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一兆年の夜 第八十八話 躯伝の空 躯伝、安らかに眠る(二)

 午後六時七分十一秒。
 場所は旧都六影中央地区中央官邸跡。
 神武聖堂の包囲網を突破した躯伝と正伝達百五名は避難させたと思われる中央官邸跡に向かい、辿り着いた。其処はかつて拠点型銀河連合だった建物。正伝がここへ来た当時では既に何者かの尽力で倒され、既に建物跡として残るばかり。再度拠点型として復活してもおかしくない状況で何が起こったのか? それは正伝よりも長く喰われた大地の中で生きて来た者達でも判明しない謎。そんな場所まで百五名は全員無事に到着した。
「親父、ここに俺の妻と二名の子供や……第四部隊の隊長と第五部隊の隊長の双方がずっと守っている」
「解放戦線が千名以上だったころは全部で何部隊あった?」
「偵察部隊等を除けば十二まであった。だが、親父たちが来る頃には既に六から十二まで全滅。今じゃあ百名も下る」
「辛かったのだな、わかるぞ!」
 そんな事言うな--と正伝は拒む。
「オイオイ、兄貴。親父は兄貴の為を思って言ったんだぞ!」
「其れでも聞きたくなかった。お袋の話でもすでに親父が孤立無援の状況で苦しんでいた事は知っていた……居ても言って欲しくなかった!」
「泣き言はまだ早いぞ、正伝。今はお前の家族と生き残った部下達の無事を確認するまで堪えろ!」
 全く大人ぶりやがって--と正伝は親に顔を向けない!
(反抗した時期があったかな? 親父とお袋が遅くに産んだから俺にはその時期さえなかったのかも知れない……かのう)
 そう躯伝が思いながら全員中へと入ってゆく。
 尚、建物は喰われた事があるとはいえ最大三階まである。実質三階は屋上と何ら変わりがない。剥き出しの状態であり、雨が降った際にはそこから二階へと雨水が流れ込む。その為、災害が発生した場合は三階に避難しないといけない。それだけ修繕が必要な建物である。
 その二階生活大臣執務室にて正伝の言う避難者が居た。だが、正伝の主張する柔名には程遠い。既に半数がやられていて、何時全滅するかわからない状況にあった。
「貴方、お帰り……えっと隣に居る御方はもしや」そこへお腹を膨らました齢二十一にして十一の月に成ったばかりの雄略人族の女性が二名の子供を抱きかかえて正伝の所へ駆け込む。「それが正伝のお父様なのですね?」
「ええ、じゃあ僕たちのおじいちゃん?」右手に抱えられるのが正伝の第一子で齢四にして三の月と八日目に成る神武人族の男児である正斗まさと。「わーい、おじいちゃんだあ」
「ふうん、ねえねえおじいちゃんって」少々頭の良くなさそうなのが正伝の第二子で齢二にして五の月に成ったばかりの神武人族の女児であるソリア八代。「おとうさんとなにがちがうの?」
「まあ、そうだな。お父さんのお父さんをお祖父ちゃんって呼ぶんだぞ……ソリア」
「どれどれ?」躯伝は自己紹介する前に正伝の妻ソリス十九世を始めとした五名の身体検査を行う。「おい、お前達も確かめるのじゃ!」
 その結果、五名全員に銀河連合が忍び込んだという形跡がない事がわかった。それから躯伝は自己紹介する。
「手荒な事をして申し訳ない。俺が新天神武第八十七代最高官を務める天同躯伝と申します。遥々解放戦線を救出する為に奪還軍を率いて足を踏み入れたのであります!」
「貴方が躯伝様……良かったわ、お陰で正伝さんが助かって」
「まさか……勝手な事を!」
「勝手と言わないで!」子供達を降ろしてから右平手打ちで正伝の左頬を引っ叩くソリス十九世。「意地を張るのはこれで最後にしなさい!」
「……言う通りだ。ここは感謝の言葉を述べないとな……有難う!」
「ウウウ、良かったわ……本当に良かったわ!」
 ソリス十九世は抱き締める。正伝もそれに微笑みで応じるように抱き締める。
「有難う、ソリス。お前は本当に最高の妻だ!」
 躯伝達が久方ぶりに家族談義を楽しむ中でイタトシロウ達は何をしているのか? それは奪還軍の者達が彼ら二名に挨拶をしていた。
「無事で良かった」齢二十五にして五日目に成る武内蜘蛛族の巨漢は第四部隊の隊長を務める。「私? 私は解放戦線第四部隊の隊長を務め、ソリス十九世の付き者を担当するナキアス」
「あたしはねえい、あたしはねえい」第五部隊の隊長を務めるのは齢二十六にして十一の月と二日目に成る武内山羊族の女性。「あたしは第五部隊の隊長を務めるエリフェラエルでえい」
「よろしくな。俺は天同烈正って言うんだ!」
「凄いですう、烈正様!」
「何だよ、メイリス!」
「如何してそんなに気軽に出来るのですか!」
「他者と話すのに何恐がるんだよ」
「ううう、烈正様が羨ましいですう!」
「と、突然泣き出すなよ!」
 烈正がメイリスを慰める間、カエ道彦とイタトシロウ、其れとビーダ七世は会話する。
「それにしてもかなりきついなッス。まだここは誰かがやってくれた分だけ空気は少し正常とはいえッテ」
「外乃生命似端喰われた土地端適応難しいよう妥那」
「それよりも拠点に置く筈の旧都六影がここまでやられてしまわれようとは……兎に角、カエ若彦は如何成られた?」
「申し訳ありません。彼は喰われました
 行方知らずの方がまだ良かろうに--と口にした後、涙を流すカエ道彦。
「如何やらブトン模チュウ八兵衛模ウシ蔵模雄作模死んでしまった那、この様子蛇亜」
 そう成るでえい--とエリフェラエルは認める。
 斯くして後少し救出が遅かったら助からなかった解放戦線の面々。だが、ソリス十九世が夫や子供達、そして仲間達の為にカエ道彦とイタトシロウ、そしてメイリスを送った事で躯伝がそれに応じて奪還軍を以って率いる事で漸く希望が叶った。
 それから三の時と十八の分より後に奪還軍本隊が到着して彼らは組み込まれてゆく。
(ここからが正念場だ。奴等にとって六影は一番の拠点でもある。それを奪還されたとあっては是が是でも喰い返しに掛かるだろう。そうすると現時点の九万二千程度では奴らの猛攻を止められない。ここは欲張りを諦めて暫くは防災として立て直しに掛からないとな。俺とシドウシン達新天神武奪還軍首脳部は全会一致でそう判断した。
 だが、正伝はこうゆう場合でも若気の盛りだ。この方針に強く反発した。わからなくはない。わからなくはない……けれどもそのせいで!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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