だけ俯いたのち、決意の表情のまま顔を上げる正斗だった!
「如何ヤラア、迷いを振り切ったナア」
「ああ、親父は進んだ道を後悔しなかった。俺も進んだ道を後悔する訳にはゆかない。でもな、祖父さん」正斗は自らの望みも口にする。「俺は何時か親父の夢見た新たな新国家神武建国に邁進する。宮家を引き受けたのはその足掛かりだ……例え何代掛かっても俺達は必ずや建国して見せるよ、誇り高い地同家としてな!」
「何か今日のお兄様は格好良いですわ!」
「違う、少し格好付けただけだ……気が緩めば何時もと変わらんっての!」
 ハハッハア、其れはわしも同じじゃあ--と躯伝は大笑いした!
(それから四の年じゃったかな。宮家を創設する法案は通り、わしは最後の王としての仕事を務め上げた。それが宮家創設を始めとした新法の公布、次期国王蒼天の戴冠式の開催と宮家創設会の催し……それから漸くわしは大王として自由に動いて貰ったよ。それがアリスティッポス大陸への移住と七の地で新天神武建国者である七と同じく引退生活を送り続ける事。それがわしの引退……後の事は若い衆に任せる。
 そして……現在に至る訳じゃよ!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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