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一兆年の夜 第十三話 天同生子 継承篇(終)

 午後五時三十分一秒。
 場所は首都四門零の丘。破壊された構造物がちょうど三角形で生命二名分
隠れる場所。
 そこに無傷の生子と全身傷だらけのアンジェルは避難していた。
「わ、わた、しだ、は、もう」
「済まない! 私がもっと力があったならアンジェルをこんな目には--」
「がああだ! あなただは、自惚れるなあだ! ググウウウだ!」
「アンジェル! これ以上無理をすれば--」
 アンジェルは生子の忠告を無視するように力一杯肺を動かす!
「私は楽だに死にたいんだよだ! グアアアダ!
 あなただは生きて下さいだ! ガドビャアアダ!
 た、と、え、か、さ、にー-」
「もうまともに喋る事が出来ないのに! まだ肺を動かすか!」
「い、き、う、ん、ぁ……」
 アンジェルは想念の海に旅立った! 生子は左手でアンジェルの両瞼を静かに
閉じた。
(『生きろ!』とアンジェルが言うのだな。
 わかったわ。あなたの言うとおりもう少し生きてみるわ!)
 生子はアンジェルの死体に一礼をした後、三角形状の瓦礫の外に出た!
(この速さは! 私達を待ち構えていたのね。
 いいわ! 最後の神武包丁……抜かせて頂くわ!)
 そう言って左腰に掛けていた包丁を鞘から抜くとものの数秒で三体を横、縦、右斜
め上に一刀両断した!
(刃はもう毀れたわ。
 けれども、肉体がその代わりを担うわ!)
 数百程いるおぞましきモノ達の猛攻を一切の無駄をせずに反動を上手く利用して
対処! 始めに神武包丁を先頭から三番目にいる鹿型に投げつけると同時に先頭
を走る豚型に右後ろ足で頸椎を粉砕! そして粉砕した相手の頭上に乗っかり、
生子の心臓めがけて食らおうとする猿型を親指だけ曲げた状態の右手を包丁の
ように眉間を刺し貫く! 刺さった状態の右手首に気を取られたと感じてか、人型は
後頭部めがけて雄略包丁に似た物で振り下ろす! だが、生子は貫通してもなお
勢い任せに避けると同時に左足を包丁の形にして人型の首を刎ね、その反動で
詰まった右手を猿型の死体から抜く! その間にキュプロ枝で出来た縄が生子の
首、左手、右足に向かって巻き付こうとした! 生子は敢えて巻き付かれながらも
持ち主である三体の力を利用して遠心力で周囲の者達を巻き込みながらそれを
対処! 今度は巻き付いた縄を刃毀れした神武包丁と鞘にくくりつけて周囲直径
成人体型六まで振り回す!
「私は仙者よ!
 私は天同家の長にして全生命の希望を背負う者!
 神々のお意志を背負う者!
 私はもう少し生きてみるわ!」
 生子は戦い続ける……

 四月六十二日午後五時三分二秒。
 場所は中央官邸跡。瓦礫の山で埋め尽くされていた。
 天同生子は飲まず食わずで戦い続けて一の日が過ぎた。
 彼女の肉体は無傷だ。だが、衣服は生命外れした動きに耐えきれず、数十カ所も
の穴が点在。秘部の露出を抑えようと何度も破いてはそれらを継ぎ接ぎ状にする事
で覆い隠す。
 そんな状態の彼女は今、生存者を捜して歩き続ける。
(ピートも、エウミョウルも、シュルターも死んだ。私はこの目で確認した。
 けれども、彼等の死を無意味にしない為にも私は……ん?)
 生子は中央地区で無事な真ん中より三番目に小さな民家の玄関口で横たわる
人族の兵を見つけた!
「そこの者! 口は動かせるか?」
 兵は息が絶え絶えな状態で生子の問いに答える。
「は、あ。生き、てたのです、ね。せ、せい、こ、様」
 生子は兵の言いたい事を理解出来ない。
「どうゆう意味だ?」
「て、き、りし、んだのか、と……」
 兵は息を引き取った。
(理解出来ない。彼は何を言おうとしているのかを!)
「済まないが、この包丁は刃毀れが少ないようだな。
 後でちゃんと返すわ!」
 生子は兵が持っていた雄略包丁を鞘から外して右手で構えながら、他に生存者が
居ないかを確かめる為にその民家の中へと入ってゆく。
 そして中を慎重に歩いて行く。
(ここだけ無事なんてどう考えてもおかしいね! 何か仕組まれてい……!
 仕組まれていると言えばこの襲撃!
 もしかして神々が言おうとした未来から過去に誘われるってのは!
 ようやくり--)
 その考えをする暇もなく人型が障子を何かで突き破って聖子に襲いかかるが、
生子は冷静に首を刎ねる!
「危なかったわ! そ、それにしてもこの人型? どうして成り余る物で障子を?
 そんな事よりも中の様子を見ないと!」
 生子が障子の先を見ると、そこには人族の女性が衣服を乱し、両眼に大粒の涙を
流したまま、仰向けになっていた。
 生子は直ぐに駆け寄り、女性を安心させようとする!
「もう大丈夫。私が直ぐにあなたを--」
「だ、駄目よ! せ、生子さ、様!
 わ、わ、私ははは、あれれにおかかかささされ、ももう--」
 女性は激しく錯乱する! 生子はそれでも彼女を宥めた!
「身の穢れは全て私が背負うわ! だから--」
「ち、違いいままます! そ、そそそうじぁああああ!
 アグベエエエジュアアエ!」
 またもや光景は一巡する!
「! これ……は」
 女性は爆発するような吐血をすると同時に腹からおぞましきモノが生子の心臓
めがけて突き抜ける--生子は避ける間もなくそれを鳩尾に受けた!
「グゥ! あ? これ、は」
 生子は心臓を食われる感覚に襲われる! そして--
「ああ! せ、生子様が、ああああ!」
「? ああ、そうな、のね。これ、があなたの、言い、たい事、だったの、ね」
 死んでいるはずの兵を目撃! 彼はその場を逃げた!
「ギャアアアアア!」
 兵の悲鳴が聞こえた! それは障子を成り余る物で突き破った人型に左手をもぎ
取られた時に襲い来る痛みへの悲鳴だった! そして光景が変化して元の光景に
修正された!
(全身の感覚が無くなりそうだわ。これが死ぬと言う事なの?
 これが父や母、それに零やその他大勢の土に還りし生命が死ぬ時に受ける感覚
なの?
 ならばどうやって死を受け入れよう?)
 生子は無くなってゆく感覚と戦いながら立ち上がり、自らの思いを口にする!
「物の語りは突然に始まる……
 生命の誕生よりも。
 生命の経過より。
 そして経過から始まり、経過に終る物の語り。
 されども経過に抗い、結末に終わる物の語り。
 私はどう成り果てよう? 成り果てる?
 私は継ぎ接ぎだらけと成り、これからも生き続ける。
 この衣服のように生き続ける、この存じ在るべき者として。
 私は居なくなる。だけどまた会える私。
 それが一兆年の夜空を駆けるべき生命となりて。
 物の語りは突然に終わる……」
 生子は人生最後の歌の形を留めない歌を歌い、天井にまで届く吐血をしながら
仰向けに倒れた!
(壱生。いっせ、い。あ、れ? だ、れ、なの?
 そう、ね。わ、た、しはそこ、に……い、たのね)
 天同生子は齢三十の短い生涯を閉じた。



 また会える日を願いながら……


 ICイマジナリーセンチュリー四十二年四月六十三日午前零時零分零秒。

 第十三話 天同生子 継承篇 完

 第十四話 ???? に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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