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一兆年の夜 第八十八話 躯伝の空 躯伝、安らかに眠る(序)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月九十日午後十一時四十分三十二秒。

 天同躯伝くでんは密かに七の地に戻る。彼の中でこんな事が浮かばれる。
(今日は体が軽いのじゃ。だからこそわしは体が軽い内にここへ戻り、それから一生を終えるのじゃ。まあその前に先客が来ているみたいじゃのう)
 先客とは齢二十九にして十一の月と五日目に成る神武人族の青年。彼は青き眼を輝かせて躯伝が来るのを待っていた。
「やあ、父さん。こっそりここまで来たよ」
「血は争えんのう。わしの良くない所まで似て更には一番上の兄正伝せいでんのそうゆう勝手な所まで似たのう」
「まあ何となく一兆年の神々が御知らせしてくれたのです。父さんはもう直ぐ……本当は言われた通りに様々な行事を熟す予定だったけど、ね」
「又、躯佐くさが愚痴を零しているのう」
 いえ、躯佐姉さんに背中を押されたのもあります--と正直に話す青年。
「まあ良いじゃろう。さて、放すのは日を改めてからにしたい」
「いや、今からお願いします。でないと父さんは直ぐに想念の海に旅立ちそうなので」
「早合点したい年頃かえ?」
「頼みます。そろそろ体が重く圧し掛かる頃合だと思います。そうすると間に合いません。なので如何かお願いします」
 わかったわかった--青年の意外な押しの強さに圧倒され、躯伝は語り始めた。
 躯伝が語るのはガンジャーに初めて語ったソーラ六代との出会いから正伝達解放戦線の一部が助けを求めてそれに応じて前々から結成していた奪還軍を始めて動かした時までを。そこまでは時間がないのか、僅か一の時と十一の分で済ませる。
「ここまでが最高官に成るまでの経緯ですね」
「そして次からは……ゲホゲホ!」右手で口を抑えて席をした躯伝は掌に……「クウ、そろそろか?」付着した大量の吐血を見て覚悟を決めてゆく。「ここから先は用意した棺にわしを入れながら聞く、のじゃ!」
 いえ、それは聞き終えた後に時間を掛けてやらせて戴きます--と青年はそれを断った!
「相変わらずじゃのう。するとララバイは大変苦労しているじゃろうなあ」
「妻の話は止めて下さい。今は自分の話に精力を傾けてくれますか、お父さん!」
「全く真面目な奴じゃのう。それじゃあ可愛い息子の為に傾けるとしようか」
 それから躯伝は語り始める。
(段々痛みも感じなく成るのう。これが……親父が死ぬ直前まで味わった死の痛みか? だとするなら俺は如何すれば良いのじゃ--)


 ICイマジナリーセンチュリー二百二十三年三月四十七日午前一時二分十一秒。

 場所は旧都六影。かつては第一南地区と呼ばれた地。
 新天神武奪還軍は群を動かして一の週もの間、間断なき戦いに身を投じて兵力の約五分を失う程の被害を受けながらも遂にかつての真古式神武の新都に足を踏み入れた。
(ここまでに五分に等しい軍者を死なせてしまった。やっと正伝が籠城すると思われる新都に辿り着いた。だが……到着して早々にこちらの戦力の凡そ一割にも満たない数が迎えるようだな。しかも内容が全て空中型ばかり。少々、陸上種族には荷が重いな。まあ……ここは俺とイタトシロウ、それにこっそり付いて来た烈正れっせいを始めとした凄腕共で強行突破する。俺が居ない間の指揮はシドウシンに任せる。その為にあいつが居る。あいつは祖父と同じく意外と柔軟に対応する物じゃな。違いは普段は大人しいのがシドウシンじゃが、荒々しいのが祖父のシレンデンじゃ。
 そうゆう訳でやるぞ!)
 齢四十三にして二の月と八日目に成る躯伝は自分達計百名規模の中台で正面突破を図る事を告げる。これに異を唱えたのが齢四十にして九の月と十八日目に成る神武鬼族の老年にして現軍務大臣兼前線司令官のヤマビコノシドウシン。
 彼は至極真っ当な意見を述べる。それは--

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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