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一兆年の夜 第八十八話 躯伝の空 躯伝、安らかに眠る(七)

 ICイマジナリーセンチュリー二百二十六年十月二十六日午後十一時五十八分五十三秒。

 場所は不明。
(見極めんとのう。わしは徐々に衰えるとはいえ……いや、衰えは技と術さえも低下させうる。昔は出来た事も今では難しく成るのと同様に。其れでもわしはこの子に託したい。この子の技を見たい!)
 齢五十七にして五の月と二十一日目に成る天同躯伝は木の刃を構える。
「僕に何を託すのだ、父さん?」齢十三にして九の月と二日目に成る神武人族の少年にして躯伝の第十一子に当たる蒼天は疑問を口にする。「僕よりも烈希姉さんの方がふさわしいと思うよ」
「姉さんは最高官に成る事しか興味ないから仕方ないでしょ、蒼天君?」齢十八にして八の月と十日目に成る神武人族の少女天同躯佐は窘める。「それに君はあたし達にない能力を持つと誰もが口にするのよ」
「何の能力だよ。僕にはそこまで世の中を変える力は持ってないよ」
「偉ク自覚ガナイですね」齢三十二にして五日目に成る菅原カンガルー族の中年菅原カン次は何事も才能が有り余る蒼天に困り顔で居る。「何でも熟セテモソノ本者ガ一番ソノ気ジャナイノハ何トモ言えませんなあ」
「それがちい叔父様の」齢十三にして十の月と一日目に成る神武人族の少女地同正心は敢えて褒める。「良い所ですわ」
「幾ら血縁上とはいえ、その呼び方は正しいの……正心?」
「そうカン次さんに教わりました」
「正心さんはそうゆう方だからね。僕と同じくあんまり実感を湧かせない性格だからね」
「お互いに同じ技術を持ってしまったのじゃ。競い合えば能力抜きで拮抗したまま伸びるのは仕方のない話じゃ」
「同じ段階だとそう成るね。でも、何時までも同じ段階で居られないのも世の常よ」
「ええ、ちい叔父様はきっと私の想像を超えて真古天神武を導いてくれると思いますわ」
 じゃが、優秀過ぎると後の物に重荷として圧し掛かる……それを忘れない事じゃ--経験則から躯伝はそう断言する。
(さて、何故こんな深夜にこのような事をやるのか? まあその前にわしが如何ゆう立場であるかも説明せんとな)
 躯伝は立ち合い十の分までに今までを振り返る。真古天神武では初代最高官として真古式神武で首都を務めた六影及びタイガーフェスティ奪還の立役者であるヤマビコノシドウシンが初代最高官として選ばれて一期まで務め上げた。以降は新天神武と同じように選挙で多数当選された政党の党首が最高官に成るという仕組み。但し、異なるのは任命権の方。新天神武当時は前最高官或は前国会委員長が最高官を任命するという制度だった。ところがそれでは納得のゆかない国民は必ず存在する。そこで真古天神武では新たに王政を敷く。その初代国王に躯伝は就任。任期は王自らが決め、普段は任命権など積極的に政治に関わらない物とされた。その為、国王が任命すれば国民の誰もが納得して最高官の権力を認める事と成る。つまり国家神武にあった権威と権力の分担を復古したのである。但し、古式神武の頃よりその傾向はあったが真古天神武では異なる。それは新天神武の選挙制度を取り入れたまま国王のみ世襲制を取り入れた訳だ。
 それから現在。躯伝は近々蒼天に継がせようと心に決める。その理由は蒼天自身の頭脳明晰と全盛期の躯伝に匹敵する身体能力、そして祖父優央の優しい性根と何よりも以前は躯伝も身に付けていたという新仙者の能力……特に新仙者の能力は生後間もなく発動し、それから政権が変わる毎に行われて来た真古式神武跡の奪還戦に蒼天が自ら参加した際に十の年に満たない状態で百獣型を倒してしまうという快挙を達成。百名以上の目撃談もあって彼が次の最高官に成ると誰もが噂する程にまで成った。
 それは決して長子相続を無視した形ではない。世襲候補者に選ばれる躯伝の息子達第一子正伝は早く死に、烈正は新天地目指して行方を晦まし、更には天豪と天明は自ら辞退、豪伝と豪天はそれぞれ北と南に婿養子として嫁いだ為に外れ、史正に至っては秘境探しの為に烈正同様行方を晦ました。その為、残ったのは蒼天のみ。余程の事がなければ雌の世襲は認められない国家神武のしきたり上、烈希と烈天、それに躯佐は跡を継げない。依って蒼天が次期国王筆頭候補と成った。
「そろそろ時間デスヨ。では構エテ」カン次は右前足を叩く挙げる。「制限時間ハ三ノ分……一回デ決めて下さいね!」
 そして振り下ろす時、始まる試し合い。互いの木の刃が打ち合う。寸止めに依る決まり手ではあるが、寸止めにも決まりがある。それがおでこと首と鳩尾に止めればそこで試し合いは終わる。故に身体能力や技術では難しい。おまけに能力だって使ってはいけない。能力を使わずに蒼天は躯伝から一本を取らなくては成らない。
 最初は躯伝の経験則から来る反撃に依る一撃が繰り出される。蒼天は反応に頼って寸止めを回避。何とか一本取られないように心掛ける。
 だが、事態が動くのは一の分より後……反撃狙いからの相手の間合いを崩した状態から鳩尾目掛けて月野寸止めを決めようとした時--鳩尾付近よりも早く蒼天の横薙ぎが躯伝の首に寸止めされた!
「ハアハアハア、父さんは相変わらず無茶をするよ」
「全く涼しい顔をしてわしの遥か先を言ったな……全盛期でもわしはお前を超えられんのう!」
「やあったああ、蒼天君の勝ちだあ!」
「良かったですね、ちい叔父様!」
「これはもう逆立チシタッテ敵イマセンネ、躯伝様」
「ああ、わしの後を継ぐのは蒼天……お主じゃ」
「そうでしょうか。僕にはそこまで自信がありません」
「其れはわしの父優央も同じような事を言った。自らの才の無さを嘆きながらも最後は多くの国民を助けたのじゃ」
「でも僕がお祖父さんみたいに上手く出来る自信がありません」
「自信がないなんて別に悔しい物じゃない。寧ろ、まだまだやれるって事を意味するじゃないかのう!」
「でも僕には迷いが--」
 迷いが何だ、そんな物は生きている内は誰だって抱える物じゃろうが--と吠える躯伝!
「父さん……そこまで」蒼天は躯伝の覚悟を確認し、それから背を向けながらこう言い放つ。「わかった……成るよ、王に!」
「そうでなくちゃわしの息子じゃないな。蒼天よ、今からお前は第二代真古天神武の王じゃ!」
 こうして国家神武で最初の襲名は完了した。けれども躯伝が真古天神武でするべき仕事が終わった訳ではない。
(こうしてわしは晴れて最初の大王か。まあこれは飾りであって何の仕事もない役職じゃ。じゃがなあ、任命権もその他全てがなくとも大王だってやれる事はあるぞ!)
 それから躯伝は真古天神武を盤石な物にする為に正心に駆け寄る。
「何でしょう、御祖父様?」
「ちょいとお前の父さんの遺した物を果たそうかと思うのじゃ。今日の昼から彼女の所まで案内してくれるか?」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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