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一兆年の夜 第八十七話 躯伝の空 躯伝、最高官に就任する(八)

 三月三十五日午後十一時四十二分六秒。
 場所は新天神武首都ボルティーニ府中央地区中央官邸三階第一執務室。
 齢四十三にして一の月と二十四日目に成る躯伝は漸く今日の仕事を終えて明くる日に向けて秘書を務める齢十八にして十の月と六日目に成るボルティーニ栗鼠族の少女リリーエル・リッサールに後始末を頼む。
「ええー、折角今日は彼氏の所に帰られるんと思ったのにいい!」
「安全保障は刻一刻と迫るとお前の親父から聞かなかったか、リリーエル?」
「でもでもお」尚、リリンジの第一子であるリリーエルだが……「お金が合浦合浦だと思って頑張って試験に臨んで合格したのにい」雄漁りの激しい碌でもない娘に育ってしまった。「又彼氏に振られたら今度こそ将来の眼があ、摘むんわよ!」
 その前に結婚しろよ、恋愛は遊びじゃないわい--と雌雄の恋愛に厳しい躯伝はリリーエルに怒鳴り付ける。
「又その話い? 躯伝様はそれだから第一子であるん--」
 あいつの話はすな--それだけは何があっても避ける躯伝だった。
 そんな時、扉を叩かずにいきなり駆け込む者が一、いや三名程。
「はあはあ、貴方が最高官の方であろうか」齢二十九にして二日目に成る藤原燕族の青年は左翼がない状態でも必死に自分をH紹介する。「私は大陸藤原燕族の藤原カエ道彦と申されましょう。この通り、隻翼でありましょうが……解放戦線を率いる
地同正伝ちどう せいでん様の偵察部隊の隊長を務められております」
「ねえねえ、地同正伝って誰なのよ?」
「あいつからか……ンで両隣りも名乗れ!」
「は、俺様乃名前端」齢十九にして十一の月と二十九日目に成る後二の日で青年に成る神武鬼族の巨漢は金棒を床に於いて名乗る。「神武鬼族のカゲヤマノイタトシロウと呼ぶ……正伝様の左腕を務める解放戦線の第二小隊の小隊長を務める」
「え、と私はえっとですね」齢二十に成ったばかりの武内人族の少女は蘇我鋭棒を振り回して二名に降ろさせられた。「あ、済みません。わ、わ、私はメイリスと名乗り、ままま、す!」
「落ち着け、そのメイリスと呼ばれる者。緊張で震えるのはわかるが……それでは俺達が益々混乱するだろうが!」
「ご、御免為さい。何時も私は、おっちょこっちょなので御免なさい!」
「あの子……大丈夫なの?」
「彼女は解放戦線の第一部隊所属の傭兵であられよう。ああ見えましょうとも十枚通しが得意であらせます」
「そんな事はわかった。其れよりも扉を叩く暇もなく駆け込んだ理由を聞かせろ……簡潔にな!」
「はい、実は--」
 オオイ、親父……着てやったぞ--とそこへ齢十九にして七の月と一日目に成る神武人族の少年が入って来た。
「又か、烈正。これで七回連続だぞ。俺は俺の足で帰れるからお前は--」
「ウオ、カワイイ子めっけ!」烈正は頭よりも感情で動く為にメイリスに直ぐ抱き付く。「やあ、俺は天同烈正だよ……よろしくな、君!」
 あわわわ--惚れっぽいメイリスは直ぐに紅潮し、しばらくして気を失う事に。
 烈正の出現で躯伝は無関係な物を全て第二執務室に遠ざけた。それから自分とカエ道彦だけで話し合う。
「何、そこまで追い込まれているのか!」
「はい、正伝様は見込んだ仲間達と更には真古式神武後に今も残るる者達だけで総勢千名にも成る解放戦線を起ち上げられ、ずっと戦い続け為さった。其処では正伝様は恋をし、若くして子を儲けよう厳かしい環境でありながらも私達に一時の幸せを提供為さった。それから近い年にはある解放された一帯を新生国家神武として建国も為さいました」
「勝手に建国したか、全くあいつは何処までも勝手な生命だな。だが……昔経験した事があるが、そうゆうのは一時的な物で何れは相手の地の利に依る物量作戦に押し潰されるのが目に見える。だからこそここに助けを求めたのだろう?」
「ええ、それも正伝様の妻であらせらるるソリス十九世様が内緒で私達三名をここまで行かれるよう派遣為さられまするる」
「正伝め、意地も突き詰めれば多くの生命を失うと気付かないとはな……だが、俺も生命の親じゃ」躯伝は立ち上がり、次のように宣言する。「良いだろう、直ぐに取り掛かるぞ!」
「ははあ、有難き御厚意を……感謝しましょう!」
「但し、この国は民主主義故にいきなり決めかねる部分がある事……どうかお許しを!」
 御意--深々と頭を下げるカエ道彦だった。
(救援には時間が掛かる。それはわかっていた。だからこそ第一期目から俺は真古式神武領奪還の準備を進めていた。その準備は中々決まらなかったな。前の真古式神武で問題と成った保障の莫大さを求める生活大臣や財政の切り詰めを主張する財務大臣等々……自分で決めて於いてそれが理由で色々やれない部分があったからな。各個者にも大臣職に就いたらあれやこれやとやりたいと思う欲求が強いからのう。
 そんな中でも俺はギガントルの遺志を継ぐと決めた以上は少々強硬にでもやって数々の法案を通した。特に軍備増強を推し進める為にそれに賛同する議員の支持も呼び掛けたな。色々根回しもしたな。それが支援団体を全て俺の指示に回したりして名……そのせいで民主主義の理念が崩される……って批判もされた。全く思い出したくないな、こうゆうのは。
 お陰で俺は少々早過ぎるが、この日の為の準備が出来た。貸し付けを返す時が来たのだよ!)

 三月四十日午前六時二分二秒。
 場所は旧都タイガーフェスティ。
 かつて駆伝が脱出する為に通ったこの地に総勢十万の新天神武奪還軍が編成された。最高司令官は最高官を務める天同躯伝。前線司令官は齢四十にして九の月と十一日目に成る神武鬼族の老年ヤマビコノシドウシン。軍務大臣では飽き足らず、自ら前線に出る模様。
 総勢十万にも成る奪還軍。内二万は補充戦力又は補給戦力。要するに後方から支援する部隊である。依って八万の部隊だけで地同正伝率いる解放戦線の救出に当たらなければ成らない。
(一応、全国各地から集めれば後五万は確保出来る……が、彼らは地方を守る事に専念すれば良い。国軍は国軍だけでやるしかないのだよ。俺も含めて奪還軍の狙いは解放戦線の生き残りを救助する。余裕があれば拠点型を討伐しても良いが……望遠砲の軽量化も満足に出来ない状態では奪還は難しい。故に悔しいが……時間を掛けてやるしか道はないな。
 それと正伝については……今更怒鳴る気は起こらん。怒鳴るならあの時にもっとやるべきだったがな。全く俺は親として格に相応しくないな。いや、もうあいつは俺達の息子じゃない。既に独立した身ではないかい……今更親父面して難に成るか。死んだ親父だって俺が……いや、死んだ親父はもう良いか。
 兎に角、これだけは願う……先に死ぬのは親の務めだ!)
 それから躯伝は皆の前で宣言し、進撃を開始した……


 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月八十八日午前九時二分三十七秒。

「え、其処で止めるのか?」
「気似成るじゃありません科、躯伝様」
「いや、ここで打ち止めじゃ。続きは……ゲホゴホ、そろそろじゃな」
 皆が看護する中で躯伝は次のように考え始めた。
(さて、わしが最高官に成るお話はここまでじゃ。蛇足として挙げるなら旧タイガーフェスティ後に向かう前にソーラのお腹に眠る最後の子……争点の蹴る音を聞いたのう。その音を聞いてわしは感じた。あ奴は間違いなく新仙者であると。まさかわしの失った能力をあ奴が受け継いでおったとは予想外じゃったな。しかも蒼天はこれだけに留まらないな。
 おっとそこから先はここに至るまでのお話にて宜しく。それにしてもそれまでにわしの肉体は持つのかのう? せめて死ぬ間際に体が軽く成れば良いのにのう。そしたら存分に語る事が出来るのに……年が残るのう。
 じゃが網わしは長く生き過ぎた。長生きは次の世代の為にも成らん。わしの時代はもう終わりなのじゃからな。だからこそせめて親父と同じようにわしの物語を後世の者達に伝えねば成らんのじゃ!)

  ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月八十八日午前九時十分零秒。

 第八十七話 躯伝の空 躯伝、最高官に就任する 完

 第八十八話 躯伝の空 躯伝、安らかに眠る に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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