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一兆年の夜 第八十八話 躯伝の空 躯伝、安らかに眠る(五)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月九十一日午前八時七分三十一秒。

 躯伝が語る中でガンジャーとバレイバーは七の地に集結する。二名は青年を見て驚く。
「あ、こんな所までわざわざ出向いてくれて有難う御座います。で、です牙公務端大丈夫那乃でしょう科?」
「僕の事は心配ない。躯佐姉さんが後押ししてくれたよ」
「相変わらず弟夢中は治らないな、躯佐様は」
 コラ、礼於失します環……バレイバー弥--と注意をするガンジャー。
「まあまあ」
「全くお前達の目に見えぬ範囲でここまで来たというのに」
「躯伝様。そんなに病院の寝床で一生を終えるのが好きじゃないのですか!」
「心配した乃です代。突然居なくなる物です科羅!」
 それは済まない事をしたのう--と謝罪する躯伝。
「ではそろそろ続きをお願いするよ、お父さん」
「有無、痛みが感じなくなる頃合だし……喉も肺も何時止まるかわからんからのう」
 躯伝は最後の仕上げを始めた。
(フウウ、呼吸するのがこれ程辛いとはのう。じゃがこれが最後じゃ。正伝亡き後のわしはもう戦う意欲さえ無くしてしまった。最早息子一名すら救えないわしが戦場に居る事自体がおかしな話じゃったのう。後の事は……全て任せた後じゃったな。俺はこの戦いを機に神武包丁を奉納した。最早戦う意味はない。戦いは若い者たちに任せる番だと思ってのう--)


 ICイマジナリーセンチュリー二百二十三年三月五十一日午後十時二分七秒。

 場所は旧都六影中央地区廃神武聖堂表門前。
 躯伝はソリス十九世に正伝の遺品と成った刃が既に拳ほどしかない長さの雄略包丁を渡した。渡されたソリス十九世は泣き崩れ、次のように言った。
「うううう、最後まで正伝さんは勝手な生命よ。折角、今度の子供を正伝さんに名付けさせようと思っていたのにイイイ!」
「……」躯伝は少し呼吸して次のように呟く。「いや、正伝はまだ生きている!」
「其れは……私を笑わす為に言ったのですか?」
 そうゆう訳ではないぞう--正伝のお蔭でポルナ助やベア九斗と共に命を落とす所だったマモナビロは次のように代弁する。
「正伝様は……正伝様の魂は二つに分かれたぞう。一つはソリス様のお腹にぜおう、もう一つは……ソーラ様のお腹にぜおう。だ、だから、だからぜおう!」
 泣くのかあああい、だったら俺やベア九斗と一緒に酒を飲み交わそうかああい--とポルナ助はマモナビロを誘った。
「正伝さん、正伝さん……ウウウウ!」
「フエエエン、私が力が足りなかったせいで--」
「メイリスのせいじゃない。俺だって--」
「静かにしろ、お前達!」と烈正斗メイリスを沈黙させる躯伝。「今はソリスが思いの丈をぶつけるのが筋じゃ!」
「うううう、正伝さん……そうですわ。正伝さんはお腹の中で、正の心でこの子を守っているのだわ!」
 そう、ソリス十九世は自然と第三子の名前を決める。彼女の名前は正心せいしん……躯伝最後の子である蒼天そうてんよりも一の月早く生まれて彼の付き者として最後まで見守った文武両道の雌。
(その名前を付ける際に誰もが雄の子だと思っていた正伝の三名目の子供。雌の子だと判明して慌てふためいたが……ソリスにとってはその名前はどちらでも取れると思って迷いなく付けたそうだな。まあそれは後の話じゃな。
 今は俺が後の事をシドウシンに任せようとした際の話じゃったな。ところがシドウシン自身もとあるレンラクガカリからの報告を受けて現場に居られなくなった。軍務大臣である以上は大臣室に埋め尽くさん程の紙があれば事務次官一名に任せるのは流石に心許ないからのう。それでシドウシンも一緒に帰還する事と成った。まあ、それでも引継ぎを任されたコブ又兵衛が広い視野の持ち主であり、変化する情勢の中で柔軟に対応出来る感性の持ち主じゃったから後の時代にタイガーフェスティから六影までを繋ぐ安全圏を確保出来たといえるじゃろうのう。
 さて、首都に帰宅した際にソーラを連れて昔住んでいた豪邸で話をしたのう。正直、恐かったのう。実の息子が親より先に死んだ事を告げるのが。じゃがなあ)

 三月五十三日午後九時零分七秒。
 場所は新天神武首都六影府中央地区ヤマビコノシドウシン邸三階空き部屋。
 躯伝はそこまで齢四十一にして八の月と四日目に成るソーラ六代を入れた。躯伝は何処から切り出してゆこうか迷っていた。だが、ソーラ六代は直ぐに口を開く。それは躯伝にとって意外な言葉から始まった。
「ええ、あの子がこの家の前にやって来たのはちょうど一の月より前程だったわ」
「ああ、その話は聞いたな。全く正伝の奴は俺への犯行をする前に家族への迷い惑わしを考えなかったのかと思うのう!」
「いえ、その話には続きがあるのよ」
「続き、とは?」
「あの子が来た時からつわりが始まったの。その時、私は何となく直感してしまったの。お腹の中の子はきっと正伝の魂を受け継ぐのではないかって!」
 何と--ソリス十九世の話をしていないのにソーラ六代は既に正伝の運命を知るかのような口ぶりで話すのに驚かずにはいられない躯伝だった!
「そこまで驚く事ないわよ、躯伝。私は貴方とどれくらい一緒だと思っているの? 少しはメランよりも長く付き合うつもりでいるのよ!」
「まだ言うのか。じゃがのう--」
 わかってるわ、メランは今も躯伝の中で生き続けている事は--とソーラ六代は雌の勘で言いそうな事を先読みしていた!
「参ったな。何もかも御見通しじゃという訳か!」
「ええ、貴方がここへ来る理由だってね」それからソーラ六代は涙を堪え始める。「私をここまで連れて来てまで話したい事って烈正以外の子供の耳には知らせたくない事でしょ?」
「ああ、そろそろ俺に言わせてくれ」躯伝はそれでも前置きを止めない。「本当は如何切り出して良いか迷っていた……悩んでも居たのじゃ!」
「ええ言って。私の魂はずっと貴方と一蓮托生なのよ!」
「わかった、言おう」
 それから躯伝は正伝の死を語った。そしてともに堪えた分だけ号泣し続け、母体に重荷がないように抱き締めた!
(その後、ソーラは出産予定日に最後の子供を産んでから二の日より後……想念の海へと旅立ってしまった。言ったよなあ、ソーラ。メランよりも長く付き合うのだって……なのに先に行くなんて如何かしてるだろうが!
 俺は悔しかった。正伝の事を語った際に如何してソーラが死にたがっているのかに気付けなかったのかてな。それは俺だけじゃなく、あの体力自慢の烈正にまで影響を及ぼした。烈正はその後、メイリスを連れて新天地を目指してしまった……辛かったんだろうな、烈正も!
 母との思い出や兄との思い出を抱えたまま生き続ける事。いやそれ以上に新天神武内で思い出されてゆくたびに悲しみを思い出すのが辛かったのだろうな。だからこそあいつは旅に出た。でも旅に出る際にメイリスはあの子の後を追ったのじゃ。一名だけで活かせないと……それを受け入れる烈正。あの二名は惹かれ合っていたのだな。以降、俺は二度と烈正斗見える事は永遠になくなった。そこで早死にしたのか、それとも俺より長く生きたのか……永遠にわかりはしないのじゃからな!
 そして俺から……わしに成る頃、わしはある決断をする。下地は十分作った。後は稔だけ。早いのう、ギガントル。お前の想定した年月よりも早く理想は実現してしまうのじゃからのう!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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