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一兆年の夜 第八十八話 躯伝の空 躯伝、安らかに眠る(三)

 四十九日午後十一時五十三分十八秒。
 場所は旧都六影中央地区神武聖堂跡。
 天同優央の間にて躯伝は座禅を組む。一兆年の神々と対話をする為なのか? 其れも正しい。だが、躯伝が座禅を組むのは他にもある。睡眠を摂る為? いや、睡眠を摂れる程の余裕が躯伝にはない。ならば何か? それは--
「クデンサマアアアアア!」躯伝の元に飛んで来るのは齢二十七にして六の月と三十日目に成るアデス九官族の青年臨兵キュー明。「マッタクネカセテクダサイヨウ、ミガモチマセン!」
「その前に何かを報告する為に命懸けで飛んで来たのだろう……キュー明?」
「ア、ソウデシタ。トソノマエニカルイショクジヲサセテクダサイ。オナカガヘッテシカタアリマセン」そう言いながら右足に括っていた髪を躯伝に渡すとキュー明は食事のある場所を尋ねる。「エットタベルバショハドコニアルノデショウカ?」
 躯伝はそれを軽く知らせると折り畳んであった手紙を広げる。それから食事する場所へと飛んで行ったキュー明。
(成程な。烈希れっきの奴は官僚に成るだけでは飽き足らずに不在中にガン造から様々な事を口に出して来るか。あいつめ、そこまで己の頭脳を過信するかのう。
 ンンと、続きがある。何、烈希は躯央くおうから出された現時点で難しい提示を全て叶える方法を思い付いた、と。それを記すには紙が大きく成り過ぎて、それ以降はキュー明から直接伝えて欲しい……とガン造とリリーエルは紙に伝えるのか。だがなあ、あいつでもここまでにどれだけ頭に入れてあるか。それと纏められるのか? 正直安心出来ない思いがあるなあ)
 それでもキュー明の伝達能力を信じる躯伝は最低限の食事を済ませたキュー明からそれ以降の事について聞く。すると信じた通りにキュー明は全てではないが、伝えたい事を全て躯伝に話した。話した内容は全て紹介しないが鍵と成る言葉だけをここに述べる。
 最初は首都の地下建設。これはもしも銀河連合が再び現時点での戦力では対応出来ない空から大量に降ってきた場合に備えてほぼ全国民を地下に避難して籠城又は別の場所に避難するという提示。これは現時点だろうと百の年より後であろうとも予算の関係性と環境の面も踏まえて実現は難しい。仮に理論で可能だと試算しても実際は無理な話というのは何処にでもあるのである。この話もその内の一つ。
 次は望遠砲の小型化して量産するという物。これは望遠砲の小型化に依り、今後の銀河連合との戦いを優位に進める上で重要な鍵と成る。現時点では北雄略のある職者が小型化あるいは連射化に成功。但し、連射化に関しては細かい作業を踏まえて値が大きく付きやすく尚且つ量産体制へと至らない。その為、連射式の量産はまだ先と成る。だが、それ以外ならば量産体制を整える工場の建設次第で後十の年より後には実現が果たせるとされる。
 三つ目が迷宮の洞窟の秘密基地化。これは提示する中でもどうしてそれを思い付いたのかが謎とされる物。確かに迷宮の洞窟は神々の中では秘境に近しい洞窟。其処を徹底調査して全ての解明が完了すると秘密基地化へと踏み出せる。だが、藤原バッ戸の日記にもあるように突然予想も出来ない現象が起こりやすい。幾ら日記に記された通り方角を示す案内札が立っていたとしてもそれだけで秘密基地化に成功したとは言えない。依ってこの提示は多くの学者や評論家の間では危険過ぎると判断される。
 最後がやはり全建物の要塞化。これだけは超広範囲の流れ星の群れが来る日までには絶対に間に合わない。理論上でもそう判断される以上は如何しようもない事実。
 これら四つの提示について烈希は類稀なる頭脳を以って理論上可能だと断言してゆく。だが、聞いた躯伝は流石に無理だとキュー明に伝えた。勿論、キュー明もこれは流石に難しいのではないかと烈希に口走った程。
「取り敢えずだ。キュー明よ、早速だが……その前に紙を用意しないとな」
「イエ、ジカニオネガイシマス!」
「いや、やっぱり言葉だけでは伝わり辛い事もあるのじゃ。お前を信じる俺でも時には誤って伝わると困るからのう。じゃから俺は念には念を入れるのじゃ!」
 ワカリマシタ--キュー明は紙を取りに飛んでゆく。
 その後ろ姿を見て躯伝は次のように思った。
(果たして俺はこれからも伝えたい事を伝えられるのかのう。年を摂ると段々物覚えも安心出来なくなる。俺は俺のままに話す事が出来るのか? 俺は安心出来なくて困るのう。
 んん--)
 た、た、大変ですぅううう--キュー明と入れ替わるようにしてメイリスは駆け込むなり、鋭棒を話して躯伝の呼吸音を高めてしまう!
「危ない雌の子じゃあ。心臓が止まるかと思ったぞう!」
「も、申し訳ありませエえん。ど、如何か許して下さああい!」
「ゆ、許すも何も、な、何があったのじゃ!」
「えっとですねえ。そ、そのですねえ、あああわああな事がああってえええ!」
「ま、まあ少し、落ち着いて、話を整理してから伝えるのじゃ!」
「ふううええん、御免なさああい。あ、あんまりにもあんまりなのでええ、わ、わ、忘れてしまい--」
「メイリス……慌てるなって!」彼女が心配で後からやってくる烈正。「あ、親父。実はなあ、俺から伝えるよう」
「ああ、頼む」
「兄貴が……一個中隊を連れて、えっと十五とご森と呼ばれる銀河連合の拠点がある森に向かったんだよ!」
「……何だと!」思わず、立ち上がる躯伝。「あの馬か鹿かわからんような息子め。如何せあいつは死んでいった仲間達の為だとか思って……全くあいつは!」
「わ、わ、私達は、必至、で、必死で、止めたの、ですぅ。で、でもおう!」
「兄貴は一度言い出したらこっそり抜けて行くからなあ……あの時だってそうだよ。如何して俺達に相談もせずに--」
「起こってしまっては仕方がない。取り敢えず、シドウシンを叩き起こすぞ!」
 躯伝は熟睡には程遠いシドウシンを大声を張り上げて叩き起こすと直ぐに緊急会議を開かせた。その会議時間は僅か一の時どころか半の時も掛からなかった。その理由は次のような回想で済まされる。
(既にシドウシンは祖父譲りの拠点制圧作戦を五つも考案したばかりだった。その中で穢れ払い走りの道の終着点である奇跡の彫像前までを含めた奪還作戦を二つも考案していた。流石に正伝が勝手に兵を挙げる所までは想定しなかったが、その内の十五森をどのように制圧するかの案を少し変えるだけで済んだ。後は正伝達腰砕け百名を救出する部隊は誰に指名するかだろうな。これについては……既に決まった事だ。
 問題なのはこの半の時で決まった事でも少し遅過ぎるという点だろう。それでも俺は家族を以って独立した後のあいつでもたった一名の大事な息子でもあった。どれだけ遅かろうとやらない訳にはゆかない。それが情という物じゃ。例えそれが間に合わない事であろうともなあ!)

 三月五十日午前十一時二分四十七秒。
 場所は十五森。
 拠点型外にて躯伝達五個中隊は到達した。其処で待つのは外で右腕一本に成ってまで戦い続けるイタトシロウの姿。
「イタトシロウウウウ!」躯伝が駆け付けなかったらイタトシロウは助からなかった。「間一髪だったのう!」
「ウググ……正伝様牙、中似、突入しました!」
「ふえええん、そんなああ!」
「兄貴は何名掛かりで拠点型内部に入ったんだ!」
「一分隊程……だ」
 尚、百名いた正伝の部隊は拠点型に突入した者達を除いて半分近くの四十名。幸い隊長格は全て無事だった。
「クウ、正伝様にもっと進言されておられるるば--」
「いや、カエ道彦よ。正伝はお前がどれだけ口煩かろうとも止まらなかっただろう」
「ウググ……ハアハア」左ひじから先がなくなり、切断面から漏れ出る血が滲み出ない程包帯を巻かれたイタトシロウも語る。「如何やら俺様端ここまでだ。後乃事端、頼みます……ウウウウ!」
「悔しいだろうが、恥じる事はない。無茶を見極めて誰かに頼むのも一流の軍者という者じゃ。そうゆう意味ではお前はまだまだ強く成れるぞ!」
「ははああ、有難きお言葉於」思わず男泣きするイタトシロウ。「うううう、心身似染み渡り、ます!」
「では……烈正よ。ここを頼んだぞ」
「いや、それはいけないな」烈正は首を横に振る。「俺は兄貴をぶん殴りに行く!」
「はあ、全くもう少し頭が良かったらのう……お前は何処までも難しい事を理解する頭脳を持たないなあ」
「其処は姉貴の務めだっての」
「わかった。だが、わしより先に行く事を……許さんぞ!」
「はいよう、わかった--」
「待って下さい!」
「ほう、烈正も罪な雄じゃのう」
「おいおい、お前まで行くのか? 何の為だ?」
「烈正様だけに抜け駆けは……許しま、せんから!」
 ……お前は俺と一蓮托生を決めたな、良し--と烈正はメイリスの同行を許した!
 こうして躯伝を始めとした救出班五名は拠点型へと突入!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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